【FP3級】老齢厚生年金「報酬比例部分」完全解説
現役時代の給与に応じて決まる年金額の計算方法をマスター!
🎯 テーマ
「老齢厚生年金の報酬比例部分を理解する」
→ 現役時代の給与がどのように年金額に反映されるかを学びましょう!
📗 報酬比例部分とは
💡 基本概念
報酬比例部分とは、厚生年金のうち現役時代の給与・賞与に比例して決まる部分です。
加入していた各月の「標準報酬月額」と各回の「標準賞与額」に、給付乗率を乗じて積み上げて計算します。
📊 基本計算式
🔹 月々の積み上げ計算
月ごとの年金増分 = 標準報酬月額 × (給付乗率 ÷ 1000)
🔹 賞与分の計算
賞与ごとの年金増分 = 標準賞与額 × (給付乗率 ÷ 1000)
🔹 変数と意味
| 項目 |
記号・数値 |
意味 |
備考 |
| 標準報酬月額 |
SRM |
社会保険の等級に基づく月額 |
1,000円単位、残業代等含む |
| 標準賞与額 |
SSB |
各回の賞与に対する標準額 |
年間合計の上限あり |
| 給付乗率 |
5.481/1000 |
生年月日に応じた係数 |
1968年4月2日以降生まれ |
| 被保険者月数 |
m |
厚生年金加入の月数 |
例:40年=480か月 |
📈 給付乗率の変遷
| 生年月日 |
給付乗率(1000分率) |
備考 |
| 1943年4月1日以前 |
7.500/1000 |
改正前のフル給付水準 |
| 1943/4/2 ~ 1953/4/1 |
7.125/1000 |
段階的引下げの初期 |
| 1953/4/2 ~ 1963/4/1 |
5.769/1000 |
2段階目の引下げ |
| 1963/4/2 ~ 1968/4/1 |
5.481/1000(経過) |
最終調整世代 |
| 1968/4/2 以降 |
5.481/1000(固定) |
現行標準 |
💼 年代別シミュレーション例
前提条件
- 給付乗率:5.481/1000(1968年4月2日以降生まれ)
- 加入期間:40年(480か月)
- 賞与なし(月給のみで計算)
| 年代 |
想定標準報酬月額 |
加入月数 |
年金増分の計算 |
年額寄与 |
20代 (入社~10年) |
200,000円 |
120 |
200,000 × 5.481 ÷ 1000 × 120 |
131,544円 |
30代 (10~20年) |
300,000円 |
120 |
300,000 × 5.481 ÷ 1000 × 120 |
197,316円 |
40代 (20~30年) |
400,000円 |
120 |
400,000 × 5.481 ÷ 1000 × 120 |
263,088円 |
50代 (30~40年) |
450,000円 |
120 |
450,000 × 5.481 ÷ 1000 × 120 |
295,974円 |
| 合計 |
ー |
480 |
ー |
887,922円/年 |
💡 計算結果のポイント
- 年額約88.8万円の報酬比例部分(月額約7.4万円)
- これに基礎年金(国民年金)約78万円が加算される
- 合計で年額約167万円程度の厚生年金となる
✏️ 報酬比例部分 ミニ確認テスト(○×形式)
各問題について、正しいと思う場合は「○」、間違っていると思う場合は「×」を選択してください
Q1
報酬比例部分は、現役時代の給与に関係なく一律の金額である。
Q2
1968年4月2日以降生まれの人の給付乗率は5.481/1000である。
Q4
標準報酬月額は実際の給与額と完全に一致する。
Q5
現役時代の給与が高いほど、将来の年金額も多くなる。
✅ 報酬比例部分テスト結果
正解一覧
Q1: × (給与に比例して年金額が決まるのが報酬比例部分)
Q2: ○ (1968年4月2日以降生まれは5.481/1000で固定)
Q3: ○ (標準賞与額も計算に含まれる)
Q4: × (標準報酬月額は等級表に基づく、実給与とは異なる)
Q5: ○ (高い給与ほど多くの年金を受け取れる仕組み)
✅ 報酬比例部分ミニテスト【解説&深掘り】
❌【Q1】「報酬比例部分は、現役時代の給与に関係なく一律の金額である。」
正解:×
解説:
報酬比例部分は、その名前の通り現役時代の「報酬に比例」して決まる年金額です。
給与が高い人ほど多くの年金を受け取れる仕組みになっています。
ポイント:
• 標準報酬月額が高い → 年金額も多い
• 給与に関係なく一律なのは「基礎年金(国民年金)」
• 厚生年金は「2階部分」として給与に応じて上乗せされる
✅【Q2】「1968年4月2日以降生まれの人の給付乗率は5.481/1000である。」
正解:○
解説:
給付乗率は生年月日によって異なり、1968年4月2日以降生まれの人は5.481/1000で固定されています。
これは年金制度の改正により、段階的に引き下げられた結果です。
世代による違い:
• 1943年以前生まれ → 7.500/1000(最も高い)
• 1968年以降生まれ → 5.481/1000(現在の標準)
✅【Q3】「報酬比例部分は賞与も計算に含まれる。」
正解:○
解説:
報酬比例部分は月給だけでなく、賞与(ボーナス)も計算に含まれます。
賞与は「標準賞与額」として、各回ごとに給付乗率を乗じて年金額に反映されます。
計算式:
• 月給分:標準報酬月額 × 給付乗率 × 月数
• 賞与分:標準賞与額 × 給付乗率(各回分を合算)
注意:
標準賞与額には年間の上限額が設定されています。
❌【Q4】「標準報酬月額は実際の給与額と完全に一致する。」
正解:×
解説:
標準報酬月額は、実際の給与を「等級表」に当てはめて決定される金額で、実給与とは異なります。
1,000円単位で区切られた段階的な仕組みになっています。
例:
実際の給与が285,000円の場合
→ 標準報酬月額は280,000円(等級表による)
ポイント:
年金額計算は等級表の金額で行われるため、実給与より少し低めになることが多い。
✅【Q5】「現役時代の給与が高いほど、将来の年金額も多くなる。」
正解:○
解説:
これが報酬比例部分の最も重要な特徴です。現役時代により多くの給与を得ていた人ほど、将来受け取る年金額も多くなります。
仕組み:
• 高い給与 → 高い標準報酬月額 → 多い年金額
• 低い給与 → 低い標準報酬月額 → 少ない年金額
注意点:
ただし、標準報酬月額には上限があるため、非常に高額な給与でも年金額は頭打ちになります。
✅ まとめ
| 問題 |
正誤 |
ポイント |
| Q1 |
❌ |
報酬比例部分は給与に比例して決まる |
| Q2 |
✅ |
1968年4月2日以降生まれは5.481/1000で固定 |
| Q3 |
✅ |
賞与も標準賞与額として計算に含まれる |
| Q4 |
❌ |
標準報酬月額は等級表に基づく、実給与とは異なる |
| Q5 |
✅ |
高い給与ほど多くの年金を受け取れる |
❓ よくある質問(FAQ)
Q1. 年収は毎年変わるのに、どうやって計算するの? ▼
A. 各月の標準報酬月額(SRM)、各回の標準賞与額(SSB)をその都度合算して算出します。
例えば、20代は月額20万円、30代は月額30万円というように、キャリアの各段階での給与が全て記録され、それぞれに給付乗率を乗じて積み上げていきます。
今回の表は理解しやすくするための「単純化例」であり、実際は毎月の給与変動が全て反映されます。
Q2. 賞与は含む? ▼
A. はい、含みます。
賞与は「標準賞与額」として、支給された回ごとに 5.481/1000 を乗じて加算されます。
例:
• 夏のボーナス 50万円 → 500,000 × 5.481 ÷ 1000 = 2,740.5円/年
• 冬のボーナス 60万円 → 600,000 × 5.481 ÷ 1000 = 3,288.6円/年
このように、賞与分も将来の年金額を押し上げる効果があります。
Q3. 5.481は固定? ▼
A. はい、1968年4月2日以降生まれの人は固定です。
過去には段階的に引き下げられてきましたが、現在は5.481/1000で安定しています。
注意:
将来的な制度改正があれば変更される可能性はありますが、現在のところ変更の予定はありません。既に受給している人の給付乗率も固定されています。
Q4. 転職した場合はどうなる? ▼
A. 転職しても、これまでの厚生年金記録は全て引き継がれます。
• 前の会社での標準報酬月額 → そのまま記録に残る
• 新しい会社での標準報酬月額 → 新たに記録される
つまり、転職によって年金額が減ることはありません。むしろ、給与が上がれば将来の年金額も増加します。
注意:
転職時には厚生年金の加入手続きを忘れずに行いましょう。
⚠️ 実務での注意点
🔴 標準報酬月額の仕組み
標準報酬月額は等級表(1,000円単位)で決まるため、実給与と完全一致しません。
改定・随時改定・算定基礎などで対象期間の平均を用いる点に留意しましょう。
🟡 記録の確認
ねんきん定期便やねんきんネットで最新記録を確認し、足りない期間や誤記録がないか点検を。
記録漏れがあると、将来の年金額が減ってしまう可能性があります。
🟢 制度の変更
法令・上限額は毎年見直しがあり得るため、最新の公表資料で確認を。
特に標準賞与額の上限や保険料率などは定期的に変更される可能性があります。
🟣 計算の複雑さ
実際の年金額計算は非常に複雑です。
今回の記事は「理解のための基本」であり、正確な受給見込み額は年金事務所やねんきんネットで確認しましょう。
📊 今日のゴール
- ✅ 報酬比例部分の基本的な計算式を理解する
- ✅ 給付乗率の変遷と現在の数値(5.481/1000)を把握する
- ✅ 現役時代の給与が年金額にどのように反映される仕組みを理解する
- ✅ 実務での注意点と記録確認の重要性を認識する
📝 要点まとめ
- 報酬比例部分は現役時代の給与に比例して決まる年金額
- 計算式:標準報酬月額 × (給付乗率÷1000)を各月で積み上げ
- 1968年4月2日以降生まれの給付乗率は5.481/1000で固定
- 賞与も標準賞与額として計算に含まれる
- 高い給与ほど多くの年金を受け取れるが、上限額あり
🔥 重要:定期的にねんきん定期便で記録を確認し、将来の年金額を把握しておきましょう!