精霊馬とは?きゅうりの馬となすの牛を飾る意味・作り方・飾り方をわかりやすく解説

精霊馬とは?きゅうりの馬となすの牛を飾る意味・作り方・飾り方をわかりやすく解説
🥒 現代のライフスタイルに合わせた、心温まるお盆の迎え方
お盆になると、きゅうりやなすに割り箸などを刺して、動物のような形にした飾りを見かけることがあります。「なぜ、きゅうりとなすなの?」「馬と牛にはどんな意味がある?」「どちらをどっち向きに置けばいい?」「お盆が終わったら食べてもいいの?」など、見たことはあっても、意味までは知らない人も多いのではないでしょうか。
このきゅうりの馬となすの牛は、一般に精霊馬(しょうりょううま)・精霊牛(しょうりょううし)などと呼ばれ、ご先祖がお盆に行き来するときの乗り物として飾られてきました。浄土宗では、早く帰ってきてもらうためにきゅうりの馬を、帰りはゆっくり戻ってもらうためになすの牛を飾ると説明しています。
今回は、お盆そのものの由来や迎え火・送り火の説明ではなく、「精霊馬とは何なのか」に絞って整理します。
精霊馬とは?
精霊馬とは、お盆に帰ってくるご先祖や故人のために用意する乗り物を表したお盆飾りです。一般的には、きゅうり+4本の脚=馬、なす+4本の脚=牛に見立てます。
全日本宗教用具協同組合も、お盆にきゅうりとなすで作られる馬と牛を「精霊馬・精霊牛」とし、ご先祖が行き来するための乗り物として説明しています。
「ただ野菜を飾ってるんじゃなくて、ご先祖の“乗り物”だったんだね!」
なぜ「きゅうり」は馬なの?
きゅうりは、細長くすらっとした形をしています。そこに4本の脚を付けると、馬のような姿になります。そして馬は、昔から人や荷物を運ぶ速い乗り物として使われてきました。
お盆の精霊馬では、「ご先祖に、できるだけ早く家へ帰ってきてほしい」という気持ちを込めて、きゅうりを馬に見立てるという説明が広く知られています。浄土宗の公式解説でも「少しでも早く来てもらうため」にきゅうりの馬を用意するとしています。つまり、きゅうりの馬=早く帰ってきてもらう乗り物です。
なぜ「なす」は牛なの?
一方、なすは丸みがあり、きゅうりよりもどっしりした形をしています。脚を付けると、牛のような姿になります。一般的には、「お盆を一緒に過ごした後は、急がずゆっくり帰ってほしい」という思いから、なすを牛に見立てるとされています。したがって、なすの牛=ゆっくり帰ってもらう乗り物という意味になります。
きゅうりの馬となすの牛をセットで考えると、来るとき→馬で早く/帰るとき→牛でゆっくりとなります。
「早く会いたいから馬、帰りはゆっくりしてほしいから牛なんだ!」
なすの牛には「荷物を運ぶ」という意味もある?
ここがおもしろいところです。精霊馬の意味は、全国で完全に一つに統一されているわけではありません。地域によっては、ご先祖は行きも帰りも馬に乗る、そして牛にはお供え物などの荷物を載せて帰ってもらうという説明もあります。
全日本宗教用具協同組合も、なすの牛について、お供え物などの荷物を載せて帰るとする地域があることを紹介しています。山梨県の民俗資料にも、送り盆の際になす馬の背中へ餅や菓子、野菜、団子などを背負わせる地域の事例が残されています。つまり、牛=ゆっくり帰るためだけでなく、牛=お土産や供物を運ぶためという考え方もあるわけです。
なぜ「きゅうり」と「なす」を使うの?
「馬や牛なら、別の野菜でもいいのでは?」という疑問もあります。きゅうりとなすは、どちらも夏を代表する身近な野菜です。また、細長いきゅうりは馬、丸みのあるなすは牛と、形から動物を表現しやすい特徴があります。
一方で、「日本で最初に誰がきゅうりとなすを使い始めたのか」という明確な起源まで断定できる資料は多くありません。国立国会図書館のレファレンス協同データベースでも、精霊馬について各地域の民俗資料や盆行事の資料が紹介されており、地域によって材料・頭数・作る時期などに多様な形が存在することが確認できます。したがって、「昔から全国で、必ずきゅうり1本となす1本と決まっていた」と考えない方がよいでしょう。
実は「きゅうり=馬、なす=牛」じゃない地域もある
現在では、きゅうり=馬/なす=牛という組み合わせが非常によく知られています。しかし、地域の民俗文化を詳しく見ていくと違う例もあります。山形県立図書館が紹介している庄内地方の民俗資料では、きゅうりで馬、なすで牛を作る地域だけでなく、きゅうりで馬を2頭作る地域なども記録されています。また、精霊馬を13日ではなく、それ以前に藁で作る地域の事例も残されています。
つまり精霊馬は、日本全国に同じマニュアルがある風習ではなく、地域ごとに姿を変えながら受け継がれてきた文化なのです。
気になるスタイルを選ぶと、その地域の作り方を紹介します。
精霊馬はいつ作る?
一般的には、お盆の始まりに合わせて用意し、お盆の期間中に飾る形が知られています。山形県庄内地方の民俗資料では、13日に精霊馬を作って精霊棚へ飾り、16日の精霊送りまで使用する例が紹介されています。
ただし、7月盆・8月盆・旧暦を基準とするお盆・地域独自の盆行事では日程が異なります。そのため、「全国で必ず8月13日に作らなければならない」という決まりではありません。自分の家や地域のお盆の日程に合わせて準備すればよいでしょう。
精霊馬の作り方
作り方はとてもシンプルです。用意するものは、きゅうり1本・なす1本・割り箸や苧殻などです。浄土宗でも、きゅうりとなすへ割り箸などを刺して馬と牛を作る方法が紹介されています。
形を完璧に作ることより、ご先祖を迎えるために用意するという意味を知って作ることの方が大切です。
割り箸じゃないとダメ?
必ずしも割り箸である必要はありません。地域や家庭によっては、苧殻(おがら)などを脚として使うこともあります。全日本宗教用具協同組合も、きゅうりとなすに苧殻で脚を付けた精霊牛馬を紹介しています。
また現在では、本物の野菜ではなく、真菰・ちりめん・人工素材などで作られた精霊馬もあります。浄土宗も、時期になると販売される飾り物やお供物を利用する方法を紹介しています。「本物のきゅうりとなすを用意できないから、お盆ができない」と考える必要はありません。
精霊馬はどこに飾る?
一般的には、精霊棚(盆棚)などへ飾ります。浄土宗では、お盆にご先祖を迎える場所として精霊棚を設え、そこにきゅうりの馬となすの牛などを供える例を紹介しています。
ただし、現在の住宅では大きな精霊棚を作らない家庭もあります。その場合には、仏壇の近く・お盆用の小さな台・家庭で決めているお盆飾りの場所など、それぞれの環境に合わせる方法があります。精霊棚そのものの作り方も地域・家庭によって大きく異なるため、菩提寺や家族に確認する方法が確実です。
きゅうりの馬となすの牛は、どっち向きに置く?
ここも非常に質問が多いポイントです。ネットでは、迎えるときは家・仏壇側へ向ける、送るときは外側へ向けるといった飾り方が紹介されています。2026年のお盆解説でも、このような配置方法の一例が紹介されています。
しかし、精霊馬の向きについて全国共通の一つの決まりがあるわけではありません。地域・寺院・家庭によって飾り方が異なります。浄土宗も精霊棚の設えについて、地域や家庭で大きく異なると説明しています。したがって、「頭は絶対に東」「13日は絶対にこの方向」などと決めつけない方がよいでしょう。家に昔からのやり方がある場合は、その習慣を優先するのが自然です。
「ネットで違う向きが書いてあっても、どちらかが間違いとは限らないんだ!」
今の状況に近いものを選ぶと、おすすめの進め方が分かります。
お盆が終わった精霊馬はどうする?
昔の盆行事では、精霊馬やお供え物を川や海へ流して送る地域がありました。実際、山形県の民俗資料にも、精霊馬を16日の精霊送りで川や海へ流す例が記録されています。しかし、現在は勝手に川や海へ流してはいけません。
浄土宗も、精霊送りとして川へ流す風習がある一方、環境問題から禁止している自治体があるため、実施可能か確認するよう注意を促しています。現在は自治体のルールに従って家庭ごみとして処分できる場合があります。たとえば静岡市では、地域の精霊流しを利用しない場合、お盆の供物を市の分別ルールに従って家庭ごみとして排出するよう案内しています。つまり、昔は川へ流していたから、今も流していいとは考えないようにしましょう。
ごみとして出しても失礼じゃない?
「ご先祖が乗ったものをごみに出して大丈夫なの?」と気になる人もいるでしょう。自治体によっては、お盆の供物も家庭ごみとして処理することを正式に案内しています。気持ちの面でそのまま捨てることに抵抗がある場合には、家庭や地域で行われている方法を確認したうえで、感謝してから片付けるという考え方でもよいでしょう。
精霊馬に使ったきゅうりとなすは食べてもいい?
食品として考えると、精霊馬は野菜へ割り箸などを刺し、お盆の期間中、常温で飾っている場合があります。そのため、飾った後の精霊馬を食用にすることは避けた方が安全です。特に夏場は気温が高く、長時間室温に置いた食品を食べることには衛生上のリスクがあります。「もったいない」と感じる場合でも、食べる野菜とは別に、飾り用として用意すると考えるとよいでしょう。
子どもと一緒に作ると「意味」が分かりやすい
精霊馬は、特別な道具がなくても形を見ながら作れるため、子どもと日本のお盆文化について話すきっかけにもできます。たとえば、「これは何の動物に見える?」「馬と牛、どっちが速い?」「どうして帰るときは牛なんだろう?」と問いかけてみると、ご先祖に早く帰ってきてほしい/帰りはゆっくりしてほしいという精霊馬に込められた考え方を、難しい説明をしなくても理解しやすくなります。
単なる「昔の飾り」として見るより、なぜこの形になったんだろう?と考えてみることも、日本文化を知る一つの方法です。
精霊馬は必ず飾らないといけない?
いいえ。精霊馬を飾る風習がない地域・宗派・家庭もあります。浄土宗も、お盆のしつらえや供養の形は地方・地域によって異なると明記しています。そのため、「精霊馬を作らないとお盆にならない」という全国共通のルールではありません。家に昔からの習慣がある場合はその方法を大切にし、分からなければ家族や菩提寺などへ確認するとよいでしょう。
よくある質問
お盆に帰ってくるご先祖の乗り物を表した飾りです。一般的には、きゅうりを馬、なすを牛に見立てます。
足の速い馬に乗って、少しでも早く家へ帰ってきてもらいたいという意味が込められているとされています。
一般的には、帰りは牛に乗ってゆっくり帰ってもらいたいという意味があるとされています。地域によっては、お供え物などの荷物を牛に運んでもらうという考え方もあります。
一般的には盆入りに合わせて用意し、お盆の期間中に飾ります。ただし、お盆の日程や精霊馬を作る日は地域によって異なります。
迎えるときは仏壇側、送るときは外側へ向ける方法などがありますが、全国共通ではありません。地域・家庭・寺院の習慣を確認してください。
必ずしもそうではありません。現在は真菰やちりめんなどで作られた精霊牛馬もあり、浄土宗も市販の飾り物を利用する方法を紹介しています。
自己判断で川や海へ流すのは避けましょう。かつては精霊流しの風習がありましたが、現在は環境上の理由などから禁止している自治体もあります。お住まいの自治体の処分方法を確認してください。
まとめ|精霊馬には「早く会いたい、ゆっくり帰ってほしい」という気持ちが込められている
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 精霊馬とは | お盆にご先祖が行き来する乗り物を表した飾り |
| きゅうり | 馬に見立てる |
| 馬の意味 | 早く帰ってきてもらう |
| なす | 牛に見立てる |
| 牛の意味 | 帰りはゆっくり・荷物を運ぶなど |
| 脚 | 割り箸・苧殻など |
| 飾る場所 | 精霊棚・仏壇の近くなど |
| 向き | 地域・家庭によって異なる |
| 本物の野菜は必須? | 必ずしも必須ではない |
| 終わった後 | 自治体・地域のルールに従って片付ける |
精霊馬は、一見すると、「きゅうりとなすに棒を刺しただけ」の素朴な飾りです。しかし、そこには、「少しでも早く帰ってきてほしい」「帰るときくらいは、ゆっくりしてほしい」という、ご先祖を迎える側の気持ちが表されています。
さらに地域を調べてみると、きゅうりの馬を2頭作る地域。なすの牛へ食べ物を背負わせる地域。藁で精霊馬を作る地域。など、さまざまな形があります。だから、「この作り方だけが正解」と考えるよりも、「自分の地域では、どんな精霊馬を作ってきたんだろう?」と調べてみると、日本のお盆文化をさらに深く知ることができます。
「きゅうりの馬は『早く会いたい』、なすの牛は『帰りはゆっくり』。ご先祖への気持ちが形になっているんだね!」
Q. お盆で、なすを牛に見立てる一般的な意味はどれでしょう?
参考資料
- 浄土宗「盂蘭盆会」
- 浄土宗「精霊棚の祀り方」
- 全日本宗教用具協同組合「お盆の知識 精霊馬・精霊牛って何?」
- 国立国会図書館 レファレンス協同データベース「精霊馬に関する地域資料」
- 山形県立図書館「遊佐町のお盆の精霊馬について」
- 静岡市「精霊流し(盆供養)の供物の処分」


