越境ECの言語・通貨・時差・文化とは?翻訳・為替・問い合わせ対応の基本を解説 DAY46
【DAY46】越境ECの言語・通貨・時差・文化
翻訳、表示通貨、為替、問い合わせ時間、商習慣の違いを整理する
DAY45では、海外需要、検索、SNS、問い合わせ、競合などから、どの国を販売候補にするかを整理しました。例えば調査の結果、商品:日本製の工芸品、販売国:アメリカと決めたとします。DAY44で、販売できる、決済できる、配送できる、輸入できることも確認しました。では、これでアメリカ向けECを開始できるでしょうか?まだ確認することがあります。
日本の商品ページを、そのまま英語へ翻訳するだけでは十分とは限りません。例えば「こだわりの逸品」という日本語があります。これを機械的に翻訳しても、海外購入者に、何が優れているのか、なぜこの価格なのか、どう使うのかが伝わらない可能性があります。価格についても、5,000円と表示されているだけでは、海外購入者は、自分の通貨ではいくらなのか、決済時に金額が変わるのか、為替によって価格が変わるのかを判断しにくくなります。問い合わせについても、日本時間の午前10時は、購入者側では営業時間外かもしれません。さらに、日付、住所、電話番号、サイズ、重さ、単位、色の意味、ギフト文化、返品への感覚なども国・地域によって異なる場合があります。
DAY46では、言語、通貨、時差、文化・商習慣という4つの視点から、海外購入者が理解しやすく、購入後も運用できるECにする方法を整理します。
「日本語を英語に変えれば終わりじゃないよ。“その国の人が迷わず買えるか”まで考えるのがローカライズなんだ!」
DAY45との違い
DAY45では、検索、SNS、問い合わせ、競合などから、どの国へ販売するかを考えました。DAY46では、選んだ国の購入者へ、商品をどう伝えるか、価格をどう見せるか、いつ問い合わせへ対応するか、どんな表現・単位・習慣へ合わせるかを整理します。つまり、DAY45は「どこへ売る?」、DAY46は「どう伝える?」です。DAY47では、海外カード、決済拒否、住所不一致、高額注文、不正検知など、海外決済と不正注文を詳しく扱います。DAY46では、決済の安全対策までは深入りしません。
この記事で分かること
- 翻訳とローカライズの違い、商品ページを直訳するだけでは足りない理由
- AI翻訳を使うときの確認ポイント、サイズ・重量・温度・単位・日付表記の注意点
- 表示通貨・決済通貨・入金通貨の違い、為替レートで価格が変わる理由
- 時差を確認する理由、問い合わせ受付時間の決め方
- 文化と商習慣を確認する理由、色・数字・表現を日本の感覚だけで決めない理由
- 翻訳後のテスト購入が必要な理由、言語・通貨・時差・文化の確認表の作り方
- 先に結論|翻訳ではなく「購入体験を現地化する」
- Pillar1:言語|商品名は「意味」を翻訳する
- 商品説明は「特徴→メリット」まで・専門用語には説明を
- Pillar1:言語|AI翻訳の落とし穴と「隠れた未翻訳」
- Pillar1:言語|数字は万国共通ではない
- Pillar2:通貨|「3つの通貨」の違いをハックする
- Pillar2:通貨|為替リスクと価格設定戦略
- Pillar3:時差|カスタマーサポートの現地化
- Pillar4:文化|用途の拡張と「日本の常識」の破壊
- ローカライズマスタの作り方
- 実際のケースで考えてみよう|美濃焼の湯のみをアメリカへ販売する
- よくある失敗
- 言語・通貨・時差・文化を確認する12の質問
- やってみよう|ローカライズ診断&確認チェックリスト
- アウトプットワーク|海外ECローカライズ確認表を作ろう
- 理解度チェッククイズ
- よくある質問
- 今回のまとめ
- 獲得バッジ
先に結論|翻訳ではなく「購入体験を現地化する」
越境ECで重要なのは、日本語→英語へ変換することだけではありません。海外購入者から見て、商品が何か分かる、価格が分かる、送料が分かる、届く時期が分かる、返品条件が分かる、問い合わせ方法が分かる、自分の住所を入力できる、自分が使う単位で理解できる状態にします。この考え方を、ローカライズと呼ぶことがあります。
翻訳は、言葉を別の言語へ置き換える作業です。ローカライズは、言語、通貨、単位、日時、表示、購入方法、問い合わせ、文化などを、対象市場に合わせて調整する考え方です。Google Merchant Centerでも、海外向けの商品表示について、対象国の現地言語・通貨へ商品情報、ランディングページ、購入手続などを合わせることを推奨しています。
Pillar1:言語|商品名は「意味」を翻訳する
例えば、日本の商品ページに「職人が丹精込めて作ったこだわりの逸品です」と書いてあるとします。直訳だけすると、文章としては読めても、購入者が知りたい、何の職人なのか、どこで作っているのか、何が手作業なのか、大量生産品と何が違うのか、どのように使うのかまで伝わらない場合があります。そこで、伝統的な技法を使っている、一つずつ手作業で仕上げている、素材は○○、製造地は○○、用途は○○という具体的な情報へ分解します。つまり、日本語の雰囲気をそのまま翻訳するのではなく、購入判断に必要な意味を伝えることが重要です。
日本独自の商品には、Tenugui、Furoshiki、Matchaなど、日本語由来の名称そのものが商品価値になる場合があります。その場合、日本語の商品名を完全に別の単語へ置き換えるのではなく、固有名称+説明にする方法があります。例えば、Tenugui – Japanese Cotton Clothのように、商品固有の名称と、何の商品なのかを組み合わせます。重要なのは、日本語を残すか消すかではありません。その商品を知らない購入者でも、何の商品か理解できることです。
日本では、手ぬぐい=手や体を拭くものという理解が一般的でも、海外では、壁飾り、テーブル装飾、ギフト、ファッション小物などとして使われる場合があります。DAY45の検索・SNS・競合調査で、どのように使われているかを確認しました。DAY46では、その用途を商品ページへ反映します。日本での用途だけを翻訳するのではなく、販売国で理解される使い方を追加します。
商品説明は「特徴→メリット」まで・専門用語には説明を
例えば「天然木を使用しています。」という説明があります。これだけでは、購入者にとって何が良いのか分かりにくい場合があります。そこで、素材:天然木、特徴:木目に個体差がある、購入前の注意:写真と完全に同じ模様にはならない、というように整理します。特に、手作り、天然素材、伝統工芸、一点物には、個体差があります。日本では味として理解されても、海外購入者には、写真と違う商品が届いたと思われる可能性があります。違いがあること自体を、商品説明へ入れます。
避けたい説明は、「最高品質です。」「職人のこだわりの商品です。」「日本ならではの逸品です。」です。これだけでは、購入者が比較できません。素材、製造方法、製造地、工程、耐久性、サイズ、用途、手入れ方法、個体差などで具体化します。海外向けだから「日本すごい」という表現を増やすのではなく、購入判断できる情報を増やします。
例えば、漆、有田焼、藍染、組子など、日本では知っている人がいる言葉でも、海外購入者が意味を知らない場合があります。その場合、用語を消すのではなく、用語+短い説明にします。技法名、どんな技法、商品にどう影響するか、という形です。伝統の歴史だけ長く書いて、商品が何なのか分からない状態は避けます。
Pillar1:言語|AI翻訳の落とし穴と「隠れた未翻訳」
越境ECを始めるとき、サイト全体を翻訳しようとすると大きな作業になります。まずは、購入に必要なページから優先します。商品名、商品説明、価格、サイズ、素材・成分、在庫、配送方法、送料、発送時期、返品・交換条件、問い合わせ、カート、最終確認画面、注文確認メールです。購入者が商品を知ってから、注文、決済、配送、返品まで進むページを優先します。
AI翻訳や機械翻訳を使えば、多言語の商品ページを短時間で作成できます。ただし、商品名、材質、成分、使用方法、注意事項、返品条件、配送条件、法令に関係する表示などは、誤訳すると購入判断や実際の利用へ影響する可能性があります。そのため、AI翻訳→原文と照合→商品固有語を確認→数字・単位を確認→重要条件を確認→必要に応じて言語に詳しい人へ確認、という流れにします。AIが自然な文章を作っただけで公開しないようにします。
実は、日本語の原文が曖昧だと翻訳も曖昧になります。例えば「通常は数日以内に発送します」では、数日が何日なのか分かりません。先に「注文確認後3営業日以内に発送」など、日本語の段階で具体化します。翻訳しやすい原文は、購入者にも分かりやすい原文です。
商品ページ:英語、カート:日本語、返品案内:日本語、注文確認メール:日本語、では、購入途中で理解できなくなります。Google Merchant Centerでも、商品データとランディングページ、購入判断・チェックアウトに必要な主要部分の言語を一致させる考え方が示されています。したがって、商品を見つける→商品説明→カート→購入確認→注文完了→注文メールまで確認します。
商品画像に、送料無料、限定商品、天然素材、使用方法、サイズなどの日本語が入っている場合があります。本文だけ翻訳しても、画像内文字が日本語のままというケースがあります。確認するものは、商品画像、サイズ表、比較画像、説明図、使用方法、注意画像、バナーです。ただし、画像の中へ長い商品説明を埋め込むのではなく、重要情報はHTMLや商品本文でも表示します。
Pillar1:言語|数字は万国共通ではない
例えば、1,500という数字があります。国・地域によって、桁区切り、小数点の表記慣習が異なる場合があります。同じ数字でも、読み方を誤解される可能性があります。また、価格、寸法、重量、数量、容量では、単位とセットで確認します。「数字だから翻訳不要」と考えないようにします。
衣料品なら、S、M、Lだけではサイズ感が伝わらないことがあります。同じ「M」でも、ブランド、国、商品によって実寸が異なります。そのため、肩幅、胸囲、着丈、ウエストなど、実寸を併記する方法があります。また、cmだけでなく、販売国によってはinch表記を併記することも考えます。DAY46では、サイズ名称ではなく測定値まで示すと覚えてください。
日本では、cm、kg、g、℃をよく使います。販売国によっては、inch、ft、lb、oz、°Fなどが日常的に使われる場合があります。そのため、商品サイズ:30cmだけではなく、現地購入者が理解しやすい単位を併記する方法があります。ただし、換算値を掲載するときは計算ミスに注意します。原寸値をマスタとして保存し、表示時に換算すると管理しやすくなります。
食品、飲料、化粧品などでは、ml、L、g、kgなどの容量・重量が重要です。単位換算するときに、体積、重量を混同しないようにします。例えば、100gと100mlは別です。数字だけ変換して、単位の意味を変えないようにします。
例えば、04/08/2026と表示した場合、人によって、4月8日、8月4日のどちらか分かりにくくなることがあります。そこで、8 Aug 2026、August 8, 2026など、月を文字で示す方法もあります。特に、賞味期限、発送予定日、返品期限、予約販売日、キャンペーン終了日では、誤解がトラブルにつながる可能性があります。国際向けでは、日付形式を統一します。
Pillar2:通貨|「3つの通貨」の違いをハックする
次に通貨を整理します。表示通貨とは、購入者がECサイトで見る価格の通貨です。例えば、日本:5,000円、アメリカ:US$__、フランス:€__のような表示です。現地通貨で表示すると、購入者が自分の生活で使っている金額感で比較しやすくなります。
ここは重要です。表示:100 USD、決済:100 USDの場合もあります。一方、サイト上は現地通貨へ参考換算、決済は円という仕組みもあります。つまり、表示通貨=実際にカードへ請求する通貨とは限りません。ECシステム・決済サービスの仕様を確認します。DAY47では、実際の海外決済を詳しく扱います。
ECサービスによって名称は異なりますが、考え方として、①管理上の基準通貨、②購入者へ表示する通貨、③購入者が支払う通貨、④自社口座へ入金される通貨、が異なる場合があります。例えば、商品マスタ:円、購入者表示:米ドル、購入者決済:米ドル、自社入金:円、という仕組みです。Shopifyの公式説明でも、ストア通貨、顧客へ表示・決済するローカル通貨、入金通貨を区別して説明しています。特定サービスだけの考え方ではなく、通貨には複数の役割があるという参考にしてください。
Pillar2:通貨|為替リスクと価格設定戦略
海外購入者が、5,000 JPYと表示された商品を見る場合、自分の通貨ではいくら?と計算する必要があります。現地通貨なら、価格感を理解しやすくなります。Google Merchant Centerでも、対象国の言語・通貨へ商品情報と購入体験をローカライズすることを推奨しています。ただし、現地通貨表示にしただけで終わりではありません。
避けたい例として、商品価格:US$50、送料:3,000円、合計:自動換算、では購入者が分かりにくくなります。Google Merchant Centerでも、対象国向けの商品価格と配送情報では通貨を整合させる考え方が示されています。商品価格、送料、割引、税、注文合計、返品時の返金額の通貨を確認します。
例えば、日本で5,000円の商品を外貨へ自動換算すると、為替レートによって、海外表示価格が変動する場合があります。今日:US$__、来週:US$__となる可能性があります。つまり、日本円価格を固定していても、海外購入者が見る価格は固定とは限りません。
海外価格には大きく、自動換算と、市場ごとの固定価格という考え方があります。自動換算は、基準価格×為替レートで価格を変えます。固定価格は、アメリカUS$__、フランス€__と国・市場ごとに設定します。自動換算には、為替に追随しやすいという特徴があります。固定価格には、購入者へ同じ価格を見せやすいという特徴があります。一方、固定価格では為替変動によって、円換算した売上が変わる可能性があります。
為替レートが動くたびに、商品価格を毎日変更すると、価格が頻繁に変わります。そのため事業者によっては、為替変動幅、価格改定タイミング、安全幅などを決めます。例えば、毎月確認、一定以上変動したら見直し、などです。重要なのは、感覚で価格を変更しないことです。外貨対応では、単純な為替レートだけではなく、通貨換算に関する手数料が発生するサービスがあります。市場レートとEC・決済サービス上の換算レートが異なる場合があるため、利用サービスの料金・条件を確認します。
注文時:1ドル=__円、返品時:1ドル=__円のように為替が変動することがあります。サービスの仕組みによっては、売上を確定したとき、返金したときに異なる為替レートが使われる場合があります。Shopifyの公式説明でも、支払確定、返金、チャージバックなど取引時点で通貨換算が行われ、為替変動によって差が発生し得ることが説明されています。返金も単純な円換算ではない場合があると覚えてください。
日本の商品5,000円を機械的に換算すると、US$33.47など、中途半端な価格になる場合があります。市場によっては、US$33、US$34、US$34.99のように、価格の見せ方を調整する場合があります。ただし、海外では必ず○.99のように決めつけません。競合価格、自社のブランド、利益、換算手数料を見て決めます。「$」は複数の通貨で使われる記号です。そのため必要に応じて、USD、CAD、AUD、SGDなど、通貨コードを明確にします。特に複数市場へ販売する場合、$100だけでは購入者が、どのドルなのか分からない可能性があります。商品ページ、カート、注文確認メールで確認します。
Pillar3:時差|カスタマーサポートの現地化
例えば、お問い合わせ受付:9:00~18:00とだけ書くと、海外購入者から見て何時なのか分かりません。そこで、Japan Standard Time、JSTなど、どの地域の時間なのかを明記します。例:Customer support: 9:00–18:00 JSTのようにします。重要なのは、日本側の営業時間だと分かることです。
日本時間では月曜日でも、購入者側ではまだ日曜日という場合があります。そのため「明日発送します。」ではなく、8 Aug 2026 JSTのように、必要に応じて日付を明確にします。時差がある取引では、今日、明日、今夜という相対表現に注意します。
越境ECだから、24時間スタッフを置かなければならないとは限りません。重要なのは、いつ返信するのかを購入者が理解できることです。例えば、受付:24時間フォーム送信可能、返信:2営業日以内、営業時間:日本時間9:00~18:00、というように分けます。問い合わせフォームは24時間送れても、人が24時間対応するとは限りません。
よくある表示に「お問い合わせは24時間受付中です。」があります。これだけだと、24時間すぐ返信されると誤解される可能性があります。フォーム受付:24時間、有人対応:平日9:00~18:00 JST、返信目安:2営業日以内、などに分けます。自社で実際に守れる時間を表示します。
海外購入者が、日本の深夜に問い合わせることがあります。その場合、自動返信で、問い合わせを受け付けたこと、受付番号、通常の返信時間、営業時間、急ぎの場合の確認先などを案内できます。自動返信の役割は、問題を解決することではありません。「問い合わせが届いている」と伝えることです。
避けたい状態は、アメリカだから時差は○時間と担当者が暗算することです。国によっては、国内に複数のタイムゾーンがある場合があります。さらに地域によっては、季節で時刻が変わる制度もあります。したがって、国名だけから一律に時差を決めないようにします。必要な場合は、購入者の地域、タイムゾーンを確認します。問い合わせ記録にも、受信日時、購入者地域、返信日時を残します。すると、返信まで何時間かかったかを管理できます。海外CSでは、日本時間だけでなく、購入者側から見た待ち時間も意識します。
日本が営業日でも、購入者側では祝日という場合があります。反対に、海外では通常営業日でも、日本側が祝日の場合があります。特に、配送、問い合わせ、決済確認、現地倉庫など複数国の事業者が関わる場合、営業日が一致しません。「3営業日」と表示する場合は、誰の営業日なのかを分かるようにします。
Pillar4:文化|用途の拡張と「日本の常識」の破壊
ここまで、言語、通貨、時差を整理しました。もう一つが、文化・商習慣です。文化というと、礼儀作法だけを想像するかもしれません。ECでは、商品の使い方、写真、色、ギフト、サイズ感、価格表示、レビュー、返品、問い合わせなどにも表れます。
例えば「お中元におすすめ」という商品説明があります。日本では季節の贈答文化として理解されます。しかし、同じ文化がない地域では、お中元をそのまま翻訳しても意味が伝わりません。その場合、summer giftなど近い用途へ説明し直す、または、日本の文化として意味を説明する方法があります。文化用語は、翻訳だけでなく、背景説明が必要になる場合があります。
海外向け商品ページを作るときは、日本人なら説明しなくても分かることを探します。例えば、箸の長さ、茶碗の大きさ、風呂敷の使い方、畳サイズ、急須の容量、浴衣の着方などです。国内では、見れば分かるとして省略していた情報も、初めて使う購入者には必要です。
DAY45でも触れたように、日本での使い方と、海外での使い方が違う場合があります。例えば、手ぬぐいが、タオルだけでなく、壁飾り、テーブル装飾、ファッション、ギフトとして使われる場合です。このとき、本来の使い方ではないと否定するのではなく、安全性や商品特性に問題がない範囲で、新しい用途を理解します。海外購入者のレビューやSNSは、使い方を知る情報源になります。
色は、国・地域、宗教、行事、文化によって受け止め方が変わる場合があります。そのため、この色なら絶対に縁起が良い、この色は全世界で高級感がある、などと決めつけないようにします。パッケージ、広告、ギフト、季節キャンペーンなどを作るときは、販売国での受け取られ方を確認します。サイズ番号、商品番号、日付、価格、割引表示、数量なども、数字だから世界共通とは限りません。特に、割引率、税表示、日付、サイズなどは、購入者が誤解しない表記にします。
写真に文字がなくても、購入者がサイズ感を理解できるかを確認します。例えば、湯のみだけの写真より、手に持った写真、容量が分かる写真、使用場面、寸法図を追加すると理解しやすくなります。海外購入者は、実物を店頭で確認できないことが多いため、写真から得られる情報は重要です。商品写真に、食品、植物、宗教的な物、国旗、酒類など、商品とは別の物が写る場合があります。海外向け広告では、販売国の文化や広告ルールとの関係も確認する必要があります。国内用画像をそのまま海外広告へ流用する前に確認すると覚えてください。
商品によっては、自宅用より、ギフトとして需要がある国があります。確認するものは、どの時期に贈るか、誰へ贈るか、包装を求めるか、メッセージカード、価格を相手へ見せないか、配送先を贈り先へ変更するかです。日本の、お中元、お歳暮だけを基準にしません。DAY45で競合レビューを見たとき、giftという言葉が多ければ、商品ページにも反映する候補になります。
国・地域、販売サービス、商品カテゴリーによって、購入者が期待する返品体験は異なる場合があります。ただしDAY46では、海外では返品自由、海外では返品しない、のような文化論で決めつけません。現地法令、利用するECサービスの規約、競合の返品表示、自社で実行できる返品方法を確認します。文化は、法律の代わりにはなりません。
例えば「恐れ入りますが、ご確認いただけますと幸いです。」を逐語的に翻訳すると、必要以上に長い文章になることがあります。海外CSでは、結論、必要な情報、次の行動、期限を明確にすることも重要です。例えば、注文番号を教えてください、写真を送ってください、○営業日以内に確認します、というように、相手が次に何をすればよいかを明確にします。ただし、文化対応で危険なのは、アメリカ人は○○、中国人は○○、フランス人は○○と国籍だけで人を決めつけることです。同じ国でも、年齢、地域、商品カテゴリー、購入目的、個人、法人によって違います。そのため、固定観念ではなく、現地EC、レビュー、問い合わせ、実際の購入者データから確認します。
ローカライズを考えるときは、翻訳辞書だけではなく、実際に販売国で使われているECサイトを確認します。見るものは、商品名、価格表示、送料表示、商品写真、サイズ表、返品案内、レビュー、問い合わせ、CTAです。Google Merchant Centerも、海外向け商品について、現地言語・通貨に合わせた商品データや購入体験を推奨しています。
ローカライズマスタの作り方
販売国ごとに、国、表示言語、商品ページ言語、問い合わせ言語、表示通貨、決済通貨、基準価格、為替設定(自動/固定/その他)、営業時間、タイムゾーン、返信目安、長さ単位、重量単位、温度単位、日付形式、主な用途、注意する文化・商習慣を管理します。これを、販売国マスタへ追加します。
実際のケースで考えてみよう|美濃焼の湯のみをアメリカへ販売する
DAY45で、商品:日本製の湯のみ、販売国:アメリカを最初の候補にしました。DAY44の、販売、決済、配送、輸入も確認済みとします。ここから商品ページを作ります。
Step1|日本語の商品情報を整理
商品名:美濃焼 湯のみ、価格:5,000円、サイズ:直径8cm・高さ9cm、容量:250ml、素材:陶器、原産国:日本、特徴:手作業による釉薬仕上げ、注意:色・模様に個体差あり。まず日本語の情報を具体化します。
Step2|商品名を翻訳
単純に「Yunomi」だけにすると、初めて見る購入者には何の商品か分からない可能性があります。そこで「Yunomi – Japanese Ceramic Tea Cup」のように、固有名称+商品カテゴリーを組み合わせる方法を考えます。
Step3|「美濃焼」を説明
Mino Wareと書くだけでなく、日本のどの地域・技法の商品なのか短い説明を加えます。長い歴史説明を最初に置くのではなく、商品、特徴、用途を先に伝えます。
Step4|個体差を説明
国内向けの「手作りならではの風合いをお楽しみください。」だけではなく、釉薬、焼成、手作業によって、色や模様が商品写真とわずかに異なる場合があることを具体的にします。返品時の「写真と違う」という認識差を減らします。
Step5|サイズをローカライズ
元データの直径8cm・高さ9cm・容量250mlを保持します。購入者向けには必要に応じて、cm+inch、ml+fl oz等の併記を検討します。換算値は、計算ミスがないか確認します。
Step6|写真を確認
商品単体、正面、上面、底面、手に持った状態、飲み物を入れた状態、サイズ図、梱包状態などを確認します。写真だけ見ても、どのくらいの大きさか分かる状態にします。
Step7|表示通貨を確認
アメリカ向けにUSDを使う設計とします。ここで、表示通貨、決済通貨、自社への入金通貨を確認します。
Step8|海外価格を確認
国内価格5,000円を、その日の為替でそのまま換算して終わりにしません。国際送料、販売手数料、通貨換算費用、価格変動、利益なども確認します。具体的な海外価格US$__を決めます。
Step9|配送条件を翻訳
発送:注文確認後3営業日以内、配送:発送後__日程度、追跡:あり、とします。「数日で届きます」ではなく、発送までと、発送後の配送を分けます。
Step10|問い合わせ時間を表示
問い合わせフォーム:24時間受付、有人対応:平日9:00~18:00 JST、返信:2営業日以内、とします。購入者が、日本時間であることを理解できるようにします。
Step11|返品ページを確認
商品ページ:英語、返品条件:日本語になっていないか確認します。購入前に重要な条件を、同じ言語で確認できるようにします。
Step12|テスト購入
海外向け表示で、商品→カート→住所→送料→価格→注文確認まで進みます。途中で日本語に戻らないか、通貨が突然変わらないか、単位が分かるか、日付が誤解されないか、問い合わせ先が分かるかを確認します。
Step13|実際の問い合わせを記録
販売開始後、サイズが分からない、使い方が分からない、送料が分からない、価格の通貨が分からないという問い合わせが来れば、商品ページ改善の材料にします。
Step14|ローカライズを更新
海外向け商品ページは、一度翻訳して完成ではありません。検索、問い合わせ、返品理由、レビューを見ながら、説明、写真、単位、FAQを改善します。
よくある失敗
言語・通貨・時差・文化を確認する12の質問
- 購入者は何語で商品を確認しますか?販売国・対象顧客に合わせて決めます。
- 商品名を知らない人でも意味が分かりますか?固有名称に説明を加えます。
- 商品説明は具体的ですか?素材、用途、サイズ、特徴を確認します。
- 購入途中で別言語へ戻りませんか?商品ページから注文完了まで確認します。
- 単位は購入者が理解できますか?長さ、重量、容量、温度を確認します。
- 日付を誤解しませんか?月日を明確にします。
- 何の通貨で表示しますか?表示通貨を決めます。
- 何の通貨で決済しますか?表示通貨との違いを確認します。
- 為替変動をどう扱いますか?自動換算、固定価格、見直しルール等を確認します。
- 問い合わせ対応は何時ですか?タイムゾーンを明記します。
- 販売国独自の用途・文化がありますか?検索、SNS、競合、レビューから確認します。
- 海外購入者としてテストしましたか?商品閲覧から注文完了まで確認します。
やってみよう|ローカライズ診断&確認チェックリスト
4本柱(言語・通貨・時差・文化)のどれかを選ぶと、確認すべきポイントの目安が分かります。あわせて、ローカライズが一通りできているかもチェックできます。入力内容はこのブラウザにのみ保存され、外部へは送信されません。
① ローカライズ診断
② ローカライズ確認チェックリスト
これは自己チェック用の簡易ツールです。実際の翻訳品質や通貨・決済の仕様は、専門家や利用サービスの公式情報で確認してください。
アウトプットワーク|海外ECローカライズ確認表を作ろう
DAY45で選んだ、最初に販売テストする国を使ってください。分からない項目は、なんとなく翻訳で埋めないでください。現地EC、検索、レビュー、利用するECサービス、決済サービス、実際の購入者からの問い合わせを確認し、販売国ごとのローカライズマスタへ残してください。
① 言語
② 単位・通貨
③ 時差・文化
記入できたら完了にする
理解度チェッククイズ
第1問 越境ECのローカライズについて適切なのはどれでしょうか?
第2問 日本固有の商品名について適切なのはどれでしょうか?
第3問 AI翻訳について適切なのはどれでしょうか?
第4問 商品ページは英語ですが、カートと返品条件は日本語です。適切な対応はどれでしょうか?
第5問 「04/08/2026」という日付について適切なのはどれでしょうか?
第6問 問い合わせ時間が「9:00~18:00」と表示されています。海外向けに追加するとよい情報はどれでしょうか?
第7問 表示通貨と決済通貨について正しいものはどれでしょうか?
第8問 円価格を外貨へ自動換算する場合について正しいものはどれでしょうか?
第9問 海外向け価格について適切なのはどれでしょうか?
第10問 海外文化について適切な考え方はどれでしょうか?
第11問|表示確認問題 アメリカ向けECで次の表示があります。商品:US$40/送料:2,500円/返品:商品到着後7日以内/問い合わせ:9:00~18:00/サイズ:M。どこを改善するとよいでしょうか?
回答例を見る
少なくとも次を確認します。商品価格US$40と送料2,500円は通貨が揃っておらず、購入者が合計金額を理解しやすいよう通貨表示を確認します。返品条件はどの言語で表示されているか、返送料、受付方法も確認します。問い合わせ9:00~18:00にはJST等のタイムゾーンを追加します。サイズMだけでなく、実寸を確認できるようにします。つまり、言語、通貨、時間、サイズを購入者側から見直します。
第12問|実務判断問題 日本で5,000円の商品があります。担当者が、「今日の為替で米ドルへ換算して商品ページを作りました。今後は確認不要です」と言いました。何が問題でしょうか?
回答例を見る
為替レートは変動するため、今日の換算結果が今後も同じとは限りません。さらに、換算手数料、国際送料、販売手数料、利益なども確認する必要があります。
対応として、自動換算にするのか、市場別固定価格にするのか、何日・何%の変動で見直すのかを決めます。
よくある質問
英語翻訳だけでは十分とは限りません。商品説明、サイズ、単位、価格、通貨、配送、返品、問い合わせ時間など、購入者が注文まで理解できる状態を作ります。販売国によって必要な言語も異なります。
最初は販売する商品と国を絞り、購入に必要なページから対応すると整理しやすくなります。商品ページだけでなく、カート、配送、返品、注文確認なども確認します。
初稿作成には活用できますが、商品固有名、材質、成分、使用方法、数字、単位、注意事項、返品・配送条件などは確認します。誤訳の影響が大きい内容は必要に応じて言語に詳しい人へ確認します。
必ず変える必要はありません。日本固有名称を残し、英語等で商品カテゴリーや用途を補足する方法があります。初めて商品を見る購入者でも理解できることが重要です。
販売方法によっては円表示も可能ですが、購入者が自国通貨へ換算しなければならず、最終金額を理解しにくくなる場合があります。表示通貨・決済通貨・利用サービスの条件を確認します。
必ずしもそうとは限りません。表示通貨、決済通貨、入金通貨はサービスによって異なる場合があります。利用するEC・決済サービスの仕様を確認します。
必ず毎日変更する必要はありません。自動換算、固定価格、一定条件での見直しなど方法があります。自社の価格設定、利益、利用サービスに合わせてルールを決めます。
利用する決済・ECサービスや取引通貨によって扱いが変わります。返金時に為替換算が関係する場合があるため、注文時・返金時の処理方法を確認します。
必ずしも24時間有人対応する必要はありません。問い合わせを受け付ける時間と、人が返信する時間を分け、タイムゾーンと返信目安を購入者へ明示します。
販売国や対象顧客によります。DAY45で選んだ市場で実際に使われている言語を確認します。複数言語を使う国・地域もあるため、国名だけで一つの言語に決めないようにします。
現地ECの商品ページ、レビュー、SNS、検索、実際の問い合わせなどを確認します。「この国の人はこうだ」という固定観念ではなく、自社商品に近い実際の行動から仮説を作ります。
販売国の購入者になったつもりで、商品検索、商品ページ、サイズ、価格、送料、カート、住所入力、注文確認、返品条件、問い合わせまで一通りテストします。途中で日本語や円だけに戻らないかも確認します。
今回のまとめ
越境ECでは、日本語の商品ページを外国語へ翻訳するだけでは十分ではありません。今回覚えておきたいポイントは次の5つです。
- 翻訳とローカライズは別
- 商品名だけでなく購入完了まで言語を確認する
- 表示通貨・決済通貨・入金通貨を分ける
- 為替変動を含めた海外価格の管理方法を決める
- 時差・単位・用途・文化を購入者側から確認する
基本の流れは、販売国を決める→使用言語を確認→日本語原文を具体化→商品名・説明を翻訳→商品固有語を確認→サイズ・重量・容量を確認→日付・時間を確認→表示通貨を決める→決済通貨を確認→為替の扱いを決める→問い合わせ時間を決める→現地EC・レビュー・SNSを確認→用途・文化の違いを反映→商品ページから購入完了までテスト→問い合わせ・返品理由から改善です。大切なのは、完璧な翻訳文章を作ることではありません。海外購入者が、これは何の商品?いくら?どのサイズ?いつ届く?返品できる?問い合わせはいつ返ってくる?という疑問を、自分で確認できる状態にすることです。
Google Merchant Centerでも、海外販売では商品データだけでなく、ランディングページや購入手続まで言語・通貨を揃えたローカライズが推奨されています。そして通貨については、画面に表示される価格、実際に支払う通貨、販売者へ入金される通貨、為替換算を分けます。為替は動くため、一度外貨価格を作ったら終わりではありません。また、海外向け=英語、海外の人=○○が好き、と決めつけず、DAY45で学んだ、検索、SNS、競合、レビュー、問い合わせから、実際の購入者に合わせて改善します。
「翻訳の正解を探すだけじゃなく、“初めて見る人が迷わず買えるか”を確認しよう。言葉・お金・時間・文化を全部つなげるのがポイントだよ!」
DAY46の実践課題
DAY45で選んだ、最初に販売テストする国を使ってください。国・地域と商品を書き出し、主な言語、商品名、商品カテゴリー説明、使用方法、日本固有語とその説明を整理します。商品ページ、カート、配送、返品、問い合わせ、注文確認メールの対応状況を確認します。長さ・重量・容量・温度の単位と、サイズ実寸の表示有無、日付形式、営業時間、タイムゾーン、返信目安を整理します。国内基準価格、表示通貨、海外表示価格、決済通貨、入金通貨、為替の扱い、価格見直しルールを決めます。日本での用途、販売国で見つかった用途、競合ページ・レビュー・SNSで分かったこと、海外購入者へ追加すべき説明を書き出し、商品名、何の商品か、サイズ、素材、価格の通貨、送料、発送時期、日付、問い合わせ時間、返品条件、カート途中の言語、注文確認までの金額の意味、が分かるかをテスト購入で確認してください。分からない項目は、なんとなく翻訳で埋めないでください。現地EC、検索、レビュー、利用するECサービス、決済サービス、実際の購入者からの問い合わせを確認し、販売国ごとのローカライズマスタへ残してください。

