EC商品の価格はどう決める?原価・競合・価値から考える価格設定の基本 DAY12

【DAY12】EC商品の価格はどう決める?
原価・競合価格・商品価値・送料を使って、赤字にならず選ばれる価格を考える
ECで商品を売るとき、多くの人が最初に悩むのが「いくらで売ればいいのか」です。安すぎると売れても利益が残りません。高すぎると、商品が良くても選ばれにくくなります。つまり、価格は高ければいい、安ければいい、では決められないということです。ECの価格設定では、少なくとも次の4つを見ます。
- 原価
- 競合価格
- 商品価値
- 送料
さらに、どの販売場所で売るかによって、販売手数料や広告費も変わります。そのため、「なんとなくこのくらい」で決めると、売れないか、売れても赤字になる可能性があります。
「価格は“気分で決める数字”じゃなくて、“根拠を持って決める数字”なんだ!」
この記事で分かること
- なぜ価格設定が大切なのか
- 原価から見た最低ライン
- 競合価格を見る理由
- 商品価値を価格へどう反映するか
- 送料込み・送料別の考え方
- 価格の決め方の3つの基本
- 赤字を防ぐためのチェック方法
- 値下げするときに確認すること
- 高めの価格でも選ばれる考え方
- 自分の商品で価格を考えるワーク
先に結論|価格は「4つの視点」で決める
EC商品の価格は、次の4つを合わせて考えます。
| 視点 | 何を見るか |
|---|---|
| 原価 | 赤字にならないか |
| 競合価格 | 市場の相場とかけ離れていないか |
| 商品価値 | その価格でも「欲しい」と思ってもらえるか |
| 送料 | 購入者の最終支払額がいくらになるか |
つまり、価格設定は「1つの数字を決める作業」ではなく、赤字を防ぎながら、購入者に選ばれる条件を整える作業です。
身近な例で考えると「お弁当の値段」と同じ
街のお弁当屋さんを想像してください。1個のお弁当にかかる費用は、材料費だけではありません。
- ごはんやおかずの材料費
- 容器代
- 箸やおしぼり
- 人件費
- お店の家賃
- 電気代
もし材料費だけを見て300円だから、350円で売ろうと決めたらどうなるでしょうか。お客さんは来るかもしれませんが、他の費用を払うと赤字になるかもしれません。逆に、近くのお店が600円前後で売っているのに、同じようなお弁当を1,200円で売れば、理由がない限り選ばれにくくなります。ECも同じです。自分の都合だけでも、競合だけでも、決められないのが価格です。
1.まずは「赤字にならない価格」を知る
価格設定の出発点は原価
価格を決めるとき、最初に確認するのは原価です。原価とは、商品を用意するためにかかった費用です。たとえば、次のような商品を考えます。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 商品原価 | 3,000円 |
| 梱包費 | 200円 |
| 送料の自社負担 | 800円 |
| 決済手数料 | 360円 |
| 販売手数料 | 1,000円 |
| 広告費 | 1,500円 |
この商品を6,860円で売った場合、変動費を引いた残りは0円です。つまり、少なくとも6,860円を超えないと、固定費や利益の分が残りません。
「商品原価だけじゃなく、“売るための費用”まで入れて考えよう!」
2.競合価格を見て「相場」を知る
競合価格を見る理由
赤字にならない価格が分かっても、それだけでは価格を決められません。次に見るのが競合価格です。競合価格を見る目的は、単に安く合わせることではありません。主な目的は、市場の相場を知る、自分の商品が高いのか安いのかを知る、購入者の価格感覚を知る、差別化の必要性を考える、値付けの根拠を整理することです。
競合価格の見方
たとえば、自分が木製トレーを販売したいとします。競合商品を調べると、次のような価格帯だったとします。
| 商品 | 価格 |
|---|---|
| A社 | 5,980円 |
| B社 | 6,500円 |
| C社 | 7,200円 |
| D社 | 8,000円 |
この場合、だいたい6,000円台〜8,000円台が相場に見えます。ここで自分の商品を12,000円で売りたいなら、購入者が納得できる理由が必要です。逆に、4,500円で売るなら、利益が残るか、安すぎて不安に見えないかを確認します。
競合価格を見るときに注意したいのは、最安値に合わせればよいわけではないことです。同じ木製トレーでも、木材の質、サイズ、デザイン、手作りか量産品か、写真の見せ方、ブランド力、ギフト対応、レビュー数、発送の早さ、送料込みか送料別かといった違いがあります。
価格だけを見て比較すると、間違った判断になることがあります。「なぜその価格なのか」まで見ることが大切です。
3.商品価値を考える
同じ商品でも「感じる価値」は違う
価格は、原価や相場だけでは決まりません。購入者は「この商品にその値段を払いたいか」で判断します。これが商品価値です。たとえば、同じマグカップでも、有名な職人が作った、限定品で数が少ない、名前を入れられる、贈り物用に包装される、デザインが特別、地域の素材を使っている、ストーリーがある、長く使える品質があるといった違いがあります。これらは、原価にそのまま表れない価値です。
- 量産品
- 似た商品が多い
- 特別な説明がない
- 地域の職人による手作り
- 木材の産地が明確
- 一つずつ木目が異なる
- ギフト包装あり
- 製作背景が分かる
この場合、商品Bのほうが高い価格でも選ばれる可能性があります。ただし、大事なのは「価値がある」と自分が思うことではなく、購入者に伝わる形で価値を見せることです。
商品価値を伝える要素
- 商品名/写真/説明文
- 使用シーン/サイズや素材の情報
- 作り手の紹介/比較表現
- レビュー/ギフト対応/保証やサポート
価格だけで勝負できないなら、価値の見せ方を強くします。
4.送料をどう考えるか
購入者が見るのは「商品価格」だけではない
ECでは、商品価格そのものだけでなく、最終的な支払総額が重要です。たとえば、次の2つを見てみます。
| パターン | 商品価格 | 送料 | 合計 |
|---|---|---|---|
| A | 5,500円 | 800円 | 6,300円 |
| B | 6,300円 | 0円 | 6,300円 |
合計は同じでも、購入者の感じ方は同じとは限りません。「送料無料」のほうが買いやすい人、商品価格が安く見えるほうがよい人、まとめ買いで送料を抑えたい人がいます。このため、送料込みと送料別は、価格の見え方に影響します。
- 総額が分かりやすい
- 「送料無料」が伝わりやすい
- かご落ちを減らしやすい
- ⚠ 商品価格が高く見えることがある
- ⚠ 地域差のある送料を吸収しにくい
- ⚠ 複数商品のときに設計が複雑になる
- 商品価格を低く見せやすい
- 配送地域ごとの差をつけやすい
- 大きさや温度帯別に設定しやすい
- ⚠ 最後に送料が加わり、購入をやめる人がいる
- ⚠ 総額が分かりにくい
- ⚠ 「思ったより高い」と感じられることがある
5.価格の決め方の3つの基本
ECでは、主に次の3つの考え方を使います。
原価に利益を上乗せして決める方法です。
例:変動費6,000円+利益2,000円=8,000円
- 向く場面:赤字を防ぎたいとき、採算をはっきり見たいとき、卸・仕入商品の価格設定
- 注意点:相場とかけ離れることがある、購入者が払いたい価格とは限らない
市場の価格帯を見て決める方法です。相場が6,000円〜7,000円なら、少し安くして入りやすくする、相場並みにして安心感を出す、高めにして高品質路線で見せるといった決め方があります。
- 向く場面:同じような商品が多い市場、購入者が比較しやすい商品、価格差が購入判断に強く影響する商品
- 注意点:利益が出るとは限らない、安さ競争に巻き込まれやすい
購入者が感じる価値をもとに決める方法です。手作り、限定品、地域性、ギフト対応、長く使える品質、ブランド体験などが強い場合に向きます。
- 向く場面:比較されにくい独自商品、ストーリーやブランドがある商品、安さ以外の魅力で選ばれる商品
- 注意点:価値が伝わらないと高く見える、写真・説明・見せ方が弱いと売れにくい
6.実際の価格設定の流れ
価格は、次の順番で考えると整理しやすいです。
- Step1 原価と変動費を出す:まず、1個売れるごとにかかる費用を出します。例:商品原価3,000円+梱包費200円+送料800円+決済手数料300円+販売手数料700円+広告費1,000円=合計6,000円。この場合、6,000円以下では採算が厳しくなります。
- Step2 最低ラインを決める:次に、「最低でもいくら必要か」を考えます。固定費の回収や利益のために1個当たり2,000円残したいなら、6,000円+2,000円=8,000円が最低ラインの目安です。
- Step3 競合価格を調べる:似た商品が、いくらで売られているかを見ます。競合相場が7,500円〜9,000円だったとすると、8,000円は市場から大きく外れていません。
- Step4 商品価値を整理する:自分の商品が競合と比べてどう違うかを整理します。品質が高い、写真がきれい、ギフト向き、ストーリーがある、作り手が見える、発送が早い、保証があるなどが強ければ、相場より少し高くても選ばれる余地があります。
- Step5 送料を含めた総額で確認する:最後に、購入者の支払総額を確認します。商品価格8,500円、送料800円なら合計9,300円です。競合が送料無料9,000円なら、自分のほうが高く見えるかもしれません。この場合、商品価格を調整する、送料無料ラインを設ける、商品価値の見せ方を強くするなどを検討します。
7.ケースで考える
手作りジャムを5,000円で売ろうと考えています。1個売れるごとの費用は次のとおりです。
| 製造原価 | 2,200円 |
| 瓶・箱・梱包費 | 300円 |
| 送料 | 700円 |
| 決済手数料 | 180円 |
| 販売手数料 | 500円 |
| 広告費 | 900円 |
| 合計 | 4,780円 |
1個売れて220円しか残りません。この220円から、さらに固定費を払う必要があります。この価格では、売れてもかなり厳しい可能性があります。
木製プレートを11,000円で売りたいとします。しかし、競合相場は7,000円〜8,500円です。この場合、11,000円で売るには、有名な職人による制作、高品質な素材、長く使える仕上げ、ギフト対応、数量限定、ブランドの世界観といった理由が必要です。
これらが弱いと、「高すぎる」と見られやすくなります。
もともと商品価格6,800円、送料800円だった商品を、送料込み7,400円へ変更したとします。購入者から見ると、総額が分かりやすくなります。すると、カートでの離脱が減る可能性があります。
ただし、この変更で利益が減っていないかは別途確認が必要です。売れやすさと採算の両方を見ます。
8.値下げするときに確認すること
価格が高くて売れないと感じると、すぐ値下げしたくなることがあります。しかし、値下げは簡単そうに見えて、利益を大きく減らします。たとえば、もともと9,000円で売っていた商品を8,000円へ下げたとします。費用が変わらなければ、その1,000円はほぼそのまま利益の減少になります。
そのため、値下げ前には次を確認します。
- 本当に価格が原因なのか
- 写真や説明文に問題はないか
- 競合と比べて価値が伝わっているか
- 送料の見せ方に問題はないか
- レビューや信頼感が不足していないか
- まとめ買い、クーポン、セット販売で対応できないか
価格を下げる前に、価格以外の改善余地を確認することが大切です。
10.よくある価格設定の失敗
商品価格を決める10の質問
- 1個売れるごとの費用はいくらですか?原価、送料、梱包費、決済手数料、販売手数料、広告費を整理します。
- 最低でもいくら残したいですか?固定費や利益のために必要な金額を考えます。
- この商品は送料込みですか?送料別ですか?購入者の総支払額を確認します。
- 競合の価格帯はいくらですか?最安値だけでなく、価格帯全体を見ます。
- 競合より高い・安い理由は説明できますか?価格差の理由を言葉にできるか確認します。
- この商品の価値は何ですか?素材、品質、ストーリー、ギフト対応などを整理します。
- 価値は商品ページで伝わっていますか?写真、説明文、構成を見直します。
- 値下げしなくても改善できる部分はありますか?見せ方や送料設計、セット販売などを確認します。
- 広告を使う場合、1注文当たりの広告費はいくらですか?採算ラインを確認します。
- この価格で売れたとき、事業として続けられますか?1回売れるだけでなく、継続性を見ます。
やってみよう|価格ポジショニングツール
1個売れるごとの費用と、残したい利益を入力すると「最低ライン」が分かります。さらに競合の価格帯と、試したい候補価格を入力すると、その価格が最低ラインを下回っていないか、相場ゾーンのどこに位置するかを確認できます。入力内容はこのブラウザにのみ保存され、外部へは送信されません。
① 1個売れるごとの費用
② 競合の価格帯
③ 候補価格を試す
これは仕組みを理解するための簡易ツールです。実際の価格設定では、商品価値の伝わり方や継続的な採算も合わせて検討してください。
アウトプットワーク|自分の商品で価格を考えよう
販売したい商品を一つ決めてください。上のツールの数字を書き写しながら整理すると分かりやすくなります。入力内容はこのブラウザにのみ保存され、外部へは送信されません。
① 1個売れるごとの費用
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 商品原価・製造原価 | |
| 梱包費 | |
| 送料 | |
| 決済手数料 | |
| 販売手数料 | |
| 広告費 | |
| その他 | |
| 合計 |
② 最低ラインを出す
③ 競合価格を調べる
| 競合商品 | 価格 | 特徴 |
|---|---|---|
| A | ||
| B | ||
| C |
④ 自分の商品の価値を書く
競合と違う点は「」です。
高めでも選ばれる理由は「」です。
⑤ 最終価格を考える
| 候補価格 | |
| 送料込み/送料別 | |
| 購入者の総支払額 | |
| この価格にした理由 |
記入できたら完了にする
理解度チェッククイズ
第1問 EC商品の価格を決めるとき、最初に確認したいものはどれでしょうか?
第2問 競合価格を見る主な理由として近いものはどれでしょうか?
第3問 商品価値の説明として最も近いものはどれでしょうか?
第4問 商品価格6,000円、送料800円の商品と、商品価格6,800円、送料無料の商品では、何を確認することが大切でしょうか?
第5問 原価基準の価格設定の説明として正しいものはどれでしょうか?
第6問 値下げを考える前に確認したいこととして適切なものはどれでしょうか?
第7問|計算問題 次の商品の価格を考えます。商品原価:2,800円/梱包費:200円/送料:700円/決済手数料:200円/販売手数料:500円/広告費:800円/最低限残したい金額:1,500円。最低ラインはいくらでしょうか?
回答を見る
まず、1個売れるごとの費用を合計します。2,800円+200円+700円+200円+500円+800円=5,200円。
最低限残したい金額1,500円を足します。5,200円+1,500円=6,700円
第8問|実務判断問題 競合商品は7,000円前後です。自分の商品は9,800円で売りたいと考えています。どのような点を整理・改善してから販売価格を決めるとよいでしょうか?
回答例を見る
9,800円でも選ばれる価値があるか整理する、競合との違いを明確にする、素材・品質・作り手・ストーリー・限定性などの強みを確認する、写真や説明文で価値が伝わるようにする、送料込みか送料別かを含めた総額を確認する、高価格の理由を商品ページで説明できるようにする、競合との比較で見劣りしない見せ方にすることを確認します。
よくある質問
原価は大切な出発点ですが、それだけでは足りません。競合価格、商品価値、送料を見て、購入者が選びやすい条件になっているか確認する必要があります。
安くしたほうが売れやすい場合もありますが、利益が残らず続けにくくなることがあります。価格だけでなく、価値や見せ方も含めて判断します。
そうとは限りません。独自性、品質、ギフト性、ブランド力などがあり、その価値がしっかり伝われば、高めの価格でも選ばれる可能性があります。
購入者に分かりやすいメリットがありますが、販売者が送料をどのように負担するか確認が必要です。商品価格とのバランスを見ます。
必ずではありません。写真、説明文、レビュー、信頼感、配送条件、商品価値の伝わり方が原因の場合もあります。値下げ前に他の改善点も確認します。
状況によって見直すことがあります。原価、送料、広告費、競合状況、レビュー、販売実績などを見ながら調整します。ただし、頻繁に変えすぎると購入者に分かりにくくなることもあります。
今回のまとめ
EC商品の価格は、なんとなく決めるものではありません。今回覚えておきたいポイントは、次の5つです。
- まずは原価と売るための費用を確認し、赤字にならない価格を知る
- 競合価格を見て、市場の相場とかけ離れていないか確認する
- 商品価値を整理し、高めでも選ばれる理由をつくる
- 商品価格だけでなく、送料を含めた総支払額で考える
- 値下げの前に、写真・説明文・見せ方・送料設計も見直す
価格設定は、安く売ることでも、高く売ることでもなく、赤字を防ぎながら、購入者に「この価格なら買いたい」と思ってもらうことが目的です。
「価格は“数字”だけど、裏には原価・相場・価値・送料の考え方があるよ!」
DAY12の実践課題
販売したい商品、または今販売している商品を1つ選び、①原価と売るための費用(商品原価・梱包費・送料・決済手数料・販売手数料・広告費)、②競合価格(似た商品の価格帯、送料込みか送料別か、自分の商品との差)、③商品価値(強み・独自性・ストーリー・ギフト性・品質の安心感)、④最終価格案(候補価格・送料込み/送料別・購入者の総支払額・その価格にした理由)を書き出してください。
最後に、「この商品を____円で売りたい理由は、__________です」という一文を完成させてみてください。理由まで言葉にできると、価格設定の精度が上がります。


