何個売れば黒字になる?ECの損益分岐点・CAC・LTVを分かりやすく解説 DAY13

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【DAY13】何個売れば黒字になる?損益分岐点・CAC・LTVの基本

「あと何個売れば赤字を抜けられるか」「1人のお客さんにいくらまで集客費をかけられるか」を整理する

売れているのに、なぜ赤字なのか?EC事業の採算を劇的に改善する「3つの数字」のダッシュボード
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🔊 音声で聞く「1000件の注文が会社を殺す」

DAY10では、売上・原価・利益の違いを整理しました。DAY11では、商品が1個売れたときに、送料や手数料を差し引いていくら残るのかを計算しました。DAY12では、赤字を防ぎながら購入者にも選ばれる価格の決め方を学びました。DAY13では、視点を「商品1個」から事業全体と顧客1人へ広げます。確認するのは、次の3つです。

  • 月に何個売れば固定費を回収できるのか
  • 新しい顧客1人を獲得するためにいくら使っているのか
  • その顧客が将来を含めていくらの価値を生むのか

商品1個では利益が出ていても、販売数量が少なければ月全体では赤字になることがあります。反対に、初回注文では広告費を回収できなくても、その顧客が繰り返し購入してくれれば、長期的には利益が残る場合があります。

「1回の注文だけでなく、“何個売るか”と“何回買ってもらえるか”まで見よう!」

この記事で分かること

  • 損益分岐点とは何か/黒字になるための販売数量
  • 目標利益を得るために必要な販売数量
  • CACの意味と計算方法/広告費とCACの違い
  • LTVの意味と簡易的な計算方法
  • 売上ベースLTVと利益ベースLTVの違い
  • CACとLTVを組み合わせた判断方法
  • 初回購入で赤字でも成立する条件
  • 売上を増やす前に改善すべき数字

先に結論|ECの採算は3つの質問で見る

損益分岐点は、売上高と総費用が同じになり、利益がゼロになる販売量や売上規模を指します。費用を変動費と固定費に分けて計算し、実際の売上が損益分岐点を上回ると利益、下回ると損失になるという考え方です。EC事業の採算は、次の3つの質問に置き換えると分かりやすくなります。

ECの採算は3つの質問に集約される。損益分岐点(月に何個売れば赤字を抜けられるか/対象スコープ:事業全体)、CAC(新規顧客1人を獲得するためにいくら使ったか/対象スコープ:新規集客)、LTV(その顧客が継続期間中にいくらの価値を生むか/対象スコープ:既存顧客・時間軸)
指標確認する質問
損益分岐点月に何個売れば赤字を抜けられるか
CAC新規顧客1人を獲得するためにいくら使ったか
LTVその顧客が継続期間中にいくらの価値を生むか
損益分岐点販売数量 固定費 ÷ 商品1個当たりの限界利益
CAC 新規顧客獲得に使った費用 ÷ 新規顧客数
簡易LTV 平均購入単価 × 平均購入回数 × 利益率

ただし、LTVの計算方法は事業によって異なります。売上額で計算する方法もあれば、粗利益や限界利益を基準に計算する方法もあります。DAY13では、広告費をどこまでかけられるか判断しやすいように、利益を基準にしたLTVを中心に使います。

身近な例で考えると「月謝を払う教室」と同じ

月謝制の教室を想像してください。生徒が1人入ると、月謝が入ります。しかし、教室には生徒が0人でも発生する費用があります。

  • 教室の家賃
  • 講師の固定給
  • 予約システム代
  • 電気代/通信費

生徒1人から得られる利益だけでは、教室全体が黒字かどうかは分かりません。固定費を回収するために、必要な生徒数を確認する必要があります。さらに、新しい生徒を集めるために広告費を使っている場合は、「1人獲得するのにいくらかかったか」「その生徒が何か月通ってくれるか」も重要です。ECでも同じです。商品1個の利益・必要な販売数・顧客との継続取引を分けて考えます。

今回使用するECショップの例

今回は、コーヒー豆を販売するECショップを例にします。

ケーススタディ:コーヒー豆ECショップの基本データ。1注文当たりの数字(平均注文金額4,000円、内訳:商品原価1,500円・送料自社負担500円・決済販売手数料250円・梱包費150円、1注文当たりの変動費合計2,400円)と1ヶ月の固定費(固定人件費8万円・倉庫作業場所3万円・ECシステム費2万円・固定の制作運営費2万円・通信業務システム1万円、固定費合計160,000円)

商品1注文当たりの数字

項目金額
平均注文金額4,000円
商品原価1,500円
送料の自社負担500円
梱包費150円
決済・販売手数料250円
変動費合計2,400円
売上4,000円-変動費2,400円=限界利益1,600円

1か月の固定費

固定費月額
ECシステム費20,000円
固定の人件費80,000円
倉庫・作業場所30,000円
通信・業務システム10,000円
固定の制作・運営費20,000円
固定費合計160,000円

この数字を使い、損益分岐点、CAC、LTVを順番に計算します。

1.損益分岐点とは|利益がちょうど0円になる境目

損益分岐点は、売上と費用が同じになり、利益が0円になる地点です。この地点より多く売れば黒字になり、少なければ赤字になります。

赤字
損益分岐点
利益0円
黒字

J-Net21では、商品1個当たりの売上と変動費の差を限界利益とし、その限界利益の合計が固定費と同じになった販売数量を、損益分岐点販売量として説明しています。

固定費と変動費を分ける

損益分岐点を計算するには、費用を2つに分けます。

利益の源泉:限界利益を正確に把握する。売上4,000円-変動費2,400円(商品原価・決済手数料・販売手数料・梱包費・注文ごとの送料など売れるほど増える費用)=限界利益1,600円(固定費の回収と純利益に回せる本当の稼ぎ)。勘違い注意:固定費を支払う原資は売上ではなく限界利益
変動費(商品が売れる数に合わせて増減)
  • 商品原価
  • 決済手数料
  • 販売手数料
  • 梱包費
  • 注文ごとの送料
  • 注文ごとの発送作業料
固定費(販売数が0でも発生しやすい)
  • ECシステムの月額料金
  • 固定給
  • 家賃
  • 定額の倉庫費
  • 通信費
  • 定額の業務システム費
⚠ 同じ費用でも契約条件によって分類が変わります。たとえば、倉庫費が月額固定なら固定費、出荷1件ごとに発生するなら変動費として管理できます。

2.何個売れば黒字になるか計算する

今回の例では、次の数字を使います。1注文当たりの限界利益:1,600円/月の固定費:160,000円

損益分岐点:赤字の海を抜ける魔法の境界線。グラフの横軸は月間注文数、縦軸は金額。限界利益ラインと固定費ライン(160,000円)の交差点=損益分岐点100件。固定費160,000円÷1注文当たりの限界利益1,600円=損益分岐点100件。現在が月間70件なら、目標は黒字まであと30件という具体的な行動に変わる
固定費160,000円 ÷ 1注文当たりの限界利益1,600円 = 100件

つまり、このECショップは、月100件の注文で利益が0円になります。100件は、やっと赤字を抜ける数量です。

月間注文数限界利益合計固定費利益
50件80,000円160,000円▲80,000円
80件128,000円160,000円▲32,000円
100件160,000円160,000円0円
120件192,000円160,000円32,000円
150件240,000円160,000円80,000円

「あと何個必要か」を出す

現在の月間注文数が70件だったとします。損益分岐点は100件なので、黒字になるためにはあと30件必要です。

損益分岐点100件-現在70件=あと30件

このようにすると、「売上を増やしたい」という曖昧な目標を、具体的な行動へ変えられます。

「“もっと売りたい”ではなく、“あと30件必要”まで分かるんだね!」

3.目標利益を得るには何個必要?

損益分岐点は、利益0円の地点です。月10万円の利益を残したい場合は、固定費に目標利益を加えます。

目標販売数量 (固定費+目標利益)÷ 1注文当たりの限界利益
固定費160,000円+目標利益100,000円=260,000円
260,000円÷1,600円=162.5件

端数の注文はないため、切り上げて163件必要です。J-Net21でも、固定費に目標利益を加え、それを商品1個当たりの限界利益で割ることで、目標利益に必要な販売数量を求める方法が示されています。

目標必要注文数
赤字を止める(最低目標)100件
月5万円の利益(標準目標)132件
月10万円の利益(成長目標)163件

このように分けると、目標が現実的になります。

4.損益分岐点を下げる4つの方法

黒字になる方法は、注文数を増やすことだけではありません。損益分岐点は、次の方法でも下げられます。

① 販売価格を上げる

販売価格が上がり、変動費が大きく変わらなければ、1注文当たりの限界利益が増えます。

② 変動費を下げる

送料、梱包費、販売手数料などを見直します。

③ 固定費を下げる

使っていないシステムや定額契約を見直します。

④ 平均注文金額を上げる

セット販売やまとめ買いによって、1注文当たりの売上を増やします。

販売価格を上げる、単位当たり変動費を下げる、固定費を削減することは、損益分岐点を下げる基本的な改善方法です。

送料を200円下げた場合

変動費2,400円→2,200円
売上4,000円-変動費2,200円=限界利益1,800円
固定費160,000円÷限界利益1,800円=88.9件(切り上げ89件)
改善前改善後
限界利益1,600円/損益分岐点100件限界利益1,800円/損益分岐点89件

送料を200円改善しただけで、黒字に必要な注文数が11件減りました。

5.CACとは|新規顧客1人を獲得するためにかかった費用

CACは、Customer Acquisition Costの略で、日本語では顧客獲得単価や顧客獲得コストと呼ばれます。CACは、広告費だけでなく、新規顧客を獲得するために使った販促費、制作費、人件費、営業活動費などを含めて計算する考え方です。

CAC 顧客獲得に使った総費用 ÷ 新規顧客数
CAC(顧客獲得単価):広告費だけを見る錯覚から抜け出す。Illusion(広告管理画面のCPA)は広告費だけを注文数で割り「獲得単価1,500円、よし黒字だ」という誤った安心感を生む。Reality(真実のCACファネル)は広告費12万円・制作費2万円・LP改善費1万円・マーケ人件費2万円の総費用17万円を、既存顧客の再注文や無料登録を除いた新規顧客85人で割るとCAC2,000円。CACは獲得に使った全費用を純粋な新規顧客数で割らなければならない

CACを実際に計算する

顧客獲得に使った費用金額
広告費120,000円
広告画像・動画制作20,000円
LP改善費10,000円
販促担当者の人件費配分20,000円
合計170,000円
この月に新しく85人の顧客を獲得しました。
170,000円÷新規顧客85人=CAC 2,000円

新しい顧客1人を獲得するために、平均2,000円使ったことになります。CACは、新規顧客獲得に使った総費用を新規顧客数で割って算出します。購入ではなく、資料請求や無料登録だけを数える指標とは区別して管理する必要があります。

6.広告費とCACは同じではない

広告費だけを注文数で割った数字は、広告経由の獲得単価として参考になります。しかし、CACでは広告費以外も含める場合があります。

費用広告費だけの計算CAC
広告出稿費含む含む
制作費含めない場合がある含める
LP改善費含めない場合がある含める
マーケティング人件費含めない場合がある含める
営業活動費含めない場合がある含める

広告管理画面で「獲得単価1,500円」と表示されていても、制作費や人件費を含めるとCACは2,000円になる可能性があります。

CACは「注文数」ではなく「新規顧客数」で割る

同じ顧客が1か月に3回注文した場合を考えます。注文数は3件ですが、新規顧客数は1人です。CACを計算するときに3件で割ると、顧客獲得費用が実際より低く見えます。

「注文」と「顧客」を分けて数えることが重要です。(注文数:3件/新規顧客数:1人)

7.チャネルごとにCACを見る

全体の平均CACだけでは、どの集客方法が優れているか分からないことがあります。たとえば、次の結果だったとします。

集客経路費用新規顧客CAC
検索広告80,000円20人4,000円
SNS広告60,000円30人2,000円
紹介施策20,000円20人1,000円
記事・自然検索10,000円相当15人約667円

全体平均だけを見ると、改善すべき場所が分かりません。チャネル別に分けると、検索広告のCACが高いことが見えてきます。チャネルごとのCACを比較すると、どの集客方法へ予算を配分すべきか判断しやすくなります。

8.LTVとは|顧客1人が取引期間中にもたらす価値

LTVはLife Time Valueの略で、日本語では顧客生涯価値と呼ばれます。ECでは、顧客が初回購入してから取引が終わるまでに、何回購入し、合計でどれだけの売上や利益を生むかを見る指標です。LTVには複数の計算方法があり、平均購入額、購入回数、継続期間、利益率などを使って算出します。LTVとCACを比較することで、顧客獲得に使った費用を長期的に回収できるかを判断できます。

LTV(顧客生涯価値):売上で計算すると、事業は破綻する。前提条件:平均購入額4,000円×平均購入回数4回。売上LTV16,000円はすべてが自由に使える利益だと錯覚してしまう危険がある。限界利益LTV6,400円(1,600円×4回)が原価や送料を引いたあとに残る本当の価値。広告費CACの回収計画を立てる際は必ず限界利益LTVを基準にする

9.売上LTVと利益LTVを分ける

LTVは、何を基準に計算したかを明確にする必要があります。今回のコーヒーショップでは、平均購入額が4,000円、平均購入回数が4回とします。

売上ベースのLTV:平均購入額4,000円×平均購入回数4回=売上LTV 16,000円
限界利益ベースのLTV:限界利益1,600円×平均購入回数4回=限界利益LTV 6,400円
LTVの種類金額
売上LTV16,000円
限界利益LTV6,400円

売上LTVだけを見ると、その顧客から16,000円が利益として残るように感じてしまいます。しかし、原価や送料などを引いたあとに残る限界利益は6,400円です。広告費の上限を判断するときは、売上だけでなく、利益を基準にしたLTVを見る必要があります。

「1万6,000円買ってくれても、1万6,000円全部が利益ではないよ!」

10.CACとLTVを一緒に見る

今回の数字を並べます。CAC:2,000円/限界利益LTV:6,400円。顧客1人を獲得するのに2,000円使い、その顧客が取引期間中に6,400円の限界利益を生むとします。

Unit Economics:顧客1人当たりの利益の天秤を合わせる。天秤の片側にCAC2,000円(コスト)、もう片側に限界利益LTV6,400円(リターン)。LTV÷CAC=3.2倍。Synthesis Formula:限界利益LTV6,400円-CAC2,000円=顧客1人当たりの残り4,400円。この4,400円が固定費の回収と事業の純利益へと回る真の原資となる
限界利益LTV 6,400円-CAC 2,000円=4,400円

CACを引いたあと、固定費や事業利益へ回せる金額は4,400円です。LTVがCACを上回っているかを見ることで、顧客獲得費用を長期的に回収できる可能性があるかを確認できます。

LTV÷CAC 6,400円÷2,000円=3.2

この例では、限界利益LTVはCACの3.2倍です。ただし、「何倍なら必ず安全」という一律の基準はありません。必要な比率は、業種、事業規模、成長段階、資金力、返品率、顧客の継続期間などによって異なります。

11.初回購入だけでは赤字になる場合

1注文当たりの限界利益は1,600円です。しかし、CACは2,000円です。初回購入だけを見ると次のようになります。

ペイバック期間:なぜリピート継続が絶対条件なのか?累積利益の推移。1回目の購入は限界利益1,600円だがCAC支払いによりまだ▲400円の赤字。2回目の購入でCACを回収し黒字浮上。3回目・4回目で純利益が拡大し最終LTVに到着。初回購入だけを見て広告を止めるのは早計。2回目が買われなければ計画は完全に崩壊するため、商品力と購入後のCRMフォローが経営の生命線となる
初回注文の限界利益1,600円-CAC 2,000円=▲400円

初回購入では400円のマイナスです。この数字だけを見ると、広告を止めたほうがよいように見えます。しかし、同じ顧客が2回目の購入をすると、状況が変わります。

1,600円×2回=3,200円
3,200円-CAC 2,000円=1,200円

2回目の購入まで含めると、CACを回収できます。

CAC回収に必要な購入回数 CAC2,000円 ÷ 1注文当たりの限界利益1,600円 = 1.25回

1.25回という注文はないため、実際には2回目の購入で回収します。このように、顧客獲得費用を回収するまでに必要な期間や回数を見る考え方を、CAC回収期間やペイバック期間と呼びます。

12.リピートされなければ計画は崩れる

「平均4回購入してもらえる」という前提でLTVを計算しても、実際に1回しか購入されなければ意味がありません。

平均購入回数限界利益LTVCAC差引後
1回1,600円▲400円
2回3,200円1,200円
3回4,800円2,800円
4回6,400円4,400円
5回8,000円6,000円

この事業では、少なくとも2回購入してもらわないとCACを回収できません。つまり、広告を出すだけでなく、購入後の仕組みが重要です。

  • 商品が期待どおり届く
  • 同じ商品を再注文しやすい
  • 飲み終わる時期に案内する
  • 関連商品を提案する
  • 問い合わせへ丁寧に対応する
  • メールや会員機能を活用する

13.損益分岐点・CAC・LTVを一つの表で見る

完成図:EC事業の健全性を示すマスターダッシュボード。損益分岐点・達成状況(現在70件/目標100件=70%、黒字まであと30件)、LTV vs CAC(限界利益LTV6,400円、CAC2,000円、1人当たりの手残り利益4,400円)、1注文の利益構造(注文額4,000円→変動費2,400円→限界利益1,600円)、CAC回収期間(回収に必要な購入回数2回目)。このダッシュボードが埋まれば売上を上げるという曖昧な目標が、どこに投資し何を改善すべきかという具体的な戦略へと変わる
指標数字意味
平均注文額4,000円1回の注文で受け取る平均額
1注文の限界利益1,600円固定費回収へ回せる金額
月の固定費160,000円注文が少なくても発生する費用
損益分岐点100件月全体が利益0円になる注文数
現在の注文数70件黒字まであと30件
CAC2,000円新規顧客1人の獲得費用
平均購入回数4回顧客1人の平均注文回数
限界利益LTV6,400円顧客1人が生む限界利益
LTV-CAC4,400円獲得費用を引いた残り
CAC回収2回目初回だけでは回収できない

この表から、次のことが分かります。月全体ではあと30件の注文が必要。新規顧客は2回以上購入しないとCACを回収できません。4回購入してもらえれば、顧客1人から4,400円が残ります。広告だけでなく、リピート施策が重要です。

14.数字が悪いとき、どこを直す?

診断マトリクス:数字が悪いとき、どのレバーを引くべきか?Symptom1損益分岐点が高すぎる(赤字を抜けられない)→固定費の削減・販売価格の改定値上げ・変動費の圧縮送料梱包費交渉・セット販売による平均注文額UP。Symptom2 CACが高すぎる(新規獲得で血を流している)→チャネル別CACの精査高コスト広告の停止・LP購入画面のコンバージョン改善・広告クリエイティブの見直し・自然検索紹介など低コスト経路の育成。Symptom3限界利益LTVが低すぎる(リピートされず利益が出ない)→商品満足度配送品質の改善・適切なタイミングでのリピート案内CRM・関連商品のクロスセル・定期購入サブスクの導入
損益分岐点が高すぎる

見直す場所:

  • 固定費
  • 商品価格
  • 送料
  • 梱包費
  • 販売手数料
  • 平均注文金額
CACが高すぎる

見直す場所:

  • 広告の対象
  • 広告画像や文章
  • 商品ページ/購入画面
  • チャネル別CAC
  • 紹介・自然検索
  • 新規顧客数の計測方法
LTVが低すぎる

見直す場所:

  • 商品満足度
  • リピートしやすさ
  • 購入後の案内
  • 関連商品の提案
  • 定期購入
  • 問い合わせ対応/返品・配送品質

15.4つの改善を比べる

改善A|注文数を増やす

現在70件から100件へ増やします。損益分岐点へ到達しますが、CACが高いまま広告を増やすと赤字が拡大する可能性があります。

改善B|1注文の限界利益を増やす

送料を見直し、限界利益を1,600円から1,800円へ増やします。損益分岐点が100件から89件へ下がります。

改善C|CACを下げる

CACを2,000円から1,500円へ下げます。LTV6,400円-CAC1,500円=4,900円。顧客1人当たりの残りが500円増えます。

改善D|購入回数を増やす

平均購入回数を4回から5回へ増やします。限界利益1,600円×5回=LTV8,000円。8,000円-CAC2,000円=6,000円。残りが1,600円増えます。

売上を増やす前に確認する順番

「赤字だから広告を増やそう」と考える前に、次の順番で確認します。

行動のセオリー:売上(広告)を拡大する前に確認すべき5つの順序。STEP1限界利益の確認(商品1個売って利益は出ているか?売るほど赤字になる構造ではないか?)→STEP2損益分岐点の現実性(月に必要な販売数は現在の体制で捌ききれる現実的な数字か?)→STEP3 LTV>CACの証明(1人を獲得するコストを、その人の生涯価値で確実に回収できるか?)→STEP4回収期間ペイバックの許容(何回目の購入で資金が戻るか?それまで資金繰りはショートしないか?)→STEP5実績ベースの継続率(4回買ってくれるはずという希望的観測ではなく、実際の購入履歴データでリピートされているか?)。顧客数が増えただけで成功と判断してはいけない
  1. 商品1個の限界利益はプラスか 売れるほど赤字になる商品ではないか確認します。
  2. 損益分岐点は現実的か 月に必要な販売数を運営できるか確認します。
  3. CACはLTVの範囲内か 顧客獲得費用を回収できるか確認します。
  4. 何回目の購入でCACを回収するか 資金が戻るまでの期間を確認します。
  5. 実際にリピートされているか 希望や予想ではなく、購入履歴で確認します。

よくある勘違い

勘違い1|商品1個が黒字なら事業も黒字
商品1個の限界利益がプラスでも、固定費を回収できる数量が売れなければ、月全体は赤字です。
勘違い2|売上が固定費を超えれば黒字
売上から変動費も支払う必要があります。固定費と比較するのは、売上ではなく限界利益です。
勘違い3|広告費を注文数で割れば必ずCACになる
CACは、新規顧客の獲得に使った総費用を新規顧客数で割ります。既存顧客の再注文や、無料登録者を混ぜないようにします。
勘違い4|LTVは売上の合計だけ見ればよい
広告費をどこまで使えるか判断するには、原価や送料を引いた利益ベースのLTVも確認する必要があります。
勘違い5|LTVが高ければ資金繰りは問題ない
将来4回購入してもらえるとしても、CACを最初に支払い、回収が半年後になる場合があります。利益が見込めても、入金までの資金が不足する可能性があります。
勘違い6|LTV÷CACは必ず3以上なら安全
必要な比率は、業種、事業規模、資金力、顧客維持期間などによって異なります。

実際のケースで考えてみよう|広告を増やしたのに赤字が拡大した

ある食品ECでは、月の注文数を増やすため、広告費を増やしました。

広告を増やす前
  • 広告費:100,000円
  • 新規顧客:50人
  • CAC:2,000円
  • 限界利益LTV:6,000円
広告を増やした後
  • 広告費:300,000円
  • 新規顧客:75人
  • CAC:4,000円
  • 限界利益LTV:6,000円
改善前:LTV6,000円-CAC2,000円=4,000円
改善後:LTV6,000円-CAC4,000円=2,000円

新規顧客は50人から75人へ増えました。しかし、CACは2,000円から4,000円へ上昇しています。売上や顧客数は増えていても、顧客1人当たりに残る金額は半分になりました。

確認すること:広告を増やすほど反応の弱い層へ配信されていないか/商品ページの購入率が下がっていないか/新規顧客だけを正しく数えているか/高CACの広告を停止できないか/購入後のリピート率を上げられないか/広告以外の集客経路を育てられないか。「顧客数が増えた」だけで成功と判断しないことが重要です。

やってみよう|採算3点セットシミュレーター

1個売れるごとの費用と月の固定費を入力すると「損益分岐点」が分かります。さらに顧客獲得にかかった費用と平均購入回数を入力すると「CAC」「LTV」を自動計算し、CACを回収できるか・何回目の購入で回収できるかを一度に確認できます。入力内容はこのブラウザにのみ保存され、外部へは送信されません。

Action Plan:自社のEC採算エンジンを設計しよう。限界利益(平均注文金額-変動費=1注文の限界利益)、損益分岐点(固定費÷限界利益=赤字脱出まで月間件数)、CAC(獲得総費用÷新規顧客=CAC)、LTV(限界利益×平均購入回数=限界利益LTV)、ユニットエコノミクス(LTV-CAC=顧客1人当たりの残り)、回収期間(CAC÷限界利益=何回目で回収)。分からない数字は0ではなく未計測と書くこと。数字がないことに気づくことがEC改善の第一歩

① 1個売れるごとの費用と固定費

1注文当たりの限界利益
損益分岐点販売数量
目標利益に必要な数量
黒字まであと何件

② CAC(顧客獲得単価)

CAC(新規顧客1人当たりの獲得費用):

③ LTV(顧客生涯価値)

売上LTV
限界利益LTV

④ CACとLTVを比べる

限界利益LTV-CAC
限界利益LTV÷CAC
CACを回収できる購入回数:

これは仕組みを理解するための簡易ツールです。実際の事業判断では、返品率、資金繰り、季節変動なども合わせて検討してください。

アウトプットワーク|自分のECを3つの数字で整理しよう

上のシミュレーターに、自分のEC事業または想定している商品の数字を入力してみてください。分からない数字は0で埋めず、下の欄に「未計測」と書いてください。

このECは、月「件」の注文で赤字を抜けます。
現在は月「件」なので、あと「件」必要です。
新規顧客1人のCACは「円」です。
顧客1人の限界利益LTVは「円」で、CACは「回目」の購入で回収できます。

記入できたら完了にする

理解度チェッククイズ

第1問 損益分岐点とは、どのような状態でしょうか?

A.売上が0円の状態
B.売上と総費用が同じで、利益が0円の状態
C.広告費が0円の状態
正解はBです。損益分岐点は、売上と総費用が同じになり、利益が0円になる販売量や売上規模です。

第2問 固定費160,000円、1商品当たりの限界利益2,000円の場合、損益分岐点販売数量はいくつでしょうか?

A.80個
B.160個
C.320個
正解はAです。固定費160,000円÷限界利益2,000円=80個です。

第3問 現在の販売数が60個、損益分岐点が80個の場合、黒字まであと何個必要でしょうか?

A.20個
B.60個
C.140個
正解はAです。損益分岐点80個-現在60個=あと20個です。

第4問 CACの説明として最も近いものはどれでしょうか?

A.新規顧客1人を獲得するためにかかった平均費用
B.商品1個の原価
C.顧客が支払った送料
正解はAです。CACは、新規顧客1人を獲得するためにかかった平均費用です。

第5問 顧客獲得費用が120,000円、新規顧客が40人の場合、CACはいくらでしょうか?

A.1,000円
B.3,000円
C.4,800円
正解はBです。120,000円÷40人=3,000円です。

第6問 平均注文金額5,000円、平均購入回数3回の場合、売上LTVはいくらでしょうか?

A.5,000円
B.8,000円
C.15,000円
正解はCです。5,000円×3回=15,000円です。

第7問 1注文当たりの限界利益2,000円、平均購入回数3回の場合、限界利益LTVはいくらでしょうか?

A.2,000円
B.6,000円
C.10,000円
正解はBです。限界利益2,000円×3回=6,000円です。

第8問 限界利益LTVが6,000円、CACが2,500円の場合、CACを引いたあとに残る金額はいくらでしょうか?

A.3,500円
B.6,000円
C.8,500円
正解はAです。LTV6,000円-CAC2,500円=3,500円です。

第9問|実務判断問題 初回注文の限界利益は1,500円、CACは2,400円です。顧客は平均3回購入し、各注文の限界利益は同じとします。この顧客獲得は、初回購入と3回購入後でそれぞれどのように見えますか?

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初回購入:限界利益1,500円-CAC2,400円=▲900円。初回購入だけを見ると900円のマイナスです。

3回購入後:限界利益1,500円×3回=LTV4,500円。LTV4,500円-CAC2,400円=2,100円。3回購入してもらえれば、CACを回収したあとに2,100円が残ります。ただし、実際に平均3回購入されているかを、購入履歴で確認する必要があります。

よくある質問

今回のまとめ

DAY13では、商品1個の利益から一歩進み、事業全体と顧客1人の採算を整理しました。今回覚えておきたいポイントは、次の5つです。

  1. 損益分岐点は、利益が0円になる販売数量や売上規模
  2. 損益分岐点販売数量は、固定費を1個当たりの限界利益で割る
  3. CACは、新規顧客1人を獲得するためにかかった費用
  4. LTVは、顧客が取引期間中にもたらす売上や利益の合計
  5. CACと利益ベースLTVを比較し、獲得費用を回収できるか確認する

重要なのは、「売上が増えたか」だけを見ることではありません。あと何件必要か、顧客1人の獲得にいくら使い、その顧客から最終的にいくら残るのかまで確認します。初回購入で赤字でも、継続購入で回収できる場合があります。しかし、実際にリピートされなければ計画は成立しません。予想だけでなく、注文履歴、顧客数、広告費、購入回数を記録し、毎月数字を更新することが大切です。

「“何個売る?”“いくらで集める?”“何回買ってもらう?”の3つをセットで考えよう!」

DAY13の実践課題

現在のEC事業、または販売を想定している商品について、損益分岐点(平均注文金額・変動費・限界利益・固定費・現在の注文数・あと何件)、CAC(広告費・制作費・人件費・新規顧客数・全体CAC・チャネル別CAC)、LTV(平均購入回数・売上LTV・限界利益LTV・CACを引いた残り・回収する購入回数)を1枚にまとめてください。分からない数字は0で埋めず、「未計測」と書いてください。数字がないことを確認できた時点で、次に記録すべき項目が見えてきます。

獲得バッジ

音声で学んだ
採算算出マスター
採算整理完了
FAQマスター
クイズクリア

次回 DAY14:商品マスタの基本

商品名、商品コード、SKU、JANコード、価格、画像、在庫、配送条件など、EC運営の土台となる商品情報を整理します。

DAY14へ進む(公開後にリンクします)

文:横田和也/解決ドットコム編集部

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