ECの商品画像・動画・ロゴの著作権と商標|無断転載を防ぐ確認方法 DAY39

【DAY39】商品画像・動画・ロゴの著作権と商標
他人の画像・説明文・動画・ロゴを利用するときの注意点を整理する
DAY38では、企業が関与した口コミやインフルエンサー投稿について、広告であることを隠していないか、PR表示が分かりやすいかを整理しました。DAY39では、その広告や商品ページで使う素材そのものを利用する権利を確認します。
ECでは、商品写真、商品説明文、イラスト、比較表、動画、BGM、メーカーのロゴ、ブランド名、購入者が投稿した写真、SNSのスクリーンショットといった素材を日常的に使用します。インターネットで見つけた画像を保存し、自社の商品ページへ貼ることは技術的には簡単です。しかし、ネット上に公開されている、無料で閲覧できる、検索結果に表示された、メーカーの商品である、出典を書いた、少し加工したという理由だけで、自由に使えるとは限りません。
著作権は、著作物が創作された時点で自動的に発生し、権利を取得するための登録は必要ありません。プロが作った作品だけでなく、個人が撮影した写真や作成した文章にも、創作性があれば著作権が発生します。また、ロゴや商品名には、著作権だけでなく商標権が関係する場合があります。
「画像を見つけられることと、販売ページで使えることは別だよ。誰が作り、どこまで許可されているか確認しよう!」
DAY38との違い
DAY38は、その投稿が広告であると購入者に分かるかを確認しました。DAY39は、広告に使う画像・文章・動画・ロゴを利用する権利があるかを確認します。DAY38=広告であることの明示、DAY39=広告素材を利用する権利です。PR表示を正しく付けていても、他人の写真や音楽を無断で使用していれば、著作権等の問題は残ります。
この記事で分かること
- 著作権と商標権の違い、ECで著作物になり得る素材
- ネット上の画像を自由に使えない理由、メーカーの商品画像を利用する場合
- 商品説明文をコピーする場合の注意点、フリー素材・有料素材の利用条件
- 引用と転載の違い、SNS投稿・スクリーンショットの利用
- 商品紹介動画とBGMの権利、他社ロゴ・ブランド名の利用
- 制作会社へ依頼した画像の権利、AI生成画像を使用するときの確認
- 先に結論|「入手方法」ではなく「利用権限」を確認する
- 著作権と商標権の違い
- 「拾い画」「もらった素材」に潜む3つの罠
- 商品説明文の「事実」と「創作」
- 自分で商品を撮影する場合
- ロゴ使用と「公式」の境界線
- 商標権の基礎と調べ方
- 動画に潜む複合的な権利|映像・出演者・BGM
- 引用と転載の違い
- 購入者レビューとSNS投稿(UGC)の利用
- 外注制作と生成AIの盲点
- 著作権の保護期間・権利者が分からない場合
- 実際のケースで考えてみよう|卸会社から受け取った画像転用
- よくある失敗
- 素材利用を確認する12の質問
- 利用許諾で確認する項目・素材管理台帳を作る
- 無断利用を指摘された場合の対応
- やってみよう|素材リスク診断&素材管理チェックリスト
- アウトプットワーク|EC素材・知的財産管理表を作ろう
- 理解度チェッククイズ
- よくある質問
- 今回のまとめ
- 獲得バッジ
先に結論|「入手方法」ではなく「利用権限」を確認する
素材を使う前に、①誰が作ったか、②誰が権利を持っているか、③どの利用が許可されているか、④条件を守っているか、という4点を確認します。例えば、有料素材サイトから画像を購入しても、ECの商品ページ、SNS広告、パッケージ、印刷物、動画、ロゴ、販売商品への印刷のすべてに利用できるとは限りません。利用規約により、商用利用可能、改変可能、クレジット表記が必要、再販売禁止、ロゴ利用禁止、利用者数の制限、媒体の制限などの条件が設定されている場合があります。
文化庁も、他人の著作物を利用する場合は、著作物に当たるか、保護期間内か、法律上の例外があるか、権利者の許諾があるかを順番に確認し、著作者人格権、肖像権、利用条件なども確認する必要があると案内しています。
著作権と商標権の違い
著作権は、文章、写真、イラスト、動画、音楽など、創作的な表現を保護します。商品写真、広告動画、商品説明文、キャラクター、パッケージデザインなどが対象になり得ます。著作権は、著作物を創作した時点で自動的に発生します。商標権は、商品やサービスを他社のものと区別するために使用する名前、文字、図形、記号、ロゴなどを保護します。ブランド名、商品名、会社ロゴ、サービスロゴ、シンボルマークが該当し、特許庁へ出願し、審査を経て登録されることで発生します。商標権者は、指定商品・指定役務について登録商標を使用する権利を専有し、一定の類似範囲の使用を排除できます。
会社のロゴは、図形としての創作性(著作権)と、商品・サービスの識別表示(商標権)の両方で保護される場合があります。さらに、人物が写っていれば肖像権、商品の形状によっては意匠権など、別の権利も関係する可能性があります。「商標登録されていない=自由にロゴを使える」とは限りません。反対に、単純な文字列で著作物性が認められにくい場合でも、商標登録されていれば、商標権の問題が生じることがあります。
ECサイトでは、商品写真、モデル写真、イラスト、アイコン、バナー、広告コピー、詳しい商品説明、比較記事、動画、ナレーション、BGM、図解、取扱説明書、パッケージのデザインが著作物として保護される可能性があります。一方、単なる事実、データ、アイデア、ありふれた表現などは、著作権法上の著作物に当たらない場合があります。例えば「重量:500g」「素材:綿100%」という事実そのものと、「職人が一つずつ丁寧に仕上げた、日常の景色になじむ柔らかな風合い」という創作的な説明文では、扱いが異なる可能性があります。
「拾い画」「もらった素材」に潜む3つの罠
検索エンジンやSNSで表示される画像は、閲覧できる状態になっているだけです。Google画像検索に出てきた、SNSで公開されていた、ブログに掲載されていた、保存ボタンが押せたという理由で、商品ページや広告へ転載できるわけではありません。文化庁も、「拾い画は無断利用してよい」という考えは誤りであり、多くの画像には権利者が存在するため、権利者や利用条件を確認する必要があると説明しています。少し文字やロゴを追加しても、元画像の権利が消えるわけではありません。他人の画像の下に「出典:○○社」と記載しても、利用許諾を得たことにはなりません。出典表示は誰の情報かを示すもの、利用許諾は権利者から利用の許可を得ることであり、両者は別です。
販売する商品がメーカー製品であっても、メーカーが撮影した商品画像を無断でコピーできるとは限りません。販売店による利用が認められているか、利用できる商品・媒体、画像を加工できるか、ロゴを追加できるか、価格を画像内へ入れられるか、利用期間、販売終了後の削除を確認します。メーカーが販売店向けに素材を配布している場合でも、自社ECのみ、指定モールのみ、販売中の商品に限る、SNS広告は禁止、加工禁止などの条件が付いている可能性があります。
卸会社から画像を受け取った場合、その卸会社が著作権者とは限りません。メーカーが撮影→卸会社へ提供→販売店へ転送という関係では、卸会社に販売店への再許諾権限があるか確認します。「本画像について、当社ECサイト、ECモール、SNS広告での商用利用および必要な範囲でのサイズ変更が許可されていることをご確認ください。」のように、メールや契約書で回答を残します。
「フリー素材」という言葉は、著作権が存在しない、どのような利用も自由という意味とは限りません。多くの場合は、一定の利用規約に従えば利用料なしで使えるという意味です。商用利用、ECサイト利用、広告利用、加工、クレジット表記、利用点数、利用者数、再配布、商品化、ロゴ利用を確認します。有料素材を購入した場合も、著作権そのものを買い取ったとは限らず、多くの場合は規約で定められた範囲の利用許諾を受けるという契約です。素材そのものを販売する、テンプレートとして配布する、企業ロゴとして登録する、商品の主要デザインとして大量印刷することが禁止されている場合があります。素材サイトの利用規約は後から変更されることがあるため、素材ID、素材名、ダウンロード日、利用規約、ライセンス種類、領収書などを取得時点で保存します。
商品説明文の「事実」と「創作」
競合店やメーカーの商品説明をコピーし、語尾だけ変える行為には注意が必要です。材質、重量、製造国、容量、使用方法といった情報は事実として共通することがある一方、文章の構成、具体的な表現、たとえ話、見出し、独自の説明、図解には創作性が認められる可能性があります。安全な作り方は、メーカーの仕様書から事実を確認→自社で商品を使用・確認→自社の言葉で説明を書く→法令表示・商品仕様と照合、という流れです。他社文章を一度コピーし、単語だけ置き換える方法は避けます。
商品名、型番、容量などを、販売商品を特定するために記載することと、メーカーのキャッチコピーや説明文を丸ごと転載することは分けて考えます。「商品名:○○クリーナー、型番:ABC-100、容量:500ml」と表示することと、メーカーの商品ページの写真・文章・比較表を一式コピーすることは同じではありません。販売に必要な商品情報でも、ロゴ画像、広告文、写真などの利用条件は個別に確認します。
自分で商品を撮影する場合
自社で商品を撮影すれば、メーカー写真の無断転載リスクは減らせます。ただし、撮影した写真に他社のキャラクター、美術作品、背景のポスター、モデルの顔、他社ロゴ、音楽・映像が映った画面が含まれる場合は、別の確認が必要になることがあります。撮影場所のルールや、人物の肖像権、商品のブランド表示なども確認します。自分がシャッターを押した写真でも、写っている人物の肖像を広告へ使用する場合には、本人の同意等が必要になる可能性があります。文化庁も、他人の顔が写った写真の利用では肖像権に注意するよう案内しています。
ロゴ使用と「公式」の境界線
ロゴは、会社名や商品名を図形・文字等で表現したものです。商標は、事業者が自社の商品・サービスを他社のものと区別するために使用するマークで、文字、図形、記号、立体的形状、色彩、音などが登録対象となり得ます。ECでは、取扱ブランド一覧、対応決済一覧、配送会社一覧、正規販売店表示、比較表、商品画像、導入事例といった場面で他社ロゴを使用しますが、それぞれ利用目的と権利者のブランドガイドラインを確認します。
販売している商品の名称を説明するために「○○ブランドのバッグ」「○○社製品に対応」と文字で表示することと、公式ロゴ画像を大きく掲載して「公式サイト」「認定代理店」「共同運営」のような印象を与えることは同じではありません。他社ロゴを使うと、購入者が公式な提携先、メーカー直営、認定販売店、スポンサーと誤認する可能性があります。許可を得ていないのに「公式」「認定」「公認」「正規代理店」などと表示しないようにします。
正規に仕入れた商品を販売していることと、メーカーのロゴデータを広告へ自由に使用できることは別です。商品画像内のロゴ、ブランド一覧への掲載、広告バナー、SNS広告、販売店証明、認定マーク、ブランドガイドラインを確認します。メーカーから提供された販売店用ロゴがある場合は、そのデータを指定された方法で使用し、ロゴの色、余白、縦横比、背景、最小サイズなどを勝手に変えないようにします。色を変更する、縦横比を変更する、文字を追加する、一部を削除する、他社ロゴと合体する、自社キャラクターへ組み込むといった加工は避けます。著作物の内容や題号について、著作者の意に反する改変を受けない同一性保持権など、著作者人格権が関係する場合があります。著作者人格権には公表権、氏名表示権、同一性保持権があり、著作権を譲渡しても著作者本人に残ります。利用許諾がある場合でも、加工可能な範囲を確認します。
商標権の基礎と調べ方
商標権は、登録されたマークだけを見るのではなく、登録商標、指定商品・指定役務、類似する商標、類似する商品・役務の関係で確認します。特許庁は、商標権者が指定商品・指定役務について登録商標を使用する権利を専有し、同一・類似範囲の使用を排除できると説明しています。そのため、同じ言葉が登録されていても、使用する商品・サービスの区分や使用方法によって判断が変わります。
自社ブランド名、サービス名、ロゴを決める前に、既に似た商標が登録・出願されていないか調べます。特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」では、商標名、出願人・権利者、分類、指定商品・役務などから商標情報を検索できます。同一名称、読み方が似た名称、見た目が似たロゴ、指定商品・指定役務、権利者、登録状況、存続期間を確認します。ただし、検索結果の法的評価には専門知識が必要で、重要なブランド名を採用する場合は弁理士等への確認を検討します。
自社が使用したい名前について登録が見つからなかったとしても、検索漏れ、似た読み方、似た図形、出願中の商標、周知なブランド、不正競争防止法など、別の問題が存在する可能性があります。また、自社が先に名前を使っていても、原則として商標登録を受けている他社の権利を当然に排除できるわけではありません。特許庁も、先に使用していても広く知られているなどの事情がなければ、後に登録された他社商標の侵害となる可能性があるため注意が必要と案内しています。
動画に潜む複合的な権利|映像・出演者・BGM
商品紹介動画には、映像、台本、ナレーション、出演者の実演、BGM、効果音、写真、イラスト、ロゴといった複数の権利が含まれます。動画制作会社から完成動画を受け取っても、含まれる音楽や素材を、自社EC、YouTube、Instagram、広告配信、店頭、海外サイトのすべてで使えるとは限りません。動画全体だけでなく、構成素材ごとに権利を確認します。
SNSや動画編集サービスで利用できる音楽でも、個人投稿のみ、非商用利用のみ、特定SNS内のみ、広告利用不可、地域制限、利用期間ありといった利用範囲が限定される場合があります。動画を別の媒体へ転載すると、元のライセンス範囲を超える可能性があります。音楽には、作詞・作曲の著作権だけでなく、実演家やレコード製作者等の著作隣接権が関係する場合があります。「SNS上で選択できた音楽だから、自社広告動画をどこでも使える」と判断しないようにします。動画に写真の著作権をカメラマンから取得しても、写っている人物を広告へ使用する同意が別途必要になる場合があり、ECサイト、SNS広告、動画広告、紙のチラシ、利用期間、利用地域、競合商品の広告、画像加工を確認します。文化庁は、著作者の権利とは別に、人物の肖像をみだりに使用されない利益や、著名人の顧客誘引力に関するパブリシティ権が問題になる場合があると説明しています。未成年者が写る場合は、保護者の同意や利用範囲を特に明確にします。
引用と転載の違い
引用は、自分の文章で説明・批評・検討を行うために、必要な範囲で他人の著作物を取り込む利用です。転載は、他人の文章や画像を、そのまま自分のページへ掲載する行為です。著作権法上の引用として認められるには、公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、報道・批評・研究など引用の目的上正当な範囲であることなど、複数の条件を満たす必要があります。ECの商品ページで、他社写真を主役として掲載し「参考として引用しました」と書くだけでは、適法な引用になるとは限りません。
実務上は、少なくとも引用する必要性がある、自分の文章が主体、引用部分が従属、引用部分が明確、必要な範囲だけ使用、内容を勝手に変更しない、出所を明示することを確認します。競合商品のパッケージ表示を比較・批評する記事で必要な一部分を示す場合と、自社商品の販売画像として競合写真を使う場合では目的が異なります。引用に当たるか判断が難しい場合は、自社判断で公開せず、権利者への許諾や専門家への確認を検討します。
購入者レビューとSNS投稿(UGC)の利用
SNS投稿のスクリーンショットには、投稿文、写真、ユーザー名、プロフィール画像、第三者のコメント、サービスのロゴ・画面が含まれることがあります。元の投稿が公開されていても、自社サイトや広告へスクリーンショットを転載できるとは限りません。「SNSで紹介してくれたので広告へ使いました」という運用は避けます。投稿者本人が写真の権利者とは限らず、写真に別の人物や他社作品が含まれている可能性もあります。SNSの公式埋め込み機能を使う方法と、画像をダウンロードして自社サーバーへ転載する方法は異なりますが、埋め込み機能を使えば著作権・肖像権・広告表示の問題がすべて解決するわけではありません。特に広告として二次利用する場合は、投稿者との利用許諾を明確にします。
ECレビューへ購入者が写真を投稿できる場合、その写真をレビュー欄に表示する範囲と、トップページ、SNS広告、メルマガ、商品パッケージ、店頭POPへ再利用する範囲は別です。利用規約や投稿画面で、掲載媒体、掲載期間、加工の可否、投稿者名の表示、広告利用、削除依頼、第三者の権利を侵害しないことを明示します。「レビューへ投稿したので、企業がどこでも自由に使える」と一方的に扱わないようにします。
外注制作と生成AIの盲点
制作費を支払って、商品写真、バナー、ロゴ、動画、文章を作ってもらっても、発注者が自動的にすべての著作権を取得するとは限りません。文化庁は、原則として作品を制作したアーティスト等に著作権が帰属すると説明しています。また、他者へ制作を依頼した人が当然に著作者になるわけではありません。契約書で、著作権を譲渡するか利用許諾にするか、利用できる媒体、利用期間、加工の可否、二次利用、第三者への提供、元データ、著作者名の表示を明確にします。利用許諾では著作権は制作者側に残り、発注者が決められた範囲で使用します。著作権譲渡では著作権の財産的な権利を契約に従って発注者へ移しますが、著作者人格権は譲渡できないため、必要に応じて著作者人格権を行使しない範囲について契約で整理します。
契約に入れる利用媒体は、「広告に使用できる」とだけ書くと範囲が曖昧になるため、自社ECサイト、ECモール、SNS投稿、SNS広告、検索広告、YouTube、メルマガ、紙のチラシ、店頭POP、パッケージ、海外サイトなど、今後利用する可能性がある媒体も含めて整理します。完成したJPEG画像だけ納品されると、後から文字を変更したい、価格を差し替えたいと思っても編集用データがなければ変更できないため、PSD、AI、編集可能な動画データ、撮影元データ、使用フォント、使用素材、音源ライセンスを契約時に確認します。制作会社が使用したフォント、テンプレート、写真素材、音源について、発注者へ利用権が移らない場合もあるため、第三者素材が含まれるか、誰のアカウントで購入したか、再編集できるか、ライセンス証明を受け取れるかを確認します。
生成AIで作成した画像でも、無条件で安全とは限りません。AIサービスの商用利用条件、入力した素材の権利、既存作品との類似、他社ロゴ・キャラクター、人物の肖像、生成履歴、修正履歴を確認します。文化庁は、生成AIと著作権について、判例・裁判例の蓄積が十分ではない状況を踏まえ、生成・利用段階を含むリスク低減のための考え方とチェックリストを公表しています。AIが出力したという理由だけで、他社キャラクターに似ていてもよい、有名なロゴを再現してよい、既存写真をほぼ再現してよいとは判断できません。
著作権の保護期間・権利者が分からない場合
著作権には保護期間があります。日本では、著作物の保護期間は原則として著作者の死後70年までです。映画、法人名義、無名・変名などは起算点や計算方法が異なる場合があります。ただし、古い写真、昔の絵、古いブランドロゴだから自由に使えるとは限りません。著作者、死亡年、公表年、著作物の種類、国、翻案・復刻版の権利、商標権、写真撮影者の権利を確認します。保護期間が切れた原作品でも、新しく撮影・編集・翻訳された素材に別の権利が発生している場合があります。
権利者が分からないという理由で、自由に使えるわけではありません。文化庁には、相当な努力をしても権利者と連絡できない著作物等について、文化庁長官の裁定を受け、補償金を支払って利用できる制度があります。ただし、一般的なEC商品ページで手軽に使うための制度ではありません。代替素材を用意できる場合は、自社で撮影、許諾済み素材を購入、メーカーから正式素材を取得する方が運用しやすいことが多いです。
実際のケースで考えてみよう|卸会社から受け取った画像転用
あるEC事業者が、卸会社から「販売に使用してください。」というメールとともに商品画像を受け取りました。EC事業者は、その画像を自社EC、ECモール、Instagram、検索広告、紙のチラシへ掲載しました。後日、メーカーから「この画像は契約販売店の商品ページだけに使用を認めたものです。SNS広告や紙のチラシへの利用は許可していません。」と連絡がありました。
画像を撮影したのはメーカーが契約した撮影会社で、撮影会社→利用許諾→メーカー→限定的に提供→卸会社→販売店へ転送→EC事業者という関係でした。卸会社が、SNS広告や紙媒体まで再許諾できるか確認していませんでした。メーカーの素材利用条件は、利用可能が販売中の商品ページ、利用不可がSNS広告・紙媒体・画像への文字追加・第三者への再配布であり、EC事業者の利用は許可範囲を超えていました。Instagram広告、検索広告、紙チラシの次回配布から画像を一時削除し、自社ECとモールについてはメーカーへ確認し、指定条件に沿って利用を継続しました。SNS広告用には自社で商品を撮影し、他社ポスターが背景にないか、人物が写り込んでいないか、メーカーの表示ルールに反しないかを確認しました。再発防止として、素材管理表へ利用可能媒体、広告利用の可否、加工の可否、許諾元、許諾メール、利用終了日を追加し、「販売に使用してください」という曖昧な説明だけで、すべての媒体へ使用しない運用に変更しました。
よくある失敗
素材利用を確認する12の質問
- この素材を作った人は誰ですか?撮影者、デザイナー、メーカーを確認します。
- 現在の著作権者は誰ですか?制作した人と権利者が異なる場合があります。
- 素材を渡した人に許諾権限がありますか?卸会社や代理店の権限を確認します。
- 商用利用できますか?個人利用・非商用限定ではないか確認します。
- どの媒体で利用できますか?EC、SNS、広告、紙媒体を分けます。
- 加工できますか?切抜き、色変更、文字追加を確認します。
- クレジット表記は必要ですか?表記方法と位置を確認します。
- 利用期間はありますか?販売終了後・契約終了後の扱いを確認します。
- 人物や第三者作品が含まれていますか?肖像権や別の著作権を確認します。
- ロゴの使用許可がありますか?ブランドガイドラインを確認します。
- 契約・規約を保存していますか?取得時点の証拠を残します。
- 公開終了後に削除できますか?掲載場所を一覧化します。
利用許諾で確認する項目・素材管理台帳を作る
最低限、素材名、権利者、許諾者、利用者、利用目的、利用媒体、利用地域、利用期間、加工の可否、クレジット、再許諾、第三者提供、利用終了後の削除、利用料を文書で確認します。画像を複数の商品ページで使用する場合は、商品ごとの許可、会社全体での許可、媒体ごとの許可のどれかも確認します。
素材を商品ページへ貼る前に、素材ID、素材種類、権利者、入手元、利用媒体、加工、利用期限、クレジット、許諾証拠、管理担当を素材管理台帳へ登録します。
無断利用を指摘された場合の対応
権利者や代理人から「当社の画像が無断で使用されています。」と連絡を受けた場合、感情的に反論せず、まず事実を確認します。対象素材を特定→公開を一時停止→入手元を確認→許諾・契約・規約を確認→掲載期間・媒体を確認→権利者へ回答→必要に応じて削除・補償・専門家相談→同じ素材の掲載先を全確認、という流れです。文化庁も、著作権侵害への対応では、権利関係や事実を確認し、必要な場合は弁護士等へ相談の上で慎重に対応するよう案内しています。「他の店も使っている」「卸会社からもらった」といった説明だけでは、利用権限の証明にならない場合があります。
やってみよう|素材リスク診断&素材管理チェックリスト
素材の入手経路を選ぶと、確認すべきリスクの目安が分かります。あわせて、利用前に最低限確認できているかもチェックできます。入力内容はこのブラウザにのみ保存され、外部へは送信されません。
① 素材リスク診断
② 素材管理チェックリスト
これは自己チェック用の簡易ツールです。実際の利用可否は契約・規約の内容に基づいて判断してください。
アウトプットワーク|EC素材・知的財産管理表を作ろう
現在使用している、または使用予定の素材を一つ選び、権利関係を整理してください。分からない内容は推測せず、メーカー・卸会社との契約、素材サイトの利用規約、制作会社との契約書、ブランドガイドライン、J-PlatPat、文化庁の著作権資料を確認してください。
① 素材情報
② 利用範囲
③ 証拠と公開判断
記入できたら完了にする
理解度チェッククイズ
第1問 著作権はいつ発生するでしょうか?
第2問 画像検索で見つけた写真について正しいものはどれでしょうか?
第3問 メーカーの商品を仕入れた場合、メーカー写真も自由に使えるでしょうか?
第4問 「フリー素材」の意味として適切なものはどれでしょうか?
第5問 他人の画像に出典を書けば自由に転載できるでしょうか?
第6問 制作会社へ画像制作費を支払った場合、著作権は必ず発注者へ移るでしょうか?
第7問 商品紹介動画で確認するものはどれでしょうか?
第8問 商標権について正しいものはどれでしょうか?
第9問 購入者が投稿した写真を広告へ使う場合はどうしますか?
第10問 AI生成画像について適切な確認はどれでしょうか?
第11問|実務判断問題 卸会社から「この画像を販売に使ってください。」と送られてきました。EC事業者は、その画像を自社EC、SNS広告、紙のチラシへ使おうとしています。このメールだけで十分でしょうか?
回答例を見る
このメールだけでは不十分です。誰が画像の著作権者か、卸会社に再許諾権限があるか、利用できる媒体、SNS広告が可能か、紙媒体が可能か、加工できるか、利用期間を確認する必要があります。少なくとも、自社EC、SNS広告、紙媒体での商用利用を許諾するという範囲を文書で確認します。
第12問|権利整理問題 EC事業者が制作会社へ30万円を支払い、商品紹介動画を制作してもらいました。動画にはモデル、市販のBGM、有料写真素材、メーカーのロゴが含まれています。動画制作費を支払っているため、すべての媒体で永久に自由利用できるでしょうか?
回答例を見る
制作費を支払っただけで、すべての権利が自動的に取得できるとは限りません。動画全体の著作権、制作会社との利用許諾・譲渡契約、モデルの肖像利用範囲、BGMの商用・広告・媒体利用、写真素材のライセンス、メーカーのロゴ利用許可、利用地域・期間、動画の編集可否を確認するものです。
例えば、BGMがYouTubeだけで利用可能なら、テレビ広告や店頭動画へ転用できない可能性があります。契約と各素材のライセンスを確認してから利用します。
よくある質問
自分が撮影した写真の著作権は原則として撮影者に発生します。ただし、人物、他人の作品、ロゴ、撮影場所のルールなど、別の権利・条件を確認する必要があります。
リンクを設置することと、メーカー画像を自社サイトへ転載することは別です。画像を掲載する場合は利用条件を確認します。
単なる事実・データ自体は著作物に当たらない場合がありますが、文章の表現や構成に創作性があれば保護される可能性があります。仕様を確認し、自社の文章で作成する方法が安全です。
画像の大きさだけでは決まりません。引用の必要性、目的、主従関係、明確な区別、出所表示などを総合的に確認します。
利用規約によります。商品化、ロゴ、テンプレート、再配布などが禁止されている場合があります。
ライセンスの利用者・利用人数・法人範囲によります。購入者以外への共有が禁止されている場合があります。
メーカーのブランドガイドラインや取引契約を確認します。ロゴの利用により公式・認定・提携関係を誤認させないようにします。
使用目的、表示方法、商品・サービス、登録商標の範囲などによって判断が変わります。単に販売商品を特定する記載と、自社ブランドのように表示する行為は分けて考えます。
特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」で商標名、権利者、指定商品・役務などを検索できます。
公開主体として問題対応が必要になる可能性があります。契約で第三者権利を侵害しないこと、素材の権利処理、事故時の対応を定め、公開前に確認します。
レビュー欄への掲載と広告への二次利用は分けて許諾を確認します。写真、氏名、人物、第三者作品が含まれていないかも確認します。
著作権は弁護士や著作権に詳しい専門家、商標の出願・調査は弁理士等へ相談します。権利者不明の著作物については文化庁の案内・制度も確認します。
今回のまとめ
ECでは、商品ページや広告を作るために、多くの画像・文章・動画・ロゴを使用します。今回覚えておきたいポイントは、次の5つです。
- インターネット上の画像は、公開されていても自由素材とは限らない
- 商品の仕入れと、メーカー画像・ロゴの利用許可を分ける
- 制作費を支払っても、著作権の帰属・利用範囲は契約で確認する
- 動画は、映像・音楽・出演者・素材を個別に確認する
- ブランド名やロゴは、著作権だけでなく商標権も確認する
基本的な確認の流れは、素材を選ぶ→制作した人を確認→権利者を確認→許諾者の権限を確認→利用媒体・期間を確認→加工・クレジット条件を確認→人物・ロゴ・音楽等を確認→契約・規約を保存→素材管理台帳へ登録→公開→利用期限・販売終了時に見直し、という順です。大切なのは、無料で入手できたかではありません。誰が権利を持ち、どの媒体で、どの期間、どのような加工をして利用することが認められているかを確認することが重要です。
「画像を保存できても、利用する権利まで保存できたわけじゃないよ。許可の範囲を記録してから公開しよう!」
DAY39の実践課題
現在使用している、または使用予定の素材を一つ選び、権利関係を整理してください。素材名、種類、使用する商品、入手元を書き出し、制作者、著作権者、商標権者、許諾者を確認します。自社EC、ECモール、SNS、広告、紙媒体それぞれで利用が可/不可/未確認かを整理し、加工の可否も確認します。契約書、許諾メール、利用規約、ライセンス証明の有無と利用期限を記録し、この素材はどこから、どの範囲で利用許諾を受けているか、加工はどこまで認められているか、販売終了後は誰が素材を削除するか、権利侵害の指摘があった場合は誰へ報告するかを決めてください。分からない内容は推測せず、メーカー・卸会社との契約、素材サイトの利用規約、制作会社との契約書、ブランドガイドライン、J-PlatPat、文化庁の著作権資料を確認してください。


