海外返品・サンプル・ギフトの通関とは?無償品の価格・再輸入・税関申告を解説 DAY56
【DAY56】返品・サンプル品・贈答品の通関
通常販売ではない返送品・無償サンプル・ギフトについて、発送目的・価格・税関申告の考え方を整理する
DAY48からDAY55までは、商品を販売する→海外へ発送する→輸入国へ入れるという通常販売を中心に学んできました。しかし越境ECでは、売った商品だけが国境を越えるわけではありません。購入者からの返品、不良品の無料交換、取引先へのサンプル発送、贈答品、修理のための送付など、「商品は動くのに新しい売上がない」ケースがあります。ここで「お金をもらっていないから税関も関係ない」と考えると危険です。日本税関は、友人・家族からのギフトや無償の商品見本でも実際の支払いがなくても原則として課税対象になり得ると案内しており、通常の取引価格を使えない場合は同種・類似商品の価格などを基に課税価格を決定することがあります。つまり、売上0円≠税関上の価値0円です。
「"お金をもらってないから0円!"じゃないよ。税関では、"何のために送る商品で、どれくらいの価値があるの?"を別に考えるんだ!」
DAY55との違い
DAY55はIncoterms®を使って通常の国際取引の役割分担を整理しました。DAY56では通常販売ではない返品・交換・サンプル・ギフト・修理を扱います。次回DAY57ではEPA・FTA・原産地証明へ進みます。
この記事で分かること
- 返品・交換品・無償サンプル・ギフト・修理品の違い
- 無料=価値0、Gift=免税ではない理由
- 再輸入・再輸入免税とは何か、同一性確認の重要性
- 交換品が「新しい国境通過」になる理由
- 商品代金の返金と税関税金の還付は別という原則
- 非販売貨物マスタで目的ごとに管理する方法
- 先に結論|危険な勘違いと3つの変数
- インボイス作成の黄金律|「商品名」+「発送目的」
- シナリオ①返品|「同一性」の証明が鍵
- シナリオ②交換品|1つのCS対応、2つの物流貨物
- シナリオ③④サンプルとギフト|「価値」の算出
- シナリオ⑤修理品|手遅れになる「事後報告」
- CSと物流のズレ|「商品返金」=「関税返還」ではない
- 永久保存版|非販売貨物マスタ
- トラブルを防ぐ4つのオペレーション
- 実際のケースで考えてみよう|日本製陶器の返品と交換
- よくある失敗
- 返品・サンプル・ギフトを確認する8つの質問
- やってみよう|非販売貨物診断&確認チェックリスト
- アウトプットワーク|非販売貨物通関確認シート
- 理解度チェッククイズ
- よくある質問
- 今回のまとめ
- 獲得バッジ
先に結論|危険な勘違いと3つの変数
DAY56では、①お金の動き(販売・無償・返金済み・交換・贈答)②商品の価値(その商品自体にどの程度の価値があるか)③発送目的(Sale・Return・Replacement・Sample・Gift・Repairなど)の3つを分けます。例えば無料サンプルなら、支払額0円・発送目的Sample・商品価値は別途確認です。不良交換品なら、追加支払0円・発送目的Warranty Replacement・商品価値は別途確認です。日本税関も、ギフトや無償サンプルについて支払いがなくても課税対象となり、価格資料がない場合には同種・類似物品の価格等から課税価格を決めることがあるとしています。
インボイス作成の黄金律|「商品名」+「発送目的」
「Return」「Replacement」「Sample」「Gift」は発送目的であり、商品名ではありません。悪い例はDescription:Returnだけで、何を返すのか分かりません。良い考え方は、Description:Ceramic tea cup/Purpose:Returned Goodsのように、具体的な商品名と発送目的を分けて記載することです。国際郵便の税関告知書でも、内容品について具体的な品名・数量・価格を記載することが求められています。
シナリオ①返品|「同一性」の証明が鍵
越境ECでの返品は、海外へ販売した商品が購入者から販売者等へ戻ってくることです。日本から一度輸出された商品を再び日本へ輸入することを再輸入といい、返品商品はこれに該当することがあります。日本には一定条件を満たす再輸入貨物について関税・消費税を免除する再輸入免税制度がありますが、海外から商品が戻った=自動的に免税ではありません。輸出時と性質・形状が同じであることに加え、輸出許可書等を提出して確認を受ける必要があります。東京税関は、シリアル番号などによって輸出品と再輸入品の同一性を確認できることが重要だと案内しています。シリアルがない商品では、SKU・商品写真・数量・規格・Invoice等から元の輸出品との関係を説明できるようにします。返品受付番号(Return ID)を作り、元注文番号とひも付けることも重要です。
シナリオ②交換品|1つのCS対応、2つの物流貨物
交換品は、購入者が購入した商品について不良・破損・誤配送などを理由に、販売者が別の商品を送るケースです。購入者が新しい代替商品を無料で受け取るとしても、新しい商品が再び国境を越えるため、新たな輸出・輸入貨物として確認が必要です。無料交換=商品価値0ではありません。返品と交換は方向が逆(返品は購入者→販売者、交換は販売者→購入者)なので、一つのInvoiceにまとめず、それぞれ別の発送目的・価値・Trackingで管理します。「一度購入時に関税を払ったから交換品は必ず無税」とは限らないため、輸入国の制度や配送会社への事前確認が必要です。
シナリオ③④サンプルとギフト|「価値」の算出
サンプルは、販売前に商品の品質・色・形・機能・素材などを確認してもらうために送る商品です。支払いを受け取っていなくても、商品そのものには価値があります。日本税関は、無償の商品見本で支払いがない場合でも課税対象になり得るとしており、価格資料がなければ同種・類似商品の取引価格等から課税価格を決定する場合があります。「Not for Resale(再販売用ではない)」は免税を意味しません。市販商品をそのままサンプルにする場合は通常販売価格が価値の説明材料になり、専用試作品では製造原価や見積価格などを準備します。
ギフトも同様で、日本税関はギフトを含む輸入郵便物について原則として関税・内国消費税・地方消費税の課税対象になるとしており、Giftという表示だけで自動免税になるわけではありません。ただし日本では課税価格1万円以下の物品は一定条件で免税対象になります。個人間ギフトと企業からの贈答(販促品)では制度上の扱いが同じとは限らないため、輸入国のギフト免税条件を確認します。販売商品を税金回避目的でGiftとして申告することは適切ではありません。購入特典の無料同梱品(キーホルダー等のノベルティ)も、実際に荷物へ入っている内容品として正確に申告します。
シナリオ⑤修理品|手遅れになる「事後報告」
日本の商品を海外メーカーへ修理のために送り、修理後に日本へ戻すケースは返品商品とは違い、目的はRepairです。日本には一定条件を満たす加工・修繕目的の貨物について、再輸入時の関税・消費税等を減免できる制度がありますが、輸出時から専用の確認手続が必要になる場合があります。日本税関は、海外で修理して再輸入する貨物について減免税を受ける場合、輸出時に修理目的であることを申告し関係書類を提出する手続を案内しています。つまり、修理目的→輸出前確認→輸出→修理→再輸入の順で、戻ってきてから「税金を安くしたい」では遅い場合があります。修理品も、輸出時と再輸入時で同じ個体かの確認が必要で、識別記号・インボイス・Packing List・写真等が使われる場合があります。
CSと物流のズレ|「商品返金」=「関税返還」ではない
購入者へ商品代金を返金した瞬間に、税関へ払った税金まで自動的に返ってくるとは限りません。CSのタイムライン(返品受付→CS承認→返金完了)と、物流・通関のタイムライン(返送ラベル→発送→輸入通関→検品→在庫復帰・廃棄)は別トラックで進みます。購入者側の税金(最初の輸入時に払った関税の還付)と、販売者側の税金(違約品等の再輸出で関税等の払戻しを受ける戻し税)は別の手続きです。日本税関は、違約品等の再輸出で関税等の払戻しを受ける場合、貨物を輸出・廃棄する前に所定の手続を行う必要があり、これを行わなければ払戻しを受けられないと案内しています。返送した後に「関税も返してください」では対応できない場合があります。
永久保存版|非販売貨物マスタ
| 目的 | 購入者支払額 | 税関上の価値 | 要注意ポイント |
|---|---|---|---|
| 返品(RETURN) | 0円 | 別途確認 | 自動免税ではなく同一性の証明が必須 |
| 交換(REPLACEMENT) | 0円 | 本来の価値 | 返品と1つのInvoiceにまとめない |
| サンプル(SAMPLE) | 0円 | 製造原価/類似価格 | No Commercial Value≠価値ゼロ |
| ギフト(GIFT) | 0円 | 本来の価値 | 税金逃れのGift申告は厳禁 |
| 修理(REPAIR) | 修理代のみ | 本来の価値 | 輸出前申告なしでは再輸入時に減免されない |
目的コードだけで税金を決めてはいけません。GIFT→免税、SAMPLE→免税、RETURN→免税というロジックは誤りです。目的は税関判断に必要な情報の一つで、実際の免税・課税条件は別に確認します。
トラブルを防ぐ4つのオペレーション
①Return Authorization(RMA発行):自社で固有の返品受付番号を発行し、元の注文番号と紐付けます。②Importerの特定:日本側で誰が輸入者になるのかを明確にします(販売会社・返品代行会社・倉庫など)。③事前確認:海外の購入者が発送する前に、日本側の通関業者や配送会社へ再輸入免税等の要件を確認します。④Label & Instructions:購入者独自の「Gift」「$1」といった虚偽申告を防ぐため、指定の返送ラベルと、正しい商品名・発送目的を記載した指示書を渡します。ただし販売者側も、税金を避けるため「必ずGiftと書いて」のような虚偽記載を指示してはいけません。
実際のケースで考えてみよう|日本製陶器の返品と交換
商品:日本製陶器カップ、元販売価格:USD100、返品理由:到着時にヒビを確認、とします。返品受付でOrder:ORD-001、Return:RTN-001を作り、元Invoice・元Tracking・原産国を確認します。発送目的はPurpose:Returned Goods、商品名はDescription:Ceramic tea cupとし、Returnだけにはしません。購入者は返品時に商品代金を支払いませんが、Value 0とは自動判断せず、記載方法を配送会社・日本側通関で確認します。もともと日本から輸出した商品が性質・形状を変えずに戻る場合、再輸入免税の対象になる可能性があるため、元輸出資料・商品同一性資料を準備し、発送前に配送会社・通関業者へ確認します。日本到着後は検品し、再販売・修理・廃棄を判定します。購入者がアメリカ輸入時に払った関税等は、販売者の返金に自動的に含まれるとは決めません。
同時に交換品を無料発送する場合は、Replacement:RPL-001として別管理します。追加支払USD0でも商品価値は0とせず、輸入国の通関条件を確認します。Purpose:Warranty Replacementとし、返品(RTN-001)と交換(RPL-001)は一件のCS案件でも、貨物としては2件と整理します。
よくある失敗
返品・サンプル・ギフトを確認する8つの質問
- なぜ商品を送りますか?Sale・Return・Replacement・Sample・Gift・Repairを分けます。
- 具体的に何の商品ですか?発送目的ではなく商品名を書きます。
- 支払いはありますか?有償・無償を確認します。
- 商品自体の価値はいくらですか?支払額0と価値0を混同しません。
- 過去に輸出した商品ですか?返品・修理なら元発送を確認します。
- 元の商品と同じ物だと確認できますか?シリアル・写真・SKU等を確認します。
- 免税・減免制度はありますか?自動適用とは考えません。
- 元注文と今回の貨物をひも付けましたか?返品ID・交換IDを作ります。
やってみよう|非販売貨物診断&確認チェックリスト
5つのテーマから確認したい項目を選ぶと、確認ポイントの目安が分かります。入力内容はこのブラウザにのみ保存されます。
① 非販売貨物診断
② 確認チェックリスト
自己チェック用の簡易ツールです。実際の免税・減免条件は税関・通関業者・配送会社の最新情報で確認してください。
アウトプットワーク|非販売貨物通関確認シート
① 基本・商品
② 発送目的・価格
③ 元発送資料(返品・修理の場合)
④ 配送・到着後
記入できたら完了にする
理解度チェッククイズ
第1問 無償サンプルについて正しいものはどれでしょうか?
第2問 Giftについて正しいものはどれでしょうか?
第3問 日本から一度輸出した商品が日本へ戻ることを何というでしょうか?
第4問 再輸入免税について正しいものはどれでしょうか?
第5問 保証交換品について正しいものはどれでしょうか?
第6問 海外修理後に日本へ再輸入するときについて適切なのはどれでしょうか?
第7問 海外通販で購入した商品を返品した場合について正しいものはどれでしょうか?
第8問 商品説明として適切なのはどれでしょうか?
第9問|実務判断問題 日本のEC事業者が、通常USD80で販売している商品を海外バイヤーへ無料サンプルとして送ります。担当者はDescription:Sample、Value:USD0と入力しました。何を見直すべきでしょうか?
回答例を見る
2点あります。①Description「Sample」だけでは何の商品か分かりません。Cotton bag sampleなど具体的な商品名へ変更します。②無料提供だからといってValue:USD0とは自動判断しません。通常USD80で販売している商品ならその情報も価格根拠の一つになります。Payment:USD0、Purpose:Sample、Value for customs:輸入国のルールに従い確認、と分けて考えます。
よくある質問
必ず免税とは限りません。一定条件を満たせば再輸入免税を利用できる場合がありますが、元の輸出品との同一性や輸出時資料等が必要です。
「返金済みだから0円」とは限りません。商品自体の価値と発送目的を整理し、配送会社・輸入国の通関ルールに従います。
Sampleは発送目的です。「何の商品なのか」が分かる具体的な品名も必要です。
世界共通ではありません。日本へ輸入する場合もギフトは原則課税対象で、一定条件に該当する場合に免税となります。
追加代金0と商品価値0は別です。実際の商品価値と輸入国の評価方法を確認します。
自動的には限りません。商品代金の返金と税関への税金の還付は別の制度です。
通常返品とは分けます。利用する場合は輸出時から所定の確認手続が必要です。
いいえ。税金・免税・評価方法・必要書類は輸入国や商品、配送方法によって異なります。
今回のまとめ
DAY56では、通常販売ではない貨物を整理しました。今回覚えておきたいポイントは次の5つです。
- 無料=税関上の価値0ではない
- Gift・Sampleと書くだけで免税にはならない
- 返品商品は一定条件で再輸入免税を検討できる場合がある
- 修理・交換は通常返品と分ける
- 元の輸出資料と今回の貨物をひも付ける
まず商品を送る理由(SALE・RETURN・REPLACEMENT・SAMPLE・GIFT・REPAIR)を分けます。次に商品名を確認します。Return・Gift・Sampleは商品名ではありません。そのうえで、Purpose:Returned Goods・Sample・Gift・Warranty Replacement・Repairと分け、支払額と商品価値を別に整理します。返品ではさらに、元の商品と同じものかが重要です。日本から輸出した商品が性質・形状を変えずに戻る場合、一定条件で再輸入免税を利用できる可能性があるため、販売した時点からOrder・Invoice・Tracking・Serial・輸出資料を保存しておきます。返品だから、サンプルだから、ギフトだから、という理由だけで税金を決めないでください。
「返品・サンプル・ギフトは、"売上がないから簡単"じゃないよ。"商品の中身・価値・動く理由"を3つに分ければ、通関も整理しやすくなるよ!」

