ECの出荷を止めない方法とは?繁忙期・災害・担当者不在への備えを解説 DAY28

【DAY28】繁忙期・災害・担当者不在でも出荷を止めない方法
注文集中・配送遅延・災害・休暇・退職に備えるECの事業継続
ECでは、予定どおりに注文・出荷できない日があります。セールで注文が一気に増えた、台風や大雪で配送会社が集荷できない、地震や豪雨で倉庫へ入れない、担当者が急に休んだ、出荷担当者が退職した、ECと倉庫のシステム連携が止まった——こうしたときに必要なのは、どんな状況でも通常どおり出荷することではありません。人の安全を無視して出荷を続けたり、対応できない注文を受け続けたりすれば、被害がさらに広がります。
本当に必要なのは、①何を止めるか、②何だけは続けるか、③どの順番で元に戻すか、の3つを事前に決めておくことです。企業の事業継続では、災害時に使える人・設備・情報が限られることを前提に、重要業務を絞り、目標とする復旧時間を設定し、業務を止める原因となる要素へ事前に対処する考え方が示されています。
「全部を守ろうとすると、どれも守れなくなるよ。最初に"絶対に必要な仕事"を決めよう!」
この記事で分かること
- ECにおける事業継続とは何かと、「止めてはいけない業務」の決め方
- 人命・安全と出荷業務の優先順位、繁忙期に受注量を調整する方法
- 1日に処理できる注文数の計算と、緊急対応レベルの作り方
- 主担当・副担当・承認者の役割と、担当者不在でも作業できる手順書
- 退職時に引き継ぐ情報と、ECや倉庫システム停止時の代替手段
- 在庫・梱包資材の不足を防ぐ方法と、配送会社・倉庫・仕入先の代替候補
- 発送遅延を購入者へ案内する方法と、復旧後に注文を処理する順番
- 訓練・見直し・確認すべき指標
この記事では、一般的なEC事業の運用を扱います。実際の災害時は、従業員・関係者の安全確保と行政機関からの避難情報を優先してください。
- 先に結論|「出荷を止めない」より「事業を立て直せる状態を残す」
- 身近な例で考えると「一人しか料理できない店」
- 1.ECにおける事業継続とは
- 2.防災と事業継続の違い
- 3.最初に守るのは人の安全
- 4.ECの重要業務を決める
- 7-9.緊急対応レベルを作る/数字で条件を決める/1日の処理能力を計算する
- 10-11.繁忙期は注文を受ける前に調整する/広告・セールも停止できるようにする
- 12.注文の優先順位を決める
- 13-14-17.主担当・副担当・承認者を分ける/連絡先の複数化/アカウントと権限の集中回避
- 15.担当者の頭の中を手順書にする
- 16.チェックリストで作業漏れを防ぐ
- 18・31.システムが止まったときの代替手段/手動処理と自動連携の照合
- 19.バックアップは「保存」と「復元」を分ける
- 20-21.商品だけでなく梱包資材も備える/安全在庫と非常用在庫を分ける
- 22-23.代替倉庫・配送会社を検討する/災害時は販売地域を制限する
- 24-25.購入者への案内は4つに分ける/状況が分からなくても連絡する
- 26-29.担当者不在/退職時の引継ぎ/全員出社させない/安否確認と業務指示を分ける
- 30.復旧後にすべてを一気に動かさない
- 32-33.訓練を行う/訓練後に直す
- 34.確認したいKPI
- よくある失敗
- 実際のケースで考えてみよう|セール中に大雪と担当者不在が重なった
- 事業継続を設計する12の質問
- やってみよう|緊急対応レベル判定ツール&梱包資材の発注点計算機
- アウトプットワーク|EC出荷の継続計画を作ろう
- 理解度チェッククイズ
- よくある質問
- 今回のまとめ
- 獲得バッジ
先に結論|「出荷を止めない」より「事業を立て直せる状態を残す」
災害や人員不足が起きたとき、すべての注文を通常どおり処理するのは困難です。そこで、業務を「最優先(人命や重大な損失に関わる)」「重要業務(短時間で再開したい)」「復旧後でもよい(一時停止できる)」の3つに分けます。ECで最初に守るものは、出荷件数ではありません。
内閣府の事業継続の考え方でも、重要業務を絞り込み、指揮命令系統、情報共有、情報システムのバックアップ、必要要員の確保などを事前に準備することが重視されています。
身近な例で考えると「一人しか料理できない店」
料理人が一人しかいない飲食店を想像してください。その料理人が休むと、どの食材を使うのか、どの順番で調理するのか、アレルギー注文をどう扱うのか、他の人には分かりません。これは、その人の能力が高いから起きる問題ではなく、必要な情報がその人の頭の中にしかないことが原因です。ECでも、倉庫への出荷依頼方法を一人しか知らない、キャンセル処理を一人しか判断できないという状態を「属人化」と呼びます。属人化を減らす目的は、誰でも簡単に担当者を交換することではなく、担当者が不在でも最低限の業務を安全に続けられるようにすることです。
1.ECにおける事業継続とは
事業継続計画は、一般にBCPと呼ばれます。BCPは、災害や事故が起きても重要業務を続ける、または中断した業務を目標時間内に再開するための計画です。内閣府は、重要業務の選定、目標復旧時間、必要な人・設備・システム等の確保を、事業継続における重要な考え方として示しています。ECでは、自然災害、火災・停電、感染症、注文集中、倉庫停止、配送会社の集荷停止、サプライヤーの供給停止、システム障害、通信障害、人員不足、担当者の退職、個人情報・セキュリティ事故など、災害だけでなく業務を止める原因全体を対象にします。
2.防災と事業継続の違い
防災は、人や建物への被害を防ぐ、または小さくする取組です(避難経路、家具の転倒防止、防災用品、データのバックアップなど)。事業継続は、被害が起きた後も重要な仕事を続ける、または早く再開する取組です(ECを一時停止する担当者、別倉庫から出荷する方法、手作業で注文を確認する方法など)。「防災=被害を減らす」「事業継続=被害後に仕事を戻す」の両方を用意します。
3.最初に守るのは人の安全
注文が多く残っていても、危険な場所で出荷を続けてはいけません。災害時の基本的な優先順位は、1.人命・安全、2.二次災害の防止、3.従業員・関係者の安否、4.顧客・注文情報の保全、5.販売・出荷の制御、6.重要業務の再開、の順です。気象庁は、防災気象情報が警戒レベル3・4相当となった場合、自治体の避難情報が出ていなくても、キキクルや河川水位などを使い、自ら避難を判断するよう案内しています。2026年5月からは、防災気象情報の名称に警戒レベルを付けた新しい体系が運用されています。
「注文より人の安全が先。危険なときは、発送を止めることも正しい仕事だよ!」
4.ECの重要業務を決める
すべての業務を続けようとすると、限られた人員を分散させてしまいます。まず、止まったときの影響で分類します。「すぐに対応が必要」な業務には、従業員・倉庫の安全確認、販売継続・停止の判断、注文データの保存、冷蔵・冷凍商品の確認、個人情報事故への対応があります。「数時間以内に再開したい」業務には、在庫引当、出荷指示、キャンセル処理、発送遅延の連絡があります。「数日停止できる」業務には、新商品登録、広告出稿、売上分析、商品撮影があります。
5.業務が何時間止まると困るか決める
| 業務 | 停止を許容できる時間の例 |
|---|---|
| 人の安全確認・危険商品の販売停止 | 直ちに |
| 注文データ保全 | 1時間以内 |
| 購入者への障害案内 | 2時間以内 |
| 冷蔵・冷凍品の出荷判断 | 当日中 |
| 通常商品の出荷再開 | 1〜2営業日 |
| 新商品登録・売上分析 | 数日後/復旧後 |
これを難しい言葉で「目標復旧時間」と呼びますが、大切なのは用語ではなく、「この業務が何時間止まると、購入者や会社に大きな影響が出るか」を考えることです。
6.想定する異常を分ける
すべての異常を一つの手順で対応することはできません。注文集中(注文は入るが処理能力が足りない)、配送遅延(出荷できても届かない)、倉庫停止(商品はあるがピッキング・梱包・発送ができない)、在庫不足、担当者不在、システム停止、災害(人・倉庫・通信・配送・仕入れが同時に止まる可能性)を分けて、状況ごとに「何が使えるか」を確認します。
7-9.緊急対応レベルを作る/数字で条件を決める/1日の処理能力を計算する
異常が起きるたびに一から判断すると対応が遅れるため、あらかじめLv.0通常〜Lv.4緊急の段階を作ります。Lv.1注意(注文数が通常の1.5倍、大雪や台風の予報など)では副担当者を待機させ資材を追加発注します。Lv.2制限(注文残が1日分を超えた、通常2日発送が4日以上になるなど)では発送予定日を延長し広告・キャンペーンを停止します。Lv.3停止(倉庫へ立ち入れない、配送会社が集荷停止など)では一部または全商品の販売を停止し購入者へ緊急案内します。
「忙しくなったら対応する」だけでは判断が遅れるため、数字を使います。未出荷注文数÷1日の処理可能件数=必要な処理日数です(例:未出荷240件÷1日80件=3日分)。通常「2営業日以内に発送」と表示しているなら、納期変更や販売制限を検討します。担当者人数や梱包資材の残数、配送停止地域についても同様に数字で確認します。
繁忙期対策では、自社の出荷能力も把握します。1件当たりの作業時間(注文確認2分+ピッキング3分+検品2分+梱包5分+送り状2分+最終確認1分=合計15分)から、1人が6時間(360分)作業すると360分÷15分=1日24件、2人なら単純計算で48件です。ただし問い合わせや休憩、例外注文があるため100%では計画せず、48件×80%=約38件を通常処理能力、48件を緊急最大能力として分けます。毎日最大能力で運用すると、少しの問題で遅延します。
10-11.繁忙期は注文を受ける前に調整する/広告・セールも停止できるようにする
出荷できないほど注文を受けてから考えるのでは遅れます。販売開始前に、予想注文数、在庫数、出荷能力、梱包資材などを確認し、1人当たりの購入数制限、1日の販売数制限、予約販売への変更などで注文数を抑えます。販売を続けながら納期を延ばす方法もあり、通常時「2営業日以内に発送」を繁忙期「5〜7営業日以内に発送」に変更します。このとき、商品ページだけでなく、カート、最終確認画面、送料・配送案内、注文確認メール、FAQ、広告、SNSまで変更し、広告に「翌日発送」が残らないようにします。
出荷が遅れているのに広告から新しい注文を集め続けると、未出荷注文が増えます。検索広告、SNS広告、メール配信、クーポン、タイムセール、送料無料キャンペーンなど、緊急時に止める対象を一覧化し、広告担当者が出荷状況を知らないまま販売促進を続けないよう連絡方法を決めます。
12.注文の優先順位を決める
注文が処理能力を超えた場合、すべてを同じ順番で処理するとは限りません。基本は注文確定順ですが、冷蔵・冷凍品、使用期限がある商品、配達日を約束したギフト、医療・安全に関係する商品、すでに大きく遅延している注文は優先を検討します。発送日を長く表示した予約商品や、購入者が納期延長を了承済みの注文は後回しを検討できます。優先基準を事前に表示・共有し、担当者の好みで順番を変えないようにします。
13-14-17.主担当・副担当・承認者を分ける/連絡先の複数化/アカウントと権限の集中回避
担当者不在に備え、主担当(通常業務を行う)、副担当(主担当不在時に代行する)、承認者(停止・返金・例外判断を行う)の最低限3つの役割を業務ごとに決めます。副担当者には、名前だけでなく、ログイン権限、操作端末、手順書、練習機会、緊急連絡先、判断できる範囲を用意します。
災害時は、電話やインターネットが利用できない場合があります。中小企業庁のBCP資料でも、緊急連絡先を複数用意し、電話以外の災害用伝言サービス等も含め、複数の安否確認手段を確保することが推奨されています。連絡先一覧をクラウドだけに保存すると通信障害時に見られない可能性があるため、オフラインでも確認できる方法も用意します。
担当者が退職した後、EC管理者へログインできない、二段階認証が退職者の端末へ届く、APIキーの保管場所が分からないといった問題が起こることがあります。担当者個人の私用メールで登録しない、管理者を複数設定する、共有パスワードの使い回しを避ける、退職時に権限を停止する、権限一覧を定期確認するといった基本ルールを徹底します。
15.担当者の頭の中を手順書にする
手順書には、ボタンの押し方だけでなく判断基準を記載します。「住所不備→出荷を保留」「在庫不足→販売を止めて責任者へ連絡」「高額注文→本人確認担当へ回す」のように、操作と判断を分けて記録します。良い手順書には、業務の目的、開始条件、必要な権限、操作手順、完了条件、エラー時の対応、判断が必要な例外、相談先、更新日、作成者・承認者が必要です。
16.チェックリストで作業漏れを防ぐ
緊急時は、普段できている確認を忘れやすくなります。出荷開始時には、注文データを取得できる、決済状態を確認できる、在庫データが最新、倉庫・作業場所が安全、配送会社が集荷可能、梱包資材があるかを確認します。出荷終了時には、出荷件数、未出荷件数、保留件数、エラー件数、追跡番号、発送通知、責任者への報告を確認します。内閣府は、BCPを作成するだけでなく、マニュアル・チェックリストを整備し、教育訓練と見直しを繰り返すことを重要な運用として示しています。
18・31.システムが止まったときの代替手段/手動処理と自動連携の照合
ECや倉庫のシステムは、停止する可能性があります。API連携が止まった場合は、通常のEC→API→倉庫からEC→CSV→倉庫へ切り替えます。CSVも使えない場合は、優先注文だけを緊急用一覧へ記録し、倉庫へ安全な方法で連絡します。EC管理画面へ入れない場合は、注文受付を止められるか確認し、決済会社の注文記録を確認し、購入者へ障害案内を行います。
システム停止中に手動で処理した注文は、復旧後に自動連携で同じ注文が倉庫へもう一度送られると二重発送になります。注文番号を記録→自動連携再開前に除外→システム上も発送済みに更新、という手順で、注文番号、出荷番号、倉庫処理番号、追跡番号、決済IDを確認します。
19.バックアップは「保存」と「復元」を分ける
データを保存していても、取り出し方が分からなければ使えません。何を保存するか、どこに保存するか、どの頻度で保存するか、誰が取り出せるか、何時間前まで戻せるか、復元方法を試したかを確認します。内閣府の事業継続資料でも、情報システムのバックアップと、代替オフィス・要員等の確保が代表的な事前対策として挙げられています。
20-21.商品だけでなく梱包資材も備える/安全在庫と非常用在庫を分ける
出荷に必要なのは商品だけではありません。段ボール、緩衝材、保冷剤、配送ラベルなどの発注点を、1日使用数×(資材到着日数+予備日数)で決めます(例:40枚×(3日+2日)=発注点200枚)。同じ資材を購入できる候補(代替仕入先)も用意し、一社の停止が他社へ連鎖するリスクに備えます。
在庫連携の時間差や誤差を吸収する「販売用安全在庫」、破損・誤出荷・初期不良の交換に使う「交換用在庫」、主な倉庫が停止したときに最低限出荷するための「非常用在庫」を分けます。すべてを販売可能在庫へ含めないようにします。
22-23.代替倉庫・配送会社を検討する/災害時は販売地域を制限する
主な倉庫や配送会社が停止した場合に備え、自社倉庫、サプライヤー、別地域の倉庫、予備の物流会社などの代替候補を検討します。代替候補の名前だけを登録してもすぐ利用できるとは限らないため、アカウント登録、契約、運賃、集荷、温度帯、緊急窓口まで確認し、少なくともテスト発送できる状態まで確認します。一部地域で配送が止まっている場合、全国販売をすべて止める必要がないこともあり、対象都道府県への注文停止、冷蔵・冷凍便だけ停止など、制限方法を分けます。住所を入力した後で突然キャンセルするより、購入前に案内するほうが分かりやすくなります。
24-25.購入者への案内は4つに分ける/状況が分からなくても連絡する
購入者への案内は、①現在の状況、②対象、③今後の予定、④購入者の選択肢の4つに分けます。「災害のため遅れます。ご了承ください」だけでは、対象・期間・次回連絡が分かりません。復旧日が決まっていなくても、何も連絡しないより確認状況を伝えます。重要なのは、無理に復旧日を約束することではなく、次にいつ連絡するかを約束することです。
26-29.担当者不在/退職時の引継ぎ/全員出社させない/安否確認と業務指示を分ける
担当者が急に休んだ場合は、今日の出荷締切、未出荷注文、冷蔵・冷凍商品、担当者しか知らない作業を最初に確認し、副担当へ本日処理する注文、保留注文、資材、連絡先を引き継ぎます。主担当と同じ件数を副担当に求めず、処理能力を落とすことも検討します。退職時の引継ぎは、業務の説明だけでは足りません。日次・週次・月次作業、例外処理、システムのアカウント・権限、未処理案件(未出荷、在庫差異、返品、配送事故)を引き継ぎ、退職者が説明→後任者が実際に操作→退職者が確認→手順書を修正、という順番で退職日より前に実演します。
倉庫や事務所が危険な状況で、出荷のために出社を求めることは避けます。建物の安全、道路・交通、避難情報、停電・浸水、従業員の家族、倉庫・配送会社の営業状況を判断します。災害直後の連絡では、最初に本人の安全(安全/負傷/連絡不能)、家族・自宅の状況、出勤可否を確認し、安否確認が取れた後で業務対応を確認します。「安全ならすぐ出荷してください」のように、安否確認と出勤指示を一つにしないようにします。緊急時に生命・身体・財産を守るため必要で本人の同意を得ることが困難な場合には、一定の条件で個人情報を関係者へ共有できる場合がありますが、必要な範囲に限定することが重要です。
30.復旧後にすべてを一気に動かさない
システムや倉庫が復旧しても、すぐ通常運用へ戻すと、手動処理と自動処理が重複する、在庫数が一致しない、キャンセル済み注文を発送してしまうといった問題が起こる場合があります。復旧の順番は、人・設備の安全確認→システムと在庫の確認→手動処理した注文を特定→未出荷注文を一覧化→キャンセル・住所変更を反映→優先注文から試験出荷→追跡番号を確認→一部商品から販売再開→通常運用へ戻す、です。初日は1日50件だけ出荷し、翌日在庫・誤出荷を確認して問題なければ1日100件へ拡大するというように、復旧直後に通常の最大件数へ戻さないようにします。
32-33.訓練を行う/訓練後に直す
BCPや緊急手順は、作成しただけで使えるか分かりません。内閣府も、事業継続の対応力を高めるには訓練を繰り返し、点検・見直しを行うことが重要としています。実際に業務を止めず想定を読みながら判断する「机上訓練」、副担当が注文を確認しCSVで出力するなどの「操作訓練」、緊急連絡網や倉庫への連絡を確認する「連絡訓練」があります。訓練では失敗を見つけることが目的で、電話番号が古い、副担当に権限がない、代替配送の契約がないといった問題が見つかったら、手順書・権限・契約を修正します。
34.確認したいKPI
未出荷残数(現在処理できていない注文数)、未出荷日数(最も古い未出荷注文からの経過日数)、出荷能力利用率(実際の出荷件数÷通常処理能力×100)、出荷期限遵守率、代替処理時間(通常手段の停止から手動・代替手段の開始まで)、復旧時間(業務停止から重要業務の再開まで)、属人化業務数(一人しか実施できない業務の数)、手順書実施率(副担当者が手順書だけで完了できた業務÷訓練した業務×100)を確認します。100%に近い出荷能力利用率が長く続くと、異常へ対応する余裕がありません。
よくある失敗
実際のケースで考えてみよう|セール中に大雪と担当者不在が重なった
あるECでは、冬のセールを実施しました。通常の出荷能力は1日100件、通常注文数は1日70件でしたが、セール初日に250件の注文が入り、未出荷注文は180件になりました。翌日、大雪の予報が出て、さらに出荷担当者3人のうち1人が休みました。通常処理能力100件は担当者減少後に約65件へ低下し、新規注文が1日200件続くと、未出荷注文は1日135件ずつ増加する計算になります。
注文残が処理能力を大きく超え、大雪と担当者不在が重なったため緊急対応レベルをLv.2へ変更。広告・クーポン配布を停止し、1人当たり購入数を制限、発送表示を2日から5〜7日へ変更。冷蔵・冷凍品や配達日指定ギフトを優先注文に分類。
普段は商品登録を担当している人が、注文番号確認・送り状印刷・資材準備・追跡番号登録を担当(商品検品は経験者が実施)。大雪と注文集中の影響で発送を5〜7営業日以内へ変更したこと、次回の状況更新日時を購入者へ案内。
配送会社・倉庫の集荷可否を確認し、冷蔵・冷凍品の出荷を一時保留。復旧後は手動処理注文を確認し、古い注文から出荷、50件だけ試験処理してから在庫と追跡番号を照合し、段階的に販売を再開。
出荷を無理に続けるのではなく、販売量を下げる+処理能力を一時的に上げる+購入者へ案内することで、未出荷注文の増加を止めました。
事業継続を設計する12の質問
- 人の安全確認を誰が行いますか?勤務中・勤務外の連絡方法を決めます。
- 最優先で続ける業務は何ですか?3〜5個程度へ絞ります。
- 各業務は何時間止められますか?復旧の目標時間を決めます。
- 1日に何件出荷できますか?通常時と人員減少時を計算します。
- 何件たまったら販売を制限しますか?注文残・必要処理日数で決めます。
- 誰が販売を止められますか?主担当不在時の代行者も決めます。
- 担当者不在時に誰が代行しますか?権限と手順書まで確認します。
- システム停止時の代替方法はありますか?API、CSV、手作業を分けます。
- 商品・資材は何日分ありますか?安全在庫と発注点を決めます。
- 倉庫・配送会社の代替候補はありますか?契約・テストまで確認します。
- 購入者へ誰が何時までに連絡しますか?次回連絡時刻を案内します。
- 最後に訓練したのはいつですか?担当変更・システム変更時にも実施します。
やってみよう|緊急対応レベル判定ツール&梱包資材の発注点計算機
未出荷注文数と処理能力を入力すると、必要な処理日数から緊急対応レベルの目安が分かります。さらに、資材の使用量から発注点を自動計算できます。入力内容はこのブラウザにのみ保存され、外部へは送信されません。
① 緊急対応レベル判定ツール
② 梱包資材の発注点計算機
これは仕組みを理解するための簡易ツールです。実際の緊急対応レベルの基準や発注点は、自社の人員体制・契約している資材業者の納期に合わせて調整してください。
アウトプットワーク|EC出荷の継続計画を作ろう
自社のEC運用を想定して記入してください。分からない項目は推測で埋めず、「未確認」と記録してください。
① 重要業務・処理能力
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 最優先で続ける重要業務(3〜5個) | |
| 1件当たりの出荷時間・1人の処理件数・担当者数 | |
| 1日の通常処理能力(人数×1人の処理件数) |
② 販売制限の条件・担当者
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発送予定日を延長する未出荷件数・処理日数の基準 | |
| 一部商品を販売停止する基準・倉庫停止時間の基準 | |
| 安否確認・販売停止・出荷指示・購入者連絡・返金の主担当/副担当/承認者 |
③ 代替手段・購入者案内
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| API停止時・CSV利用不可時の代替方法、手動処理の記録先 | |
| 倉庫・配送会社・仕入先・梱包資材の代替候補 | |
| 購入者向け案内文(状況・対象・次回連絡予定・選択肢) |
記入できたら完了にする
理解度チェッククイズ
第1問 災害時に最初に優先するものはどれでしょうか?
第2問 事業継続で重要な考え方はどれでしょうか?
第3問 未出荷注文が240件、1日80件処理できる場合、何日分の注文が残っているでしょうか?
第4問 注文が処理能力を超えそうな場合、どのような対応がありますか?
第5問 副担当者を決めるだけで、引継ぎは完了でしょうか?
第6問 ECと倉庫のAPIが停止しました。代替方法として考えられるものはどれでしょうか?
第7問 バックアップがあれば、必ず復旧できるでしょうか?
第8問 商品在庫が十分あれば、出荷を続けられるでしょうか?
第9問 復旧後にすぐ自動連携を再開すると、何が起こる可能性がありますか?
第10問 BCPや緊急手順は、作成しただけで十分でしょうか?
第11問|実務判断問題 通常は1日100件出荷できます。担当者が半数になり、処理能力が1日50件へ下がりました。新規注文は1日120件です。このまま販売を続けると、未出荷注文は1日何件ずつ増えますか。また、どのような対応をしますか?
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新規注文120件-処理能力50件=1日70件増加。このままでは未出荷注文が毎日70件ずつ増えます。対応例:発送予定日を延長する/広告・クーポン・セールを停止する/1日の販売数量を制限する/優先度の低い商品の販売を停止する/副担当者を出荷工程へ配置する/作業を分解し未経験者でもできる工程を移す/倉庫の臨時増員を確認する/購入者へ遅延を案内する/キャンセル希望を受け付ける/未出荷注文が通常水準へ戻ってから販売を再開する。処理能力を増やすだけでなく、新規注文数を減らすことも必要です。
第12問|実務判断問題 システム障害中に、10件の注文を手作業で倉庫へ送りました。翌日システムが復旧しました。自動連携を再開する前に、何を確認しますか?
回答例を見る
手動処理した10件の注文番号を確認する/倉庫で出荷指示を受け付けたか確認する/すでに発送済みか確認する/追跡番号を確認する/EC側の注文状態を更新する/自動連携の対象から10件を除外する/キャンセル・住所変更がないか確認する/倉庫在庫とEC在庫を照合する/少数件で自動連携を試す/重複注文がないことを確認して通常運用へ戻す。手動記録がない場合は、二重発送を防ぐため自動連携をすぐ再開しません。
よくある質問
必要です。ただし、大企業のような長い計画書から始める必要はありません。重要業務、担当者、連絡先、販売停止基準、代替手段を1枚にまとめるところから始められます。内閣府も、企業規模や事業内容に合った取組でよく、多額の費用をかけずに行える対策があると説明しています。
一律の件数はありません。未出荷件数を1日の処理能力で割り、商品ページに表示した発送期限を守れるかで判断します。
本人のアカウントを他人が共有して使うのではなく、代行者用の正規アカウントと必要な権限を用意します。
不十分です。住所不備、在庫不足、キャンセル、冷凍品など、例外時の判断基準と相談先も必要です。
状況によります。一部地域、一部倉庫、冷蔵便、大型商品だけが停止している場合は、対象を限定できることもあります。
安全確認や復旧日が決まっていない段階で、無理な日付を約束しません。現在の状況と、次に連絡する日時を案内します。
販売停止、注文保全、購入者への案内、代替倉庫・自社発送の確認、キャンセル受付などがあります。
契約、送り状、集荷、運賃、商品取扱、温度帯まで確認します。可能であればテスト発送を行います。
注文数やデータ変更頻度によります。1日数百件の注文がある業務と、月1回更新する商品資料では必要頻度が異なります。
現在の作業を観察し、画面録画、操作履歴、関係者への確認から業務を再構成します。復旧後は主担当・副担当による相互確認へ変更します。
中小企業が策定する防災・減災の事前対策を、経済産業大臣が認定する制度です。認定制度や支援措置の条件は変更される場合があるため、中小企業庁の最新案内を確認します。
今回のまとめ
繁忙期・災害・担当者不在でも出荷を続けるためには、無理に通常運用を守るのではなく、業務を制御する必要があります。今回覚えておきたいポイントは、次の5つです。
- 人の安全を最優先し、重要業務だけを続ける
- 1日の処理能力を計算し、注文が超える前に販売を制限する
- 主担当・副担当・承認者を決め、権限と手順書を用意する
- システム・倉庫・配送が止まった場合の代替手段を準備する
- 復旧後は手動処理と自動連携を照合し、段階的に再開する
事業継続を考える順番は、人の安全を確認する→続ける重要業務を絞る→販売・注文数を制御する→代替要員・代替手段へ切り替える→購入者へ状況を伝える→重要な注文から再開する→記録を基に計画を見直す、です。緊急時に強いECは、何が起きても止まらないECではありません。止めるべきときに安全に止め、必要な業務を残し、正しい順番で再開できるECです。
「止まらない仕組みより、"止まっても戻せる仕組み"を作ることが大切だよ!」
DAY28の実践課題
自社ECで、主担当者と倉庫が同時に利用できなくなったと仮定し、対応計画を作ってください。想定する状況(発生する問題・発生日・利用できないもの/できるもの)、最優先の行動(安全確認の対象・販売継続停止の判断者・注文情報の保存先・購入者への初回案内までの時間)、重要業務(3つとそれぞれの目標再開時間)、代替運用(主担当不在時の代行者・倉庫停止時の発送元・API停止時の代替手段・配送会社集荷停止時の切替先・梱包資材不足時の調達先)、販売停止基準(未出荷件数・処理日数・倉庫停止時間の基準、承認を待たず販売停止できる担当者)、復旧条件を書き出します。分からない項目は推測で埋めず、倉庫、配送会社、サプライヤー、システム会社、社内責任者へ確認してください。


