ECの売主は誰?モール・メーカー・販売者の責任の違いを解説 DAY34

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【DAY34】ECにおける「売主」は誰?

販売責任・返品責任・商品責任・表示責任の基本を整理する

解決.com DAY34|ECにおける「売主」は誰?作業者=責任者ではない。販売責任・返品責任・商品責任の基本を完全マスターする
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DAY33では、ECで発行される書類として、請求書、領収書、適格請求書、納品書、売上精算書の違いを整理しました。誰が発行したか、誰に対して発行したか、何の取引に関する書類かという視点が重要でした。

DAY34では、その一歩前にある「購入者に商品を販売しているのは誰か」を整理します。ECの商品ページには、商品を製造したメーカー、商品を出品した販売会社、ECモールの運営会社、代金を処理した決済会社、商品を発送した物流会社、問い合わせを受ける運営代行会社など、複数の会社名が表示されることがあります。しかし、これらの会社がすべて「売主」になるわけではありません。

オンラインモールなどの取引デジタルプラットフォームでは、プラットフォーム、販売業者等、消費者の三者が登場し、消費者と販売業者等の間で通信販売契約を締結する形が想定されています。ただし、実際の契約関係は、商品ページや利用規約、注文確認画面などの表示によって確認する必要があります。

EC最大の罠:作業をしている人=売主ではない。サイトを運営する会社、商品を送る会社、代金を処理する会社。役割が細分化されたECでは誰が責任を負うのかが見えにくい。誰が作業したかではなく、誰が購入者と約束(契約)したかが重要

「サイトを運営している会社、商品を送った会社、商品を売った会社は、同じとは限らないよ!」

DAY33との違い

DAY33は、誰が誰へ、どの書類を発行するかを整理しました。DAY34は、購入者と売買契約を結ぶのは誰か、その会社が何を担当するのかを整理します。DAY33は書類の発行関係、DAY34は販売契約と責任の関係です。

この記事で分かること

  • ECにおける売主の基本、売主とECサイト運営者・メーカー・発送担当者の違い
  • 自社EC/ECモール/メーカー直送/委託販売/ドロップシッピング/CtoCでの売主の違い
  • 販売責任・返品責任・商品責任・表示責任という4つの責任の基本
  • 販売業者と製造業者の責任の違い、輸入者・自社ブランド商品の注意点
  • 売主を確認する7つの場所、売主が分からないECの問題
  • EC事業者が役割分担表を作る方法、購入者をたらい回しにしない体制

先に結論|売主は「購入者との売買契約の相手」

ECにおける売主とは、基本的には、購入者へ商品を販売し、購入者との売買契約の当事者となる者です。売主を確認するときは、商品ページの販売者表示、注文確認画面、特定商取引法に基づく表記、利用規約、領収書・請求書の発行者、返品・返金条件を見ます。ただし、一つの表示だけで決めつけず、複数の情報を照合します。

通信販売では、販売業者の氏名・名称、住所、電話番号などを表示することが求められています。法人がインターネット上で販売する場合には、代表者または通信販売業務の責任者の氏名も表示事項になります。

結論:真の売主とは、購入者と売買契約を結ぶ当事者。売主の定義:1.購入者へ商品を販売する者 2.購入者との売買契約の当事者となる者。倉庫や決済会社に作業を委託していても、購入者に対する販売契約上の立場が自動的に委託先へ移るわけではない

「サイト運営者=売主」とは限らない

ECサイトには、主に二つの形があります。自社が自ら商品を販売する「自社販売型」では、サイト運営者=販売者=売主になりやすい形です。一方、プラットフォームが売買の場や決済機能を提供し、別の販売事業者が商品を出品する「モール・マーケットプレイス型」では、プラットフォーム運営者≠商品ごとの売主となる場合があります。

取引デジタルプラットフォーム消費者保護法は、オンラインモール等について、プラットフォーム、販売業者等、消費者の三者が登場する取引を対象としています。これは、プラットフォーム運営者と商品を実際に販売する事業者を区別する考え方です。

販売者・出店者・出品者という言葉

ECでは、次の言葉が使われます。

言葉一般的な意味
販売者購入者へ商品を販売する者
出店者ECモール内に店舗を開設している者
出品者商品をプラットフォームへ掲載した者
商品提供者商品を供給する者
メーカー商品を製造する者
運営者ECサイトやプラットフォームを管理する者

「出店者」や「出品者」が売主になることはありますが、必ずそうなるとは限りません。名称ではなく、購入者から注文を受ける者、販売条件を決める者、代金を請求する者、返品・返金条件を提示する者を確認します。

ビジネスモデル別に見る売主の構造

ビジネスモデル別「売主」の構造マップ。①自社EC:購入者と自社が売買契約の相手 ②ECモール:購入者と出店者/販売者が売買契約の相手(モールは売主ではない)③メーカー直送:購入者と販売会社が売買契約の相手(メーカーは発送のみ)④委託/ドロップシッピング:購入者と販売者が売買契約の相手(供給者は商品を保有・発送するのみ)

自社ECの売主

購入者  ↓ 注文 自社EC  ↓ 自社が商品を販売

自社が商品を仕入れ、自社ECで販売する場合、一般的には自社が売主です。販売価格の決定、商品説明の掲載、注文受付、代金請求、商品の引渡し、返品・返金対応、購入者への書類発行を自社が行います。倉庫や決済会社へ一部の作業を委託していても、購入者との販売契約上の立場が自動的に委託先へ移るわけではありません。

ECモールの売主

ECモール  ├ 販売者A  ├ 販売者B  └ 販売者C

ECモールでは、商品ページごとに販売者が異なる場合があります。購入者は同じモール画面から商品を購入していても、商品の売主は販売者A・B・Cのいずれかとなる場合があります。販売元、出品者、ショップ情報、特定商取引法に基づく表記、注文確認画面、領収書の発行者を確認します。モール運営者が商品を直接販売している商品と、第三者の販売事業者が出品している商品が混在する場合もあるため、サイト名だけで判断しないことが重要です。

購入者のカード明細に、ECモールや決済サービスの名称が表示される場合がありますが、代金を決済した会社=商品を販売した会社とは限りません。決済事業者は、代金の回収や送金を担当しているだけの場合があります。

メーカー直送・倉庫発送の売主

購入者  ↓ 注文・代金 販売会社  ↓ 出荷依頼 メーカー・卸会社  ↓ 商品発送 購入者

販売会社が注文を受け、メーカーや卸会社から購入者へ商品を直接発送する場合、メーカーが商品を発送していても、購入者との売買契約の相手が販売会社であれば、売主は販売会社と考えられます。発送者=売主とは限りません。購入者への販売者表示、注文・請求を行う会社、領収書を発行する会社、返品受付窓口、不良品の交換担当を明確にします。物流倉庫が保管・ピッキング・梱包・発送を担当する倉庫発送でも同様で、購入者との販売契約を結んでいなければ、商品を送った倉庫会社が売主になるわけではありません。

委託販売・販売代行・アフィリエイトの売主

委託販売では、商品所有者が他の事業者へ販売を任せますが、「委託販売」という言葉だけでは、誰が購入者との契約当事者かは確定できません。販売受託者が自らの名義で購入者へ販売する形もあれば、受託者は注文受付やサイト運営だけを代行し、商品提供者が購入者との契約当事者になる形もあります。契約書や商品ページで、販売名義、価格決定権、返品・返金責任、商品事故対応、購入者への請求者を決めます。

EC運用代行会社が商品登録、注文処理、問い合わせ対応、広告運用を担当していても、販売契約の当事者でなければ、通常は売主ではありません。作業を行う会社=責任の主体とは限りません。同様に、アフィリエイトや紹介サイトが注文を受けず、代金も受け取らず、商品の販売契約にも入らないのであれば、通常は売主とは区別されます。ただし、紹介者自身が販売条件を決めたり、注文を受けたり、商品代金を受領したりする場合は、単なる紹介とは言い切れません。

ドロップシッピング・CtoCの売主

ドロップシッピングでは、販売者が在庫を持たず、供給者から購入者へ商品を直接送ることがあります。購入者との売買契約を販売者が結んでいるなら、在庫を持っていなくても販売者が売主となる可能性があります。在庫を持たない=販売責任がないとは限りません。

フリマ・オークションなどのCtoCでは、個人出品者が個人購入者へ商品を販売する場合、出品者が売買契約の相手になります。ただし、個人名義でも、反復継続して多数の商品を販売するなど、取引の実態によっては特定商取引法上の販売業者と判断される可能性があります。消費者庁は、インターネット通販を行う者について、要件を満たせば個人でも販売業者に該当すると案内しています。

EC事業者が負う「4つの責任」の全体像

ECにおける責任は、すべてが同じ法律・同じ事業者に帰属するとは限りません。「販売責任」「返品責任」「商品責任」「表示責任」は、それぞれ内容も、問われる法律・ルールも、対象となる主体も異なります。

EC事業者が負う『4つの責任』マトリクス。販売責任(契約通りに商品を渡す・民法・対象は売主)、返品責任(購入者都合・店舗都合の対応・特商法/特約・対象は売主)、商品責任(製品事故による損害賠償・製造物責任法/PL法・対象は製造業者/輸入者等)、表示責任(価格や販売条件の正確な明記・特商法・対象は販売業者)
責任内容問われる法律・ルール
販売責任契約通りに商品を渡す民法
返品責任購入者都合・店舗都合の対応特定商取引法・返品特約
商品責任製品事故による損害賠償製造物責任法(PL法)
表示責任価格や販売条件の正確な明記特定商取引法

「商品責任」という言葉は、実務上、契約どおりの商品を渡す責任、商品の品質を確認する責任、安全上の問題へ対応する責任、製品事故による損害賠償責任をまとめて使われることがあります。しかし、すべてが同じ責任ではありません。特に、販売上の責任と製造物責任は分けて考えます。

販売責任と製造物責任(PL法)の違い

売主には、購入者との契約内容に沿って商品を引き渡すことが求められます。例えば、購入者が注文したものと違う商品が届いた、数量が不足していた、中古品だった、色が違ったといった場合は、契約内容と異なる可能性があります。民法では、引き渡された商品が種類、品質または数量について契約内容に適合しない場合、買主は売主に対して、修理、代替品の引渡し、不足分の引渡しなどを求められる場合があると定めています。個別案件でどの対応が認められるかは、契約内容や状況により異なります。

深掘り①:販売責任 vs. 製造物責任(PL法)。『注文と違うものが届いた』→販売責任(民法)・対応者は売主・種類/品質/数量が契約内容に適合しない場合、修理・代替品・不足分の引渡しを求める。『製品が爆発してケガをした』→製造物責任(PL法)・対応者は製造業者等・製品の欠陥により生命/身体/財産へ損害が生じた場合、販売業者は原則対象外(例外あり)

一方、商品を販売した事業者と商品を製造した事業者が別の場合、製品の欠陥によって生命、身体、他の財産へ損害が生じた場合には、製造物責任法が関係する可能性があります。製造物責任法では、業として製品を製造・加工・輸入した者や、一定の表示を行った事業者などが責任主体となります。販売業者は基本的には対象外ですが、輸入者や表示製造業者に該当する場合は対象となる可能性があります。

実務上、契約内容の不一致(販売責任)と、製品事故に関する責任(製造物責任)を混同しないよう分けて確認します。

販売者がPL法上の責任主体になる3つのケース

販売者が次に該当する場合は注意が必要です。海外商品を自ら輸入した、自社を製造者と誤認させる表示をした、自社ブランドで商品を販売した、製造に実質的に関与した、というケースです。

警告:『販売者』がPL法上の責任を負う3つのケース。①海外商品の直接輸入:海外メーカーの製品を自ら輸入して国内販売する場合、輸入業者として責任主体となる ②自社ブランド・OEMでの販売:他社工場での製造でも、自社の名称やブランドを表示し仕様に関与する場合 ③製造者と誤認させる表示:実質的な製造業者と認められるような表記を行っている場合

消費者庁は、輸入業者、製造業者として氏名等を表示した者、製造業者と誤認させる表示をした者、実質的な製造業者と認められる者も、製造物責任法上の責任主体となり得ると説明しています。OEM・プライベートブランド商品も、表示や製造への関与状況によって判断されます。海外メーカーの商品を日本へ輸入し、国内の購入者へ販売する場合、国内の輸入事業者は、製造物責任法上の「製造業者等」に含まれる可能性があります。「海外メーカーが作ったから国内販売者には商品安全の責任がない」とは判断できません。

自社ブランド商品では、少なくとも次を決めます。

  • 製造者・品質基準・検品方法
  • 事故発生時の報告体制
  • 回収・交換方法・費用負担・保険

返品・返金の責任を分けて考える

返品には、大きく二つあります。サイズが合わない、イメージと違う、注文を間違えた、不要になったといった「購入者都合」と、違う商品が届いた、数量が不足している、商品が破損している、説明と異なるといった「商品・販売者側の問題」です。この二つを同じルールで扱わないようにします。通信販売には、訪問販売のような一般的なクーリング・オフ制度はありません。返品特約が表示されている場合は、その内容が取引の判断材料になります。

深掘り②:複雑な『返品・返金』の裏側。受付窓口(モール)=費用負担者ではない。情報の流れ:申請受付(モール)→承認判断(販売者)。モノの流れ:返送先(物流倉庫)→検品。お金の流れ:返金処理(決済会社)←。申請先・返送先・返金者がバラバラでも、最終的な承認と費用負担の責任は売主に帰属する

購入者が返品を申請するとき、受付画面はECモール、判断者は販売者、返送先は物流倉庫、という形もあります。そのため、申請を受け付ける場所、返品を承認する者、返送先、返金する者、返品送料を負担する者を分けます。受付窓口がモールだからといって、モールがすべての返品費用を負担するとは限りません。

返品が承認されても、商品を返送しただけでは返金が完了しない場合があります。返金を実行する会社と、返品商品を検品する会社が別の場合もあり、販売者が返金判断、倉庫が返品商品の受領・検品、プラットフォームが決済上の返金処理、というように分かれます。申請先・返送先・返金者がバラバラでも、最終的な承認と費用負担の責任は売主に帰属することを、あらかじめ決めておく必要があります。

表示責任とモール運営者の役割

ECでは、購入者が実物を手に取らずに商品を選びます。そのため、商品ページや注文画面に表示する情報が重要です。通信販売では、販売価格、送料、支払時期・方法、商品の引渡時期、返品条件、販売業者の氏名・名称、住所、電話番号などを表示する必要があります。表示する主体は販売業者です。具体的な表示項目はDAY35で詳しく扱います。

販売者がメーカーから商品名、サイズ、素材、使用方法、注意事項、商品画像を受け取って掲載する場合がありますが、メーカーから渡された情報をそのまま掲載したというだけで、購入者に対する表示の確認が不要になるわけではありません。販売者側でも、販売商品と説明が一致しているか、旧仕様の情報ではないか、画像と実物が一致しているかを確認します。

モール運営者が売主ではない場合でも、何の役割もないとは限りません。プラットフォームによっては、販売事業者の登録確認、商品掲載ルールの設定、危険商品の削除、問い合わせ窓口、返金制度、紛争対応などの取組を行っています。取引デジタルプラットフォーム消費者保護法では、プラットフォーム提供者に対し、販売業者等の身元確認など、消費者保護につながる取組を行う努力義務や、一定の場合の販売業者情報の開示に関する仕組みが設けられています。ただし、プラットフォームが支援制度を設けていることと、個々の売買契約の売主であることは分けて考えます。

オンラインモールの販売業者と連絡が取れず、損害賠償請求などに必要な場合、一定の要件の下で、消費者がプラットフォーム提供者へ販売業者等の情報開示を請求できる制度があります。ただし、個別トラブルの解決方法や開示要件は案件によって異なります。購入者側では、商品ページ、販売者情報、注文確認、領収書、問い合わせ履歴、配送記録、商品の写真を保存しておきます。

売主を確認する7つの場所

真の売主を見つける『7つのチェックポイント』。①商品ページ:『販売元』『出品者』の法人名を確認(屋号だけはNG)②特商法表記:販売業者名、住所、責任者名、モール名ではなく出店者か ③注文確認画面:契約成立の相手と請求者は誰か ④利用規約:モールと出店者の役割分担定義 ⑤領収書:発行者の名義(決済代行会社の場合もあるので注意)⑥カード明細:決済名義(売主と同一とは限らない)⑦返品ページ:誰が返品を判断し、どこへ返送するか
  1. 商品ページ|販売元、出品者、ショップ名を確認します。
  2. 特定商取引法に基づく表記|販売業者名、住所、電話番号、代表者・責任者を確認します。
  3. 注文確認画面|販売者、契約成立時期、請求者を確認します。
  4. 利用規約|モールと出店者の役割を確認します。
  5. 領収書・請求書|書類上の販売者名を確認します。
  6. カード明細|決済名義を確認します。ただし、売主と同一とは限りません。
  7. 返品・問い合わせページ|返品判断者、返送先、返金者を確認します。

通信販売の販売業者名は、法人なら登記上の名称、個人事業者なら氏名または登記された商号を表示することが基本であり、サイト名や未登記の屋号だけでは足りないと消費者庁は説明しています。モール型ECで商品ごとの販売者が分からず、モール名しか見つからない場合は、出品者情報へのリンク、店舗情報、会社概要、販売条件、注文確認画面を確認します。

権限とお金の流れから売主を判断する

売主を判断する材料として、価格を誰が決めるか、値引きを誰が決めるか、販売停止を誰が決めるか、返品を誰が承認するか、返金を誰が承認するかという権限を確認します。ただし、一部の権限を他社へ委託・共有している場合もあるため、価格を決めた会社=必ず売主と、一つの要素だけで判断しないようにします。

購入者が支払った代金は、決済会社・プラットフォームを経由してから販売者へ渡る場合があります。決済会社やモールが代金を一時的に受け取っても、販売契約上の売主が別に存在する場合があります。購入者に対する売主、代金を一時的に受け取る者、最終的に売上を受け取る者を分けて考えます。

返品先が物流倉庫になっている場合、物流倉庫は返品商品を受け取っているだけで、売主とは限りません。同様に、メーカーの修理センターへ返送する場合も、修理センターが売主とは限りません。返品先だけで売主を判断しないことが重要です。

実際のケースで考えてみよう|モールで購入した商品が破損していた

購入者がECモールで食器を購入しました。関係者は、製造者の工房A、販売者の販売会社B、ECモールの運営会社C、発送担当の物流会社D、決済会社Eです。購入者はモールCの画面から注文し、物流会社Dから商品を受け取りましたが、箱を開けると食器が割れていました。

ケーススタディ『割れた食器』:どこで問題が起きたのか?購入者がモールCで注文し、物流Dから届いた商品。開けたら食器が割れていた!The Mystery:工房Aの製造ミス?物流Dの梱包不良?配送中の衝撃?顧客はモールCの画面から問い合わせてきた。誰が対応すべきか

Step1|売主を確認する

商品ページには「販売元:販売会社B」と記載され、特定商取引法に基づく表記にも販売会社Bの名称・住所・電話番号が記載されていました。この取引では、販売会社Bが購入者との売買契約の相手である可能性が高いと整理できます。

Step2|誰へ連絡するか

購入者はモールCの問い合わせ画面から連絡しましたが、問い合わせの受信者は販売会社Bです。モールCの画面を使用していますが、回答者は販売会社Bです。

Step3|原因を確認する

考えられる原因は、工房Aで製造時に破損、物流会社Dの梱包不備、配送中の衝撃、購入者が開封後に破損、などです。購入者への対応と、事業者間での原因調査を分けます。

解決へのステップ|顧客対応と原因調査を切り離す

解決へのステップ:顧客対応と原因調査を切り離す。表側(顧客対応):売主の特定(特商法表記と販売元から販売会社Bが売主と確定)→顧客窓口の確立(販売会社Bが直ちに代替品発送と謝罪を行う)。裏側(事業者間):原因調査(販売会社Bが物流Dへ梱包状況の確認を行う)→事業者間精算(原因が梱包不備ならBとDの契約に基づき裏側で費用を精算する)。購入者を事業者間の責任の押し付け合いに巻き込まない

販売会社Bは、購入者へ写真の提出、代替品の発送、破損品の返送不要、返金または交換の選択を案内しました。購入者との販売対応は販売会社Bが窓口となります。その後、販売会社Bは物流会社Dへ梱包状況を確認し、原因が梱包不備なら、再発送費、商品代、追加送料の負担について、販売会社Bと物流会社Dの契約に基づいて精算します。購入者への対応を終えた後に、事業者間の責任を整理する順序が重要です。

なお、食器が単に割れていただけでなく、通常使用中に破裂して購入者がけがをした場合は、製造物の欠陥や製造業者等の責任も検討対象になります。製造物責任法は、製品の欠陥により生命・身体または他の財産へ損害が生じた場合に、製造業者等への損害賠償請求を定めています。個別案件への適用は、事実関係に基づく専門的な判断が必要です。

重要:顧客対応と事業者間の調整を分ける

購入者への回答を優先し、事業者間の費用負担・原因調査は裏側で並行して進める。購入者を事業者間の責任の押し付け合いに巻き込まない。

よくある失敗

やってはいけない!EC運用の『よくある誤解と失敗』。『モール名』だけで売主を判断する/『発送者=売主』と誤認する/決済会社を売主と判断する/返品受付窓口を売主と判断する/メーカー情報を確認せずコピペ掲載する/法人名ではなく『屋号』だけを表示する
失敗1|モール名だけを見て売主と判断する
出店事業者が売主の場合があります。
失敗2|発送した会社を売主と判断する
メーカー直送や倉庫発送では、発送者と売主が異なります。
失敗3|決済会社を売主と判断する
代金処理だけを担当している場合があります。
失敗4|商品メーカーがすべての返品へ対応すると思う
購入者との販売契約は販売会社が結んでいる場合があります。
失敗5|販売代行会社へすべての責任が移ると思う
作業委託と契約上の責任は別です。
失敗6|返品受付窓口を売主と判断する
モールやCS代行が受付だけを行う場合があります。
失敗7|屋号だけで販売者を確認する
法人名や事業者名が別に存在する場合があります。
失敗8|販売責任と製造物責任を混同する
契約内容の不一致と、製品事故に関する責任は分けて確認します。
失敗9|販売業者はPL法と無関係だと決めつける
輸入者や表示製造業者に該当する場合があります。
失敗10|メーカー情報をそのまま掲載する
販売中の商品と情報が一致しているか確認が必要です。
失敗11|購入者を事業者間の調整へ巻き込む
販売者・倉庫・メーカー間の費用調整と、購入者対応を分けます。
失敗12|次回DAY35の法律表示まで混ぜる
DAY34では責任主体の基本を整理し、具体的な表示項目・消費者契約はDAY35で扱います。

売主と責任を整理する12の質問

  1. 購入者との売買契約者は誰ですか?商品ページ、利用規約、注文確認を確認します。
  2. 商品ページに表示される販売元は誰ですか?ショップ名だけでなく、法人名・事業者名を確認します。
  3. 特定商取引法に基づく表記は誰の情報ですか?販売業者名、住所、連絡先を確認します。
  4. 代金を請求するのは誰ですか?売主、モール、決済会社の関係を整理します。
  5. 領収書を発行するのは誰ですか?DAY33の書類関係と照合します。
  6. 商品を発送するのは誰ですか?販売者、メーカー、倉庫を分けます。
  7. 返品を承認するのは誰ですか?受付窓口と判断者を分けます。
  8. 返金を決めるのは誰ですか?決済処理者と承認者を確認します。
  9. 不良品の原因を調べるのは誰ですか?販売者、メーカー、倉庫の役割を決めます。
  10. 海外商品を輸入するのは誰ですか?輸入者としての責任を確認します。
  11. 商品ページを更新する責任者は誰ですか?メーカー情報を受け取る担当と掲載責任者を分けます。
  12. 購入者への最終回答者は誰ですか?複数社をたらい回しにしない体制を作ります。

やってみよう|売主タイプ診断&7つのチェックポイント確認リスト

取引のビジネスモデルを選ぶと、売主になりやすい者と確認すべき注意点が表示されます。あわせて、実際の取引で7つのチェックポイントをどれだけ照合できているかも確認できます。入力内容はこのブラウザにのみ保存され、外部へは送信されません。

① 売主タイプ診断

自社EC
ECモール
メーカー直送
委託販売
ドロップシッピング
CtoC(フリマ等)

② 7つのチェックポイント 確認リスト

①商品ページの販売元・出品者を確認した
②特定商取引法に基づく表記を確認した
③注文確認画面の販売者・請求者を確認した
④利用規約でモールと出店者の役割分担を確認した
⑤領収書・請求書の発行者名を確認した
⑥カード明細の決済名義を確認した
⑦返品・問い合わせページの判断者と返送先を確認した
確認済み
0 / 7
判定

これは自己チェック用の簡易ツールです。実際の売主の判断は、複数の情報を照合したうえで行ってください。

アウトプットワーク|ECの売主・責任分担表を作ろう

実践!自社の『責任分担表』を作ろう。ECを始める前に、必ず作業担当・責任者・承認者の3つの役割を分離して定義する。責任分担表:業務(注文受付/梱包・出荷/商品不良調査/決済処理/返品受付)、実行者、最終判断者、顧客への回答者を明確に

利用中または想定するECについて、売主と関係者を整理してください。分からない場合は推測せず、商品ページ、特定商取引法に基づく表記、利用規約、注文確認、請求書・領収書、返品条件、メーカー・倉庫との契約を確認してください。

① ECの関係者

② 売主を確認した根拠

商品ページの販売元
特定商取引法に基づく表記
注文確認画面
利用規約
領収書・請求書
返品条件

③ 責任分担

業務実行者最終判断者購入者への回答者
商品情報
注文受付
決済
返品受付
商品不良調査

④ 確認事項

記入できたら完了にする

購入者への回答窓口を一本化する

販売者へ不良品の連絡があった際に「メーカーへ直接連絡してください」とだけ回答すると、購入者が複数の会社をたらい回しになる可能性があります。メーカー保証を利用する場合でも、メーカー保証の対象か、販売店対応か、必要な書類、連絡先、送料負担、交換までの日数を説明できる状態にします。売主側で受付後にメーカーへ引き継ぐのか、購入者がメーカーへ直接申請するのかを、事前に決めます。

EC運用最重要ルール:顧客への最終回答者は『一つ』にする。たらい回し(NG):顧客が複数社を行き来する。販売者ハブモデル(OK):売主(販売者)が中心となり裏側で関係各所と調整し、顧客には必ず販売者の窓口から一元的に回答する体制を作る。顧客にとって『どこがミスしたか』は関係ない

✕ たらい回し(NG)

購入者が、メーカー・倉庫・販売者の間を行き来しながら問い合わせる状態。

◯ 販売者ハブモデル(OK)

売主(販売者)が中心となり、裏側で関係各所と調整する。購入者には必ず販売者の窓口から一元的に回答する体制を作る。

購入者にとって「どこがミスしたか」は関係ありません。最終的な責任者=販売者として、一貫した対応を心がけます。

理解度チェッククイズ

第1問 ECにおける売主の基本的な意味はどれでしょうか?

A.購入者との売買契約の相手
B.商品を運んだ配送会社
C.サイトの画像を作った会社
正解はAです。売主は、購入者との売買契約の相手となる者です。

第2問 ECモールで商品を購入した場合、売主は必ずモール運営会社でしょうか?

A.商品や取引形態によって異なる
B.必ずモール運営会社
C.必ず決済会社
正解はAです。モール運営者自身が販売する場合と、第三者の出店者が販売する場合があります。

第3問 メーカー直送について正しいものはどれでしょうか?

A.発送者と売主が異なる場合がある
B.メーカーが必ず売主
C.販売会社は関係しない
正解はAです。メーカーは、販売会社の指示に基づいて発送だけを担当している場合があります。

第4問 物流倉庫の主な役割はどれでしょうか?

A.保管・梱包・発送
B.必ず販売価格を決める
C.必ず売買契約を締結する
正解はAです。倉庫は、商品の保管、梱包、発送などを受託することが一般的です。

第5問 商品が契約内容と異なる場合、購入者が基本的に確認する相手は誰でしょうか?

A.売主
B.広告を見たSNS
C.無関係なメーカー
正解はAです。購入者との販売契約の相手である売主を確認します。

第6問 販売責任と製造物責任について正しいものはどれでしょうか?

A.異なる責任として整理する
B.完全に同じ
C.どちらも配送会社だけが負う
正解はAです。契約どおりの商品を渡す責任と、製品の欠陥による損害に関する責任は、適用される考え方や責任主体が異なる場合があります。

第7問 販売業者がPL法上の責任主体となる可能性があるのはどれでしょうか?

A.商品を輸入した場合や製造者と誤認させる表示をした場合
B.商品ページを一度見ただけの場合
C.購入者として商品を買った場合
正解はAです。製造物責任法では、製造・加工・輸入をした者や、製造業者と誤認させる表示をした者などが責任主体となり得ます。

第8問 モールの画面から返品申請した場合、モールが必ず返品費用を負担するでしょうか?

A.契約・返品条件・責任分担による
B.必ずモール負担
C.必ず購入者負担
正解はAです。返品理由、販売者の返品条件、モール制度、送料負担の定めなどを確認します。

第9問 売主を確認する場所として適切なものはどれでしょうか?

A.商品ページ・特商法表記・注文確認・規約
B.商品の色だけ
C.配送車両の会社名だけ
正解はAです。一つの情報だけでなく、販売者表示、特商法表記、規約、書類を照合します。

第10問 販売代行会社が問い合わせ対応をしている場合、必ず売主でしょうか?

A.販売契約の当事者か別に確認する
B.必ず売主
C.必ず製造者
正解はAです。問い合わせ業務の受託者と、購入者との販売契約の当事者は異なる場合があります。

第11問|実務判断問題 メーカーAが商品を製造し、販売会社Bが価格を決定して購入者から注文を受け、モールCが注文画面と決済機能を提供し、倉庫Dが商品を発送しています。商品ページには「販売元:販売会社B」と記載されています。売主として最も可能性が高いのは誰でしょうか?

回答例を見る

販売会社Bが売主である可能性が高いと考えられます。理由は、価格を決めている、購入者から注文を受けている、商品ページの販売元として表示されていることです。ただし、最終的には利用規約、特定商取引法に基づく表記、注文確認画面、領収書なども確認します。

第12問|責任整理問題 販売会社が海外メーカーの商品を輸入し、自社ブランドを付けて国内販売しています。購入者が「商品を販売したのは販売会社だが、製造したのは海外メーカーだから、販売会社には製品上の責任がない」と言われました。この説明だけで判断してよいでしょうか?

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その説明だけで判断してはいけません。販売会社は、国内へ商品を輸入し、自社ブランドを表示し、国内の購入者へ販売しています。製造物責任法では、輸入業者や、製造者と誤認させる表示をした事業者、実質的な製造業者と認められる者が責任主体となる可能性があります。

さらに、購入者との売買契約については、販売会社が売主として対応すべき問題もあります。個別の事故・損害については、契約内容や製品、被害状況を確認し、必要に応じて弁護士等の専門家へ相談します。

よくある質問

今回のまとめ

ECでは、商品の販売に複数の会社が関わります。今回覚えておきたいポイントは、次の5つです。

  1. 売主は、基本的に購入者との売買契約の相手
  2. サイト運営者・メーカー・倉庫・決済会社と売主を分ける
  3. 販売責任・返品責任・製造物責任を同じにしない
  4. 商品ページ、特商法表記、規約、注文確認、書類を照合する
  5. 作業担当者と購入者への最終責任者を分けて管理する

基本的な確認の流れは、商品ページの販売元を確認→特定商取引法に基づく表記を確認→注文確認・規約を確認→請求書・領収書を確認→返品・返金条件を確認→メーカー・倉庫・決済会社の役割を分ける→購入者への回答責任者を決める→事業者間の費用負担を契約で整理、という順です。大切なのは、商品に関わった会社をすべて売主と考えることではありません。購入者との契約相手を特定し、そのうえで販売者、メーカー、輸入者、倉庫、プラットフォームの役割と責任を分けることが重要です。

「商品を作った会社、送った会社、決済した会社ではなく、まず“誰が購入者へ販売したのか”を確認しよう!」

今回のまとめ&NEXT STEP。売主とは購入者と売買契約を結んだ当事者である/サイト運営、発送、決済の作業者=売主とは限らない/販売責任(契約不適合)と製造物責任(PL法)は切り分けて管理する/商品ページ、特商法表記、規約、領収書など複数の情報で売主を特定する/顧客対応は販売者をハブとし、たらい回しを防ぐ。次回DAY35:特定商取引法と消費者契約について、具体的な表示項目とルールを整理

DAY34の実践課題

利用中または想定するECについて、売主と関係者を整理してください。商品ページの販売元、特商法表記の販売業者、注文確認上の販売者、領収書の発行者を書き出し、売主と判断した事業者を決めます。製造者、商品提供者、輸入者、EC運営者、倉庫・発送担当、決済事業者の役割分担も整理し、返品受付、返品承認、返金承認、商品不良調査、購入者への最終回答の担当者を決めてください。商品ページと特商法表記の販売者名は一致するか、発送者と売主は同じか、返品受付者と返品判断者は同じか、製品事故が発生した場合はどこへ直ちに報告するかを確認します。分からない場合は推測せず、商品ページ、特定商取引法に基づく表記、利用規約、注文確認、請求書・領収書、返品条件、メーカー・倉庫との契約を確認してください。

獲得バッジ

音声で学んだ
売主特定マスター
責任分担表完成
FAQマスター
クイズクリア

次回 DAY35:ECと特定商取引法・消費者契約

販売者情報、価格、送料、支払時期、配送時期、返品条件の表示を整理します。

DAY35へ進む(公開後にリンクします)

文:横田和也/解決ドットコム編集部

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