実在庫・販売可能在庫・引当在庫・安全在庫とは?EC在庫管理の基本を解説 DAY16

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【DAY16】在庫・引当・欠品の基本

実在庫・販売可能在庫・引当在庫・安全在庫と、注文後の在庫の動きを整理する

カイピヨくんと学ぶ DAY16 在庫・引当・欠品の基本。実在庫・販売可能在庫・安全在庫の流れ
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🔊 音声で聞く「倉庫の在庫と売れる数は違う」

ECの管理画面に「在庫10個」と表示されているとします。この数字を見て、10個すべて販売できると思うかもしれません。しかし、実際には次のような状態が考えられます。

  • 3個は注文済みで、発送を待っている
  • 1個は破損している
  • 2個は急な注文に備えて残している
  • 新しく販売できるのは4個だけ

つまり、倉庫に10個あっても、販売できる在庫が10個あるとは限りません。ECの在庫管理では、単に「何個あるか」ではなく、その在庫が現在どの状態にあるかを確認します。今回整理する主な在庫は、実在庫、販売可能在庫、引当在庫、安全在庫の4つです。

「倉庫にある数と、今すぐ売ってよい数は同じとは限らないよ!」

この記事で分かること

  • 実在庫・販売可能在庫・引当在庫の違い/安全在庫を持つ理由
  • 在庫切れと、倉庫の在庫が0個になることの違い
  • 注文が入ったときの在庫の動き
  • 決済失敗やキャンセル時の引当解除
  • 発送したときに在庫を減らす仕組み
  • 破損、返品、棚卸しで在庫が変わる場面
  • 複数サイトで同じ在庫を販売する危険
  • 売り越しや欠品を防ぐための運用ルール
  • 再発注点と安全在庫の基本的な関係

なお、在庫の名称や計算方法は、利用するEC・在庫管理システムによって異なります。この記事では、初めて在庫管理を学ぶ人が流れを理解しやすいように、一般的な意味で用語を整理します。

Contents
  1. 先に結論|在庫は「ある・売れる・約束済み・残しておく」に分ける
  2. 身近な例で考えると「予約されたケーキ」
  3. 1.実在庫とは|倉庫や店舗に実際に存在する数量
    1. 実在庫と帳簿在庫
  4. 2.販売可能在庫とは|新しい注文を受けられる在庫
  5. 3.引当在庫とは|入った注文のために確保した在庫
  6. 4.安全在庫とは|予想外の欠品を防ぐための予備
  7. 5.在庫切れとは|販売可能在庫が0になった状態
    1. 欠品とは
  8. 6.注文から出荷まで、在庫はどう動く?
  9. 7.キャンセルされたら在庫はどう戻る?
    1. 8.決済に失敗した注文の引当
  10. 9.引当はいつ行う?
    1. 10.在庫の変化を記録する
    2. 11.破損した商品はどう動かす?
  11. 12.返品された商品はすぐ在庫へ戻さない
    1. 13.入荷予定在庫は、まだ販売可能とは限らない
  12. 14.売り越しはなぜ起こる?
    1. 15.複数サイトで同じ在庫を販売する場合
  13. 16.在庫の優先順位を決める
    1. 17.安全在庫と再発注点の違い
  14. 18.在庫差異が起きたらどうする?
    1. 19.棚卸しと循環棚卸し
  15. 20.欠品が起きたときの対応
  16. よくある在庫管理の失敗
  17. 実際のケースで考えてみよう|限定マグカップを20個販売する
  18. 在庫管理を始める12の質問
  19. やってみよう|在庫状態シミュレーター&再発注点計算機
  20. アウトプットワーク|在庫の状態を整理しよう
  21. 理解度チェッククイズ
  22. よくある質問
  23. 今回のまとめ
  24. 獲得バッジ

先に結論|在庫は「ある・売れる・約束済み・残しておく」に分ける

在庫は、次の4つに分けると理解しやすくなります。

在庫は「ある・売れる・約束済み・残しておく」の4つに分ける。実在庫(倉庫や店舗に実際に存在する数量)、販売可能在庫(新しい注文に対して販売できる数量)、引当在庫(すでに入った注文のために確保した数量)、安全在庫(欠品や入荷遅れに備えて販売から外しておく数量)
在庫の種類意味
実在庫倉庫や店舗に実際に存在する数量
販売可能在庫新しい注文に対して販売できる数量
引当在庫すでに入った注文のために確保した数量
安全在庫欠品や入荷遅れに備えて、販売から外しておく数量

さらに、破損品、品質確認中の商品、返品確認中の商品などは、販売不可在庫として分けることがあります。在庫管理システムの一例では、手持ち在庫を「販売可能」「注文に引当済み」「販売不可」の合計として管理し、入荷途中の商品は受領が完了するまで販売可能在庫へ含めません。この記事では、次の関係を基本にします。

販売可能在庫 = 実在庫 - 引当在庫 - 販売不可在庫 - 安全在庫

ただし、利用するシステムによっては、安全在庫が「販売不可在庫」の中に含まれます。同じ数量を二重に差し引かないよう、社内で定義を統一してください。

身近な例で考えると「予約されたケーキ」

お店にケーキが10個あるとします。そのうち、電話予約が3個入っています。さらに、1個は形が崩れて販売できません。急な予約に備えて、1個は店頭に出さず残しておきます。

種類数量
実在庫10個
引当在庫3個
販売不可在庫1個
安全在庫1個
販売可能在庫5個

倉庫に10個あるからといって、新しい購入者へ10個販売すると、予約済みの商品を渡せなくなります。ECの引当も、予約されたケーキを別の人へ売らないための仕組みと考えると分かりやすくなります。

1.実在庫とは|倉庫や店舗に実際に存在する数量

実在庫と帳簿在庫のずれ。実在庫は倉庫に実際に存在する数量。すでに注文された商品・破損している商品・品質確認中の商品・返品確認中の商品・展示や撮影に使用している商品・安全在庫として確保している商品も物理的には実在庫に含まれる場合がある。実際に数えた在庫とシステムの在庫が一致しないことがあり、定期的に現物と照合する必要がある

実在庫とは、商品を保管している場所に実際に存在する数量です。たとえば、倉庫の棚にマグカップが20個あるなら、実在庫は20個です。ただし、20個すべてが正常に販売できるとは限りません。すでに注文された商品、破損している商品、品質確認中の商品、返品され状態を確認している商品、展示や撮影に使用している商品、安全在庫として確保している商品も、物理的には倉庫に存在するため実在庫へ含まれる場合があります。

実在庫と帳簿在庫

在庫には、実際に商品を数えた「実在庫」と、ECや在庫管理システムに記録されている「帳簿在庫・システム在庫」の2つの数字があります。本来は一致している必要がありますが、次のような理由でずれることがあります。

  • 出荷したのにシステムを更新していない
  • 返品商品を先に在庫へ戻した
  • 破損品を販売可能のままにしている
  • 手作業で数量を間違えた
  • 実店舗の販売が反映されていない
  • サンプルとして使用した商品を記録していない

在庫管理では、管理画面の数字だけを信じず、定期的に現物と照合します。

2.販売可能在庫とは|新しい注文を受けられる在庫

販売可能在庫の計算例。実在庫20個-引当在庫4個-破損確認中2個-安全在庫3個=販売可能在庫11個。購入者へ表示する在庫数は実在庫ではなく販売可能在庫を基準にする。安全在庫や注文済み在庫を含めて表示すると用意できない数量を販売する可能性がある

販売可能在庫とは、現在、新しい購入者へ販売できる数量です。公式な在庫管理の一例でも、販売可能在庫は、注文に引き当てられておらず、別の目的で確保されてもいない在庫として定義されています。次の在庫は、原則として販売可能在庫へ含めません。

  • 注文済みの商品/予約済みの商品
  • 破損品/品質確認中の商品
  • 安全在庫
  • まだ倉庫へ届いていない入荷予定商品

例えば、実在庫が20個、引当在庫が4個、破損・確認中が2個、安全在庫が3個ある場合、販売可能在庫は次のとおりです。

20個-4個-2個-3個=11個

ECサイトで販売できる数量は、11個です。「在庫あり」「残りわずか」「残り3個」「売り切れ」「入荷待ち」といった表示は、実在庫ではなく販売可能在庫を基準にします。安全在庫や注文済み在庫を含めて表示すると、用意できない数量を販売する可能性があります。

3.引当在庫とは|入った注文のために確保した在庫

引当と出荷は違う。引当は注文のために商品を確保した状態、出荷は商品を倉庫から配送会社へ渡した状態。注文受付→在庫引当→出荷準備→商品出荷の流れ。引当された時点では商品はまだ倉庫にあり、出荷された時点で商品が倉庫からなくなる

引当とは、注文された商品を、他の注文に使わないように確保する処理です。引当済みの商品は倉庫に残っていますが、別の購入者へは販売できません。在庫引当を行うと、引当が解除またはキャンセルされない限り、その在庫を別の注文へ使用できないように管理できます。

注文受付
在庫引当
出荷準備
商品出荷

引当された時点では、商品はまだ倉庫にあります。出荷された時点で、商品が倉庫からなくなります。4個の注文が入り引当したとすると、実在庫は20個のまま変わらず、販売可能在庫だけが15個から11個へ減ります。

4.安全在庫とは|予想外の欠品を防ぐための予備

安全在庫とは、需要の増加、仕入れの遅れ、破損などに備えて、通常の販売から外しておく在庫です。安全在庫は、予想を超える注文や入荷遅延が起きたときに、欠品リスクを抑えるための予備として使われます。

安全在庫が必要になる場面
  • 注文数が日によって大きく変わる
  • 仕入先からの納期が安定しない
  • 繁忙期に注文が急増する
  • 海外から仕入れている/製造に時間がかかる
  • 商品が壊れやすい
  • 実店舗とECで在庫を共有している
  • 法人の大口注文が入る可能性がある
安全在庫は「売れ残り」ではない

欠品を防ぐために、意図的に確保している在庫です。ただし、多すぎる安全在庫は、保管費の増加、商品の劣化、賞味期限切れ、資金の固定化、旧パッケージの残留といった問題につながります。

安全在庫は、多ければ多いほどよいわけではありません。需要、入荷期間、商品の期限、保管費などを見ながら決めます。

5.在庫切れとは|販売可能在庫が0になった状態

在庫切れは、必ずしも倉庫の商品が0個になった状態ではありません。次の例を見てください。

種類数量
実在庫5個
引当在庫3個
安全在庫2個
販売可能在庫0個

倉庫には5個あります。しかし、3個は注文済みで、2個は安全在庫です。新しい注文へ販売できる在庫は0個なので、ECサイトでは「在庫切れ」となります。

「倉庫に商品が残っていても、販売できる数が0なら“在庫切れ”なんだ!」

欠品とは

欠品は、必要な商品を必要な時点で用意できない状態です。注文を受けたが商品がない、法人から10個注文されたが8個しかない、セット商品の一部が足りない、引当した商品が破損していた、入荷予定日が遅れ発送できない、ECと実店舗で同時に売れた、といった場合です。在庫切れ表示を正しく出せていれば、注文前に販売を止められます。一方、注文後に商品を用意できないことが分かると、欠品対応が必要になります。

6.注文から出荷まで、在庫はどう動く?

注文から出荷までの在庫の動き。実在庫20個・安全在庫5個・引当在庫0個・販売可能在庫15個からスタート。Step1:3個の注文が入ると引当在庫3個・販売可能在庫12個へ(実在庫は変わらない)。Step2:決済確認だけでは在庫は変わらない。Step3:3個を出荷すると実在庫17個・引当在庫0個へ(販売可能在庫は引当時に減っているため12個のまま)

在庫は、注文、決済、出荷などの出来事によって状態が変わります。今回は、実在庫20個、販売不可・安全5個、引当在庫0個、販売可能在庫15個の状態から始めます。

段階実在庫引当在庫販売可能在庫
開始時20個0個15個
Step1|3個の注文が入る20個3個12個
Step2|決済が確認される20個3個12個
Step3|商品を出荷する17個0個12個

商品はまだ倉庫にあるため、引当だけでは実在庫は減りません。出荷時に、引当在庫が実在庫からも減ります。決済確認だけでは、注文状態や決済状態は変わりますが、在庫は引当済みのままです。

7.キャンセルされたら在庫はどう戻る?

キャンセル時の引当解除。3個を引き当てたあと発送前にキャンセルされ、商品に問題がなければ引当を解除する。実在庫20個は変わらず、引当在庫3個→0個、販売可能在庫12個→15個へ戻る。自動的に戻る場合と、管理者のキャンセル処理・返金完了後・担当者の手作業で戻る場合がある

3個を引き当てたあと、発送前に注文がキャンセルされたとします。商品に問題がなければ、引当を解除します。引当在庫から販売可能在庫へ戻すだけなので、実在庫は変わりません。

ただし、ECや在庫管理システムによって、キャンセル時の動きは異なります。自動的に販売可能在庫へ戻る、管理者がキャンセル処理すると戻る、返金完了後に戻る、担当者が手作業で戻す、商品確認後に戻すなど、実際の動作を確認する必要があります。キャンセル処理をしたのに在庫が戻らない場合、販売できる商品があるのに売り切れ表示が続く可能性があります。

8.決済に失敗した注文の引当

注文画面まで進んでも、カード決済失敗、コンビニ支払い待ち、銀行振込待ち、決済画面を閉じた、不正利用の確認中など、支払いが完了しないことがあります。このとき、在庫をいつまで確保するか決める必要があります。

すぐ引当を解除する方法

他の購入者へ販売できる、在庫が長時間止まらないというメリットがある一方、購入者が支払いをやり直したとき商品が売り切れている可能性があります。

一定時間だけ確保する方法

たとえば、決済失敗後30分だけ在庫を確保し、支払い完了なら注文継続、未払いなら自動解除します。

支払期限まで確保する方法

銀行振込やコンビニ支払いでは数日間の支払期限を設定する場合がありますが、支払い待ち注文が多いと、実際には売れていない商品が長期間販売できなくなります。

支払期限、引当を維持する期間、期限前の案内、期限切れ時の注文取消し、在庫を戻すタイミング、購入者への通知を事前に決めます。

9.引当はいつ行う?

タイミング特徴
カート投入時一時的に確保するが、放置カートへの対応が必要
注文確定時注文受付と同時に確保できる
決済完了時未払い注文による長期確保を減らせる
担当者確認後不正注文や住所不備を確認できる
出荷準備時在庫を長く確保しないが、売り越しリスクが高い

限定商品や在庫の少ない商品では、注文確定時など早い段階で引き当てる方法があります。一方、支払い待ちが多い商品では、引当期限や自動解除が重要になります。

10.在庫の変化を記録する

在庫数を直接上書きするだけでは、なぜ増減したのか分からなくなります。在庫は、出来事ごとに記録します。

出来事在庫への影響
商品を入荷した実在庫・販売可能在庫が増える
注文を引き当てた販売可能から引当へ移動
注文をキャンセルした引当から販売可能へ戻る
商品を出荷した実在庫・引当在庫が減る
商品が破損した販売可能から販売不可へ移動
返品商品を受け取った確認待ち在庫が増える
棚卸し差異を修正したシステム在庫を実在庫へ合わせる

在庫調整履歴を残せるシステムでは、商品・バリエーションごとの数量変更を確認できます。

11.破損した商品はどう動かす?

販売可能在庫が10個あり、そのうち1個の破損が見つかったとします。破損品を販売不可へ移すと、販売可能在庫は9個、販売不可在庫は1個になります。実在庫は10個のままです。物理的には倉庫にありますが、販売できるのは9個です。公式な在庫状態の例でも、破損、品質確認、安全在庫などを、倉庫には存在するものの販売できない在庫として区分しています。

引当済みの商品が破損していた場合は、別の販売可能在庫を注文へ引き当て直せるか、同じSKUの商品が別倉庫にないか、入荷予定日はいつか、代替商品を提案できるか、発送を待ってもらうか、一部キャンセル・返金が必要か、購入者へいつ説明するかの順に確認します。販売可能在庫に代わりの商品がなければ、欠品対応が必要になります。

12.返品された商品はすぐ在庫へ戻さない

購入者から返品商品が倉庫へ届いても、すぐ販売可能在庫へ戻してはいけません。未使用か、商品が破損していないか、付属品がそろっているか、食品・衛生商品として再販売できるか、パッケージに問題がないか、商品コード・SKUが正しいかを確認します。

返品到着
返品確認中

返品到着時は、一度「返品確認中」「販売不可」などへ移します。返品処理と在庫更新を同時に考えることが重要です。

13.入荷予定在庫は、まだ販売可能とは限らない

仕入先から100個発送されたという連絡があっても、まだ自社倉庫には届いていません。この状態は、入荷予定・輸送中在庫として管理できます。入荷予定100個を実在庫へ加えると、輸送遅延や数量不足があった場合に商品を用意できなくなります。在庫管理の一例でも、移動中の商品は受領され、販売可能状態へ変更されるまで販売できない在庫として扱われます。

入荷予定商品を購入者へ販売する場合は、通常販売ではなく予約販売として扱う方法があります。入荷予定日、発送予定日、遅延時の対応、キャンセル条件、予約できる上限数などを設定します。予約販売・受注生産については、DAY17で詳しく扱います。

14.売り越しはなぜ起こる?

売り越しとは、実際に用意できる数量より多く注文を受けることです。たとえば、販売可能在庫が1個しかないのに、2人から注文を受けた状態です。

  • 在庫更新が遅い(注文が入っても、ECサイトの在庫数がすぐ減らない)
  • 引当処理がない(注文済みの商品が、販売可能なまま残っている)
  • 複数サイトで同時に販売している
  • 実店舗の販売が反映されていない
  • 在庫の手入力ミス(10個を100個と入力した)
  • 返品を早く戻しすぎた
  • セット在庫を二重に数えた

15.複数サイトで同じ在庫を販売する場合

複数サイトで同じ在庫を販売する危険。実際の在庫は10個だが、自社EC・モールA・モールB・実店舗それぞれへ10個ずつ登録すると、画面上では合計40個販売できるように見える。対応方法:在庫を自動連携する、販売先ごとに数量を割り当てる(自社EC4個・モールA3個・モールB2個・実店舗1個で合計10個)、安全在庫を設定する

一つの商品を自社EC、ECモールA、ECモールB、実店舗で販売するとします。実際の在庫は10個ですが、各販売先へ10個ずつ登録すると、画面上では合計40個販売できるように見えます。これでは、短時間に複数の注文が入ると売り越す可能性があります。

対応方法として、在庫を自動連携する、販売先ごとに数量を割り当てる(自社EC4個・モールA3個・モールB2個・実店舗1個で合計10個)、安全在庫を設定するといった方法があります。ただし、販売先ごとに数量を割り当てると、モールAで売り切れても自社ECには在庫が残る可能性があります。

16.在庫の優先順位を決める

在庫が不足した場合、どの注文へ商品を割り当てるか決める必要があります。代表的な考え方は、注文が早い順、決済が完了した順、発送予定日が早い順、法人・大口顧客を優先、定期購入を優先、予約注文を優先、地域や倉庫の近さで決める、などです。在庫引当の仕組みでは、注文順で商品を確保したり、特定の顧客・注文を優先したりする設定が利用されることがあります。重要なのは、不足が起きてから担当者の感覚で決めるのではなく、事前に優先ルールを決めることです。

17.安全在庫と再発注点の違い

安全在庫と再発注点の違い。安全在庫は予想外の需要や入荷遅れに備える予備、再発注点は在庫がこの数量まで減ったら仕入れ・製造を依頼する基準。再発注点=入荷までに売れる見込み数+安全在庫。例:1日の平均販売数3個×発注から入荷まで4日=12個、12個+安全在庫5個=再発注点17個

安全在庫は予想外の需要や入荷遅れに備える予備です。再発注点は、在庫がこの数量まで減ったら仕入れ・製造を依頼する基準です。

再発注点 = 入荷までに売れる見込み数 + 安全在庫

たとえば、1日の平均販売数3個、発注から入荷まで4日、安全在庫5個の場合、入荷までに販売すると予想される数は3個×4日=12個です。再発注点は12個+安全在庫5個=17個となり、在庫が17個まで減ったら補充を検討します。売れる速さ、季節、仕入先の納期、最低発注数量、配送遅延、商品の賞味期限、キャンペーン、入荷不良の割合が変われば、再発注点も見直します。通常月と年末商戦で、同じ安全在庫・再発注点が適切とは限りません。

18.在庫差異が起きたらどうする?

倉庫を数えたところ、システムでは20個、実際には18個だったとします。すぐに「18個」へ上書きするだけでは、原因が分かりません。未処理の注文がないか、出荷済みで在庫未更新の注文がないか、返品処理中の商品がないか、破損・廃棄の記録がないか、別の棚や倉庫へ移動していないか、SKUを取り違えていないか、実店舗で販売されていないか、数え間違いがないか、過去の在庫調整履歴を確認し、原因と修正内容を記録します。原因不明の在庫差異が繰り返される場合、入荷、移動、出荷、返品のいずれかで記録が漏れています。

19.棚卸しと循環棚卸し

一斉棚卸し

決められた日に、すべての商品を数えます。全体の実在庫を確認できる一方、商品数が多いと時間がかかり、営業や出荷を止める場合があります。年1回だけでは差異の発生時期が分かりません。

循環棚卸し

商品を分けて、定期的に少しずつ数えます(高額商品は毎週、売れ筋商品は毎月、動きの少ない商品は3か月ごとなど)。差異を早く見つけやすい方法です。

優先して確認したい商品は、高額商品、売れ筋商品、盗難・紛失しやすい商品、色やサイズが似ている商品、賞味期限がある商品、返品が多い商品、在庫差異が繰り返される商品です。

20.欠品が起きたときの対応

注文後に商品を用意できないことが分かった場合、次の順番で整理します。

  1. 事実を確認する 注文番号、SKU、注文数量、引当状況、倉庫の実在庫、他の倉庫の在庫、入荷予定日を確認します。
  2. 代替方法を確認する 別倉庫から発送、次回入荷を待つ、代替商品を提案、一部数量のみ発送、注文を分割するといった方法を検討します。
  3. 購入者へ連絡する 欠品した商品、現在の状況、発送可能日、選べる対応、返金の時期を伝えます。
  4. 在庫データを修正する 同じ商品へ新しい注文が入らないよう、販売可能在庫を修正します。
  5. 原因を記録する 在庫連携の遅れ、倉庫の誤出荷、破損、入力ミス、二重販売、引当漏れなどを記録します。

よくある在庫管理の失敗

失敗1|在庫を一つの数字だけで管理する
注文済み、破損、販売可能が区別できません。
失敗2|注文が入っても在庫を引き当てない
同じ商品を別の購入者へ販売する可能性があります。
失敗3|キャンセル後に引当を解除しない
販売できる商品があるのに、売り切れ表示が続きます。
失敗4|発送時に販売可能在庫をもう一度減らす
引当時と発送時の両方で販売可能在庫を減らすと、二重に減少します。
失敗5|入荷予定を実在庫として登録する
商品が遅延した場合に、用意できない数量を販売します。
失敗6|返品商品を確認せず在庫へ戻す
使用済み・破損商品を別の購入者へ販売する可能性があります。
失敗7|安全在庫を担当者の感覚だけで決める
売れ方や入荷期間に合っていない在庫量になります。
失敗8|在庫差異を数字だけ修正する
差異の原因が残り、同じ問題が繰り返されます。

実際のケースで考えてみよう|限定マグカップを20個販売する

限定マグカップの実在庫は20個です。安全在庫2個、販売開始時の販売可能在庫18個、注文確定時に引当、未払い注文は24時間で解除、返品商品は確認後に在庫へ戻すというルールで運用します。

段階実在庫引当在庫販売可能在庫
販売開始時20個0個18個
5個の注文が入る20個5個13個
1件が未払いで期限切れ20個4個14個
支払い済み4個を出荷16個0個14個
棚卸しで1個破損が見つかる16個0個13個

このように、実在庫、引当、販売可能、安全在庫を分けると、何が起きたのか追いやすくなります。

在庫管理を始める12の質問

  1. 正式な在庫データはどこですか?EC、倉庫表、在庫管理システムのどれを基準にするか決めます。
  2. 在庫はSKU単位で管理されていますか?色・サイズ違いをまとめていないか確認します。
  3. 注文のどの時点で引き当てますか?注文確定、決済完了などの条件を決めます。
  4. 未払い注文はいつ解除しますか?在庫を長期間止めないルールを作ります。
  5. キャンセル時に在庫は自動で戻りますか?実際のシステム動作を確認します。
  6. 安全在庫はいくつですか?需要と入荷期間をもとに設定します。
  7. 破損品はどの状態へ移しますか?販売可能在庫のままにしないようにします。
  8. 返品商品は誰が確認しますか?再販売できる条件を決めます。
  9. 入荷予定在庫を販売しますか?通常販売か予約販売かを区別します。
  10. 複数サイトの在庫は連携されていますか?売り越しを防ぐ方法を確認します。
  11. 棚卸しはいつ行いますか?商品別に頻度を決めます。
  12. 在庫差異の原因をどこへ記録しますか?数量の修正だけで終わらせない仕組みを作ります。

やってみよう|在庫状態シミュレーター&再発注点計算機

実在庫・安全在庫・販売不可在庫の初期値を設定し、「注文」「キャンセル」「出荷」「破損」「入荷」のボタンを押すと、実在庫・引当在庫・販売可能在庫がどう動くかをリアルタイムに確認できます。操作履歴も記録されるので、DAY16本文のStep1〜3のような動きを自分の数字で再現できます。入力内容はこのブラウザにのみ保存され、外部へは送信されません。

① 在庫状態シミュレーター

この数字で設定する(リセット)

実在庫
引当在庫
販売不可在庫
安全在庫
販売可能在庫
+入荷する 注文を受ける(引当) キャンセル(引当解除) 出荷する 破損が見つかった

まだ操作履歴がありません。上のボタンで在庫を動かしてみましょう。

② 再発注点計算機

再発注点:(安全在庫は上の①で設定した数字を使用します)

これは仕組みを理解するための簡易ツールです。実際の運用では、利用するEC・在庫管理システムの仕様に沿って設定してください。

アウトプットワーク|在庫の状態を整理しよう

販売する商品を一つ選んでください。分からない部分は、推測で決めず「未確認」と記入してください。

① 現在の在庫を分ける

在庫の種類数量
実在庫
引当在庫
販売不可在庫
安全在庫
販売可能在庫
入荷予定在庫

② キャンセル時のルール

項目自社のルール
引当を解除する条件
未払いの支払期限
在庫を戻す担当者/自動・手動

③ 安全在庫と再発注点

1日の平均販売数個 × 入荷まで日 + 安全在庫個 = 再発注点

記入できたら完了にする

理解度チェッククイズ

第1問 実在庫の説明として最も近いものはどれでしょうか?

A.倉庫や店舗に実際に存在する数量
B.今後必ず売れる数量
C.購入者がカートに入れた数量だけ
正解はAです。実在庫は、倉庫や店舗などの保管場所に実際に存在する商品の数量です。

第2問 販売可能在庫とは、どのような在庫でしょうか?

A.新しい注文へ販売できる在庫
B.すでに出荷した在庫
C.破損している在庫だけ
正解はAです。販売可能在庫は、注文済み、販売不可、安全在庫などを除いた、新しい注文に対して販売できる在庫です。

第3問 引当在庫とは、どのような在庫でしょうか?

A.注文のために確保され、まだ出荷されていない在庫
B.仕入先から購入していない在庫
C.販売終了した商品だけ
正解はAです。引当在庫は、すでに入った注文のために確保されていますが、まだ発送されていない在庫です。

第4問 安全在庫を持つ主な目的は何でしょうか?

A.急な注文や入荷遅れによる欠品を減らすため
B.必ず廃棄するため
C.商品ページの画像を増やすため
正解はAです。安全在庫は、予想以上の注文や入荷遅延などによる欠品リスクを抑えるために確保します。

第5問 実在庫20個、引当在庫4個、販売不可在庫2個、安全在庫3個の場合、販売可能在庫はいくつでしょうか?

A.11個
B.15個
C.29個
正解はAです。20個-4個-2個-3個=11個です。

第6問 3個の商品を引き当てた直後、実在庫はどのようになるでしょうか?

A.通常はまだ商品が倉庫にあるため、実在庫は変わらない
B.必ず0個になる
C.3個増える
正解はAです。引当は在庫を確保する処理で、まだ出荷していないため実在庫は通常変わりません。

第7問 発送前に注文がキャンセルされ、商品に問題がない場合、引当在庫はどうしますか?

A.販売可能在庫へ戻す
B.必ず廃棄する
C.入荷予定在庫へ移す
正解はAです。商品が倉庫にあり、再販売できる状態なら、引当を解除して販売可能在庫へ戻します。

第8問 入荷予定の商品は、通常いつ販売可能在庫になりますか?

A.倉庫で受領し、数量や状態を確認したあと
B.仕入先へ注文した直後
C.購入者が商品ページを見たとき
正解はAです。仕入先から発送された段階では数量不足や破損の可能性があるため、倉庫で受領・確認したあとに販売可能在庫となります。

第9問 1日の平均販売数が4個、入荷まで5日、安全在庫が6個の場合、再発注点はいくつでしょうか?

A.20個
B.26個
C.30個
正解はBです。1日4個×5日=20個。20個+安全在庫6個=26個です。

第10問|実務判断問題 実在庫は5個あります。そのうち、3個は注文済み、1個は破損、1個は安全在庫です。ECサイトには「在庫あり」と表示されています。どのような問題があり、どう修正しますか?

回答例を見る

実在庫5個-引当3個-破損1個-安全在庫1個=販売可能在庫0個。新しく販売できる在庫はありません。ECサイトの「在庫あり」は誤りです。

次の対応を行います:販売可能在庫を0個へ修正する/商品ページを売り切れ・入荷待ちへ変更する/破損品を販売不可として記録する/引当済み3個を予定どおり発送できるか確認する/次回の入荷予定を確認する/在庫表示が実在庫を参照していないか設定を見直す。

第11問|実務判断問題 コンビニ支払いを選んだ注文が10件あり、すべて未払いです。引当を7日間維持しているため、商品が売り切れ表示になりました。どのような運用を確認・改善しますか?

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コンビニ支払いの期限を確認する/7日間の在庫確保が適切か確認する/支払期限前の自動案内を設定する/期限切れ注文を自動取消しできるか確認する/取消し後に引当が自動解除されるか確認する/未払い注文による在庫確保数を確認できるようにする/人気商品だけ引当期限を短くできないか検討する/購入者へ支払期限と在庫確保条件を分かりやすく表示する。未払い注文をすぐ解除すればよいとは限らず、購入者の支払機会と、他の購入者へ販売できない時間のバランスを見て決めます。

よくある質問

今回のまとめ

在庫は、「商品が何個あるか」だけを記録すればよいものではありません。今回覚えておきたいポイントは、次の5つです。

  1. 実在庫は、倉庫や店舗に実際に存在する数量
  2. 販売可能在庫は、新しい注文へ販売できる数量
  3. 引当在庫は、注文のために確保され、まだ出荷されていない数量
  4. 安全在庫は、急な需要や入荷遅れに備えて確保する数量
  5. 注文・キャンセル・出荷・返品・破損ごとに在庫の状態を動かす

ECでは、注文が入った時点で販売可能在庫を減らし、出荷時に実在庫を減らすなど、段階ごとの管理が必要です。キャンセルされた在庫を戻さなければ、販売機会を失います。反対に、引当を行わなければ、同じ商品を複数の購入者へ販売する可能性があります。重要なのは、在庫数を上書きすることではなく、なぜ増えたか、なぜ減ったかを記録することです。

「在庫は“数字”ではなく、“今どんな状態か”まで管理しよう!」

DAY16の実践課題

販売したい商品、または身近な商品を一つ選び、在庫の動きを記録してください。最初の状態(実在庫・引当在庫・販売不可在庫・安全在庫・販売可能在庫)、3個の注文が入った場合、1個がキャンセルされた場合、残り2個を出荷した場合の実在庫・引当在庫・販売可能在庫をそれぞれ書き出します。最後に、注文がいつ在庫を引き当てるか、未払い注文はいつ引当を解除するか、キャンセル商品の在庫は誰が確認するか、返品商品は何を確認してから販売可能在庫へ戻すか、在庫が何個になったら補充を依頼するかをルールとして言葉にしてください。分からない部分は、推測で決めず「未確認」と記録してください。

獲得バッジ

音声で学んだ
在庫シミュレーター達成
在庫整理完了
FAQマスター
クイズクリア

次回 DAY17:予約販売・受注生産の基本

在庫を持って販売する通常販売と、入荷前に注文を受ける予約販売、注文後に商品を作る受注生産の違いを整理します。

DAY17へ進む(公開後にリンクします)

文:横田和也/解決ドットコム編集部

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