実在庫・販売可能在庫・引当在庫・安全在庫とは?EC在庫管理の基本を解説 DAY16

【DAY16】在庫・引当・欠品の基本
実在庫・販売可能在庫・引当在庫・安全在庫と、注文後の在庫の動きを整理する
ECの管理画面に「在庫10個」と表示されているとします。この数字を見て、10個すべて販売できると思うかもしれません。しかし、実際には次のような状態が考えられます。
- 3個は注文済みで、発送を待っている
- 1個は破損している
- 2個は急な注文に備えて残している
- 新しく販売できるのは4個だけ
つまり、倉庫に10個あっても、販売できる在庫が10個あるとは限りません。ECの在庫管理では、単に「何個あるか」ではなく、その在庫が現在どの状態にあるかを確認します。今回整理する主な在庫は、実在庫、販売可能在庫、引当在庫、安全在庫の4つです。
「倉庫にある数と、今すぐ売ってよい数は同じとは限らないよ!」
この記事で分かること
- 実在庫・販売可能在庫・引当在庫の違い/安全在庫を持つ理由
- 在庫切れと、倉庫の在庫が0個になることの違い
- 注文が入ったときの在庫の動き
- 決済失敗やキャンセル時の引当解除
- 発送したときに在庫を減らす仕組み
- 破損、返品、棚卸しで在庫が変わる場面
- 複数サイトで同じ在庫を販売する危険
- 売り越しや欠品を防ぐための運用ルール
- 再発注点と安全在庫の基本的な関係
なお、在庫の名称や計算方法は、利用するEC・在庫管理システムによって異なります。この記事では、初めて在庫管理を学ぶ人が流れを理解しやすいように、一般的な意味で用語を整理します。
- 先に結論|在庫は「ある・売れる・約束済み・残しておく」に分ける
- 身近な例で考えると「予約されたケーキ」
- 1.実在庫とは|倉庫や店舗に実際に存在する数量
- 2.販売可能在庫とは|新しい注文を受けられる在庫
- 3.引当在庫とは|入った注文のために確保した在庫
- 4.安全在庫とは|予想外の欠品を防ぐための予備
- 5.在庫切れとは|販売可能在庫が0になった状態
- 6.注文から出荷まで、在庫はどう動く?
- 7.キャンセルされたら在庫はどう戻る?
- 9.引当はいつ行う?
- 12.返品された商品はすぐ在庫へ戻さない
- 14.売り越しはなぜ起こる?
- 16.在庫の優先順位を決める
- 18.在庫差異が起きたらどうする?
- 20.欠品が起きたときの対応
- よくある在庫管理の失敗
- 実際のケースで考えてみよう|限定マグカップを20個販売する
- 在庫管理を始める12の質問
- やってみよう|在庫状態シミュレーター&再発注点計算機
- アウトプットワーク|在庫の状態を整理しよう
- 理解度チェッククイズ
- よくある質問
- 今回のまとめ
- 獲得バッジ
先に結論|在庫は「ある・売れる・約束済み・残しておく」に分ける
在庫は、次の4つに分けると理解しやすくなります。
| 在庫の種類 | 意味 |
|---|---|
| 実在庫 | 倉庫や店舗に実際に存在する数量 |
| 販売可能在庫 | 新しい注文に対して販売できる数量 |
| 引当在庫 | すでに入った注文のために確保した数量 |
| 安全在庫 | 欠品や入荷遅れに備えて、販売から外しておく数量 |
さらに、破損品、品質確認中の商品、返品確認中の商品などは、販売不可在庫として分けることがあります。在庫管理システムの一例では、手持ち在庫を「販売可能」「注文に引当済み」「販売不可」の合計として管理し、入荷途中の商品は受領が完了するまで販売可能在庫へ含めません。この記事では、次の関係を基本にします。
ただし、利用するシステムによっては、安全在庫が「販売不可在庫」の中に含まれます。同じ数量を二重に差し引かないよう、社内で定義を統一してください。
身近な例で考えると「予約されたケーキ」
お店にケーキが10個あるとします。そのうち、電話予約が3個入っています。さらに、1個は形が崩れて販売できません。急な予約に備えて、1個は店頭に出さず残しておきます。
| 種類 | 数量 |
|---|---|
| 実在庫 | 10個 |
| 引当在庫 | 3個 |
| 販売不可在庫 | 1個 |
| 安全在庫 | 1個 |
| 販売可能在庫 | 5個 |
倉庫に10個あるからといって、新しい購入者へ10個販売すると、予約済みの商品を渡せなくなります。ECの引当も、予約されたケーキを別の人へ売らないための仕組みと考えると分かりやすくなります。
1.実在庫とは|倉庫や店舗に実際に存在する数量
実在庫とは、商品を保管している場所に実際に存在する数量です。たとえば、倉庫の棚にマグカップが20個あるなら、実在庫は20個です。ただし、20個すべてが正常に販売できるとは限りません。すでに注文された商品、破損している商品、品質確認中の商品、返品され状態を確認している商品、展示や撮影に使用している商品、安全在庫として確保している商品も、物理的には倉庫に存在するため実在庫へ含まれる場合があります。
実在庫と帳簿在庫
在庫には、実際に商品を数えた「実在庫」と、ECや在庫管理システムに記録されている「帳簿在庫・システム在庫」の2つの数字があります。本来は一致している必要がありますが、次のような理由でずれることがあります。
- 出荷したのにシステムを更新していない
- 返品商品を先に在庫へ戻した
- 破損品を販売可能のままにしている
- 手作業で数量を間違えた
- 実店舗の販売が反映されていない
- サンプルとして使用した商品を記録していない
在庫管理では、管理画面の数字だけを信じず、定期的に現物と照合します。
2.販売可能在庫とは|新しい注文を受けられる在庫
販売可能在庫とは、現在、新しい購入者へ販売できる数量です。公式な在庫管理の一例でも、販売可能在庫は、注文に引き当てられておらず、別の目的で確保されてもいない在庫として定義されています。次の在庫は、原則として販売可能在庫へ含めません。
- 注文済みの商品/予約済みの商品
- 破損品/品質確認中の商品
- 安全在庫
- まだ倉庫へ届いていない入荷予定商品
例えば、実在庫が20個、引当在庫が4個、破損・確認中が2個、安全在庫が3個ある場合、販売可能在庫は次のとおりです。
ECサイトで販売できる数量は、11個です。「在庫あり」「残りわずか」「残り3個」「売り切れ」「入荷待ち」といった表示は、実在庫ではなく販売可能在庫を基準にします。安全在庫や注文済み在庫を含めて表示すると、用意できない数量を販売する可能性があります。
3.引当在庫とは|入った注文のために確保した在庫
引当とは、注文された商品を、他の注文に使わないように確保する処理です。引当済みの商品は倉庫に残っていますが、別の購入者へは販売できません。在庫引当を行うと、引当が解除またはキャンセルされない限り、その在庫を別の注文へ使用できないように管理できます。
引当された時点では、商品はまだ倉庫にあります。出荷された時点で、商品が倉庫からなくなります。4個の注文が入り引当したとすると、実在庫は20個のまま変わらず、販売可能在庫だけが15個から11個へ減ります。
4.安全在庫とは|予想外の欠品を防ぐための予備
安全在庫とは、需要の増加、仕入れの遅れ、破損などに備えて、通常の販売から外しておく在庫です。安全在庫は、予想を超える注文や入荷遅延が起きたときに、欠品リスクを抑えるための予備として使われます。
- 注文数が日によって大きく変わる
- 仕入先からの納期が安定しない
- 繁忙期に注文が急増する
- 海外から仕入れている/製造に時間がかかる
- 商品が壊れやすい
- 実店舗とECで在庫を共有している
- 法人の大口注文が入る可能性がある
欠品を防ぐために、意図的に確保している在庫です。ただし、多すぎる安全在庫は、保管費の増加、商品の劣化、賞味期限切れ、資金の固定化、旧パッケージの残留といった問題につながります。
安全在庫は、多ければ多いほどよいわけではありません。需要、入荷期間、商品の期限、保管費などを見ながら決めます。
5.在庫切れとは|販売可能在庫が0になった状態
在庫切れは、必ずしも倉庫の商品が0個になった状態ではありません。次の例を見てください。
| 種類 | 数量 |
|---|---|
| 実在庫 | 5個 |
| 引当在庫 | 3個 |
| 安全在庫 | 2個 |
| 販売可能在庫 | 0個 |
倉庫には5個あります。しかし、3個は注文済みで、2個は安全在庫です。新しい注文へ販売できる在庫は0個なので、ECサイトでは「在庫切れ」となります。
「倉庫に商品が残っていても、販売できる数が0なら“在庫切れ”なんだ!」
欠品とは
欠品は、必要な商品を必要な時点で用意できない状態です。注文を受けたが商品がない、法人から10個注文されたが8個しかない、セット商品の一部が足りない、引当した商品が破損していた、入荷予定日が遅れ発送できない、ECと実店舗で同時に売れた、といった場合です。在庫切れ表示を正しく出せていれば、注文前に販売を止められます。一方、注文後に商品を用意できないことが分かると、欠品対応が必要になります。
6.注文から出荷まで、在庫はどう動く?
在庫は、注文、決済、出荷などの出来事によって状態が変わります。今回は、実在庫20個、販売不可・安全5個、引当在庫0個、販売可能在庫15個の状態から始めます。
| 段階 | 実在庫 | 引当在庫 | 販売可能在庫 |
|---|---|---|---|
| 開始時 | 20個 | 0個 | 15個 |
| Step1|3個の注文が入る | 20個 | 3個 | 12個 |
| Step2|決済が確認される | 20個 | 3個 | 12個 |
| Step3|商品を出荷する | 17個 | 0個 | 12個 |
商品はまだ倉庫にあるため、引当だけでは実在庫は減りません。出荷時に、引当在庫が実在庫からも減ります。決済確認だけでは、注文状態や決済状態は変わりますが、在庫は引当済みのままです。
7.キャンセルされたら在庫はどう戻る?
3個を引き当てたあと、発送前に注文がキャンセルされたとします。商品に問題がなければ、引当を解除します。引当在庫から販売可能在庫へ戻すだけなので、実在庫は変わりません。
ただし、ECや在庫管理システムによって、キャンセル時の動きは異なります。自動的に販売可能在庫へ戻る、管理者がキャンセル処理すると戻る、返金完了後に戻る、担当者が手作業で戻す、商品確認後に戻すなど、実際の動作を確認する必要があります。キャンセル処理をしたのに在庫が戻らない場合、販売できる商品があるのに売り切れ表示が続く可能性があります。
8.決済に失敗した注文の引当
注文画面まで進んでも、カード決済失敗、コンビニ支払い待ち、銀行振込待ち、決済画面を閉じた、不正利用の確認中など、支払いが完了しないことがあります。このとき、在庫をいつまで確保するか決める必要があります。
他の購入者へ販売できる、在庫が長時間止まらないというメリットがある一方、購入者が支払いをやり直したとき商品が売り切れている可能性があります。
たとえば、決済失敗後30分だけ在庫を確保し、支払い完了なら注文継続、未払いなら自動解除します。
銀行振込やコンビニ支払いでは数日間の支払期限を設定する場合がありますが、支払い待ち注文が多いと、実際には売れていない商品が長期間販売できなくなります。
支払期限、引当を維持する期間、期限前の案内、期限切れ時の注文取消し、在庫を戻すタイミング、購入者への通知を事前に決めます。
9.引当はいつ行う?
| タイミング | 特徴 |
|---|---|
| カート投入時 | 一時的に確保するが、放置カートへの対応が必要 |
| 注文確定時 | 注文受付と同時に確保できる |
| 決済完了時 | 未払い注文による長期確保を減らせる |
| 担当者確認後 | 不正注文や住所不備を確認できる |
| 出荷準備時 | 在庫を長く確保しないが、売り越しリスクが高い |
限定商品や在庫の少ない商品では、注文確定時など早い段階で引き当てる方法があります。一方、支払い待ちが多い商品では、引当期限や自動解除が重要になります。
10.在庫の変化を記録する
在庫数を直接上書きするだけでは、なぜ増減したのか分からなくなります。在庫は、出来事ごとに記録します。
| 出来事 | 在庫への影響 |
|---|---|
| 商品を入荷した | 実在庫・販売可能在庫が増える |
| 注文を引き当てた | 販売可能から引当へ移動 |
| 注文をキャンセルした | 引当から販売可能へ戻る |
| 商品を出荷した | 実在庫・引当在庫が減る |
| 商品が破損した | 販売可能から販売不可へ移動 |
| 返品商品を受け取った | 確認待ち在庫が増える |
| 棚卸し差異を修正した | システム在庫を実在庫へ合わせる |
在庫調整履歴を残せるシステムでは、商品・バリエーションごとの数量変更を確認できます。
11.破損した商品はどう動かす?
販売可能在庫が10個あり、そのうち1個の破損が見つかったとします。破損品を販売不可へ移すと、販売可能在庫は9個、販売不可在庫は1個になります。実在庫は10個のままです。物理的には倉庫にありますが、販売できるのは9個です。公式な在庫状態の例でも、破損、品質確認、安全在庫などを、倉庫には存在するものの販売できない在庫として区分しています。
12.返品された商品はすぐ在庫へ戻さない
購入者から返品商品が倉庫へ届いても、すぐ販売可能在庫へ戻してはいけません。未使用か、商品が破損していないか、付属品がそろっているか、食品・衛生商品として再販売できるか、パッケージに問題がないか、商品コード・SKUが正しいかを確認します。
返品到着時は、一度「返品確認中」「販売不可」などへ移します。返品処理と在庫更新を同時に考えることが重要です。
13.入荷予定在庫は、まだ販売可能とは限らない
仕入先から100個発送されたという連絡があっても、まだ自社倉庫には届いていません。この状態は、入荷予定・輸送中在庫として管理できます。入荷予定100個を実在庫へ加えると、輸送遅延や数量不足があった場合に商品を用意できなくなります。在庫管理の一例でも、移動中の商品は受領され、販売可能状態へ変更されるまで販売できない在庫として扱われます。
入荷予定商品を購入者へ販売する場合は、通常販売ではなく予約販売として扱う方法があります。入荷予定日、発送予定日、遅延時の対応、キャンセル条件、予約できる上限数などを設定します。予約販売・受注生産については、DAY17で詳しく扱います。
14.売り越しはなぜ起こる?
売り越しとは、実際に用意できる数量より多く注文を受けることです。たとえば、販売可能在庫が1個しかないのに、2人から注文を受けた状態です。
- 在庫更新が遅い(注文が入っても、ECサイトの在庫数がすぐ減らない)
- 引当処理がない(注文済みの商品が、販売可能なまま残っている)
- 複数サイトで同時に販売している
- 実店舗の販売が反映されていない
- 在庫の手入力ミス(10個を100個と入力した)
- 返品を早く戻しすぎた
- セット在庫を二重に数えた
15.複数サイトで同じ在庫を販売する場合
一つの商品を自社EC、ECモールA、ECモールB、実店舗で販売するとします。実際の在庫は10個ですが、各販売先へ10個ずつ登録すると、画面上では合計40個販売できるように見えます。これでは、短時間に複数の注文が入ると売り越す可能性があります。
対応方法として、在庫を自動連携する、販売先ごとに数量を割り当てる(自社EC4個・モールA3個・モールB2個・実店舗1個で合計10個)、安全在庫を設定するといった方法があります。ただし、販売先ごとに数量を割り当てると、モールAで売り切れても自社ECには在庫が残る可能性があります。
16.在庫の優先順位を決める
在庫が不足した場合、どの注文へ商品を割り当てるか決める必要があります。代表的な考え方は、注文が早い順、決済が完了した順、発送予定日が早い順、法人・大口顧客を優先、定期購入を優先、予約注文を優先、地域や倉庫の近さで決める、などです。在庫引当の仕組みでは、注文順で商品を確保したり、特定の顧客・注文を優先したりする設定が利用されることがあります。重要なのは、不足が起きてから担当者の感覚で決めるのではなく、事前に優先ルールを決めることです。
17.安全在庫と再発注点の違い
安全在庫は予想外の需要や入荷遅れに備える予備です。再発注点は、在庫がこの数量まで減ったら仕入れ・製造を依頼する基準です。
たとえば、1日の平均販売数3個、発注から入荷まで4日、安全在庫5個の場合、入荷までに販売すると予想される数は3個×4日=12個です。再発注点は12個+安全在庫5個=17個となり、在庫が17個まで減ったら補充を検討します。売れる速さ、季節、仕入先の納期、最低発注数量、配送遅延、商品の賞味期限、キャンペーン、入荷不良の割合が変われば、再発注点も見直します。通常月と年末商戦で、同じ安全在庫・再発注点が適切とは限りません。
18.在庫差異が起きたらどうする?
倉庫を数えたところ、システムでは20個、実際には18個だったとします。すぐに「18個」へ上書きするだけでは、原因が分かりません。未処理の注文がないか、出荷済みで在庫未更新の注文がないか、返品処理中の商品がないか、破損・廃棄の記録がないか、別の棚や倉庫へ移動していないか、SKUを取り違えていないか、実店舗で販売されていないか、数え間違いがないか、過去の在庫調整履歴を確認し、原因と修正内容を記録します。原因不明の在庫差異が繰り返される場合、入荷、移動、出荷、返品のいずれかで記録が漏れています。
19.棚卸しと循環棚卸し
決められた日に、すべての商品を数えます。全体の実在庫を確認できる一方、商品数が多いと時間がかかり、営業や出荷を止める場合があります。年1回だけでは差異の発生時期が分かりません。
商品を分けて、定期的に少しずつ数えます(高額商品は毎週、売れ筋商品は毎月、動きの少ない商品は3か月ごとなど)。差異を早く見つけやすい方法です。
優先して確認したい商品は、高額商品、売れ筋商品、盗難・紛失しやすい商品、色やサイズが似ている商品、賞味期限がある商品、返品が多い商品、在庫差異が繰り返される商品です。
20.欠品が起きたときの対応
注文後に商品を用意できないことが分かった場合、次の順番で整理します。
- 事実を確認する 注文番号、SKU、注文数量、引当状況、倉庫の実在庫、他の倉庫の在庫、入荷予定日を確認します。
- 代替方法を確認する 別倉庫から発送、次回入荷を待つ、代替商品を提案、一部数量のみ発送、注文を分割するといった方法を検討します。
- 購入者へ連絡する 欠品した商品、現在の状況、発送可能日、選べる対応、返金の時期を伝えます。
- 在庫データを修正する 同じ商品へ新しい注文が入らないよう、販売可能在庫を修正します。
- 原因を記録する 在庫連携の遅れ、倉庫の誤出荷、破損、入力ミス、二重販売、引当漏れなどを記録します。
よくある在庫管理の失敗
実際のケースで考えてみよう|限定マグカップを20個販売する
限定マグカップの実在庫は20個です。安全在庫2個、販売開始時の販売可能在庫18個、注文確定時に引当、未払い注文は24時間で解除、返品商品は確認後に在庫へ戻すというルールで運用します。
| 段階 | 実在庫 | 引当在庫 | 販売可能在庫 |
|---|---|---|---|
| 販売開始時 | 20個 | 0個 | 18個 |
| 5個の注文が入る | 20個 | 5個 | 13個 |
| 1件が未払いで期限切れ | 20個 | 4個 | 14個 |
| 支払い済み4個を出荷 | 16個 | 0個 | 14個 |
| 棚卸しで1個破損が見つかる | 16個 | 0個 | 13個 |
このように、実在庫、引当、販売可能、安全在庫を分けると、何が起きたのか追いやすくなります。
在庫管理を始める12の質問
- 正式な在庫データはどこですか?EC、倉庫表、在庫管理システムのどれを基準にするか決めます。
- 在庫はSKU単位で管理されていますか?色・サイズ違いをまとめていないか確認します。
- 注文のどの時点で引き当てますか?注文確定、決済完了などの条件を決めます。
- 未払い注文はいつ解除しますか?在庫を長期間止めないルールを作ります。
- キャンセル時に在庫は自動で戻りますか?実際のシステム動作を確認します。
- 安全在庫はいくつですか?需要と入荷期間をもとに設定します。
- 破損品はどの状態へ移しますか?販売可能在庫のままにしないようにします。
- 返品商品は誰が確認しますか?再販売できる条件を決めます。
- 入荷予定在庫を販売しますか?通常販売か予約販売かを区別します。
- 複数サイトの在庫は連携されていますか?売り越しを防ぐ方法を確認します。
- 棚卸しはいつ行いますか?商品別に頻度を決めます。
- 在庫差異の原因をどこへ記録しますか?数量の修正だけで終わらせない仕組みを作ります。
やってみよう|在庫状態シミュレーター&再発注点計算機
実在庫・安全在庫・販売不可在庫の初期値を設定し、「注文」「キャンセル」「出荷」「破損」「入荷」のボタンを押すと、実在庫・引当在庫・販売可能在庫がどう動くかをリアルタイムに確認できます。操作履歴も記録されるので、DAY16本文のStep1〜3のような動きを自分の数字で再現できます。入力内容はこのブラウザにのみ保存され、外部へは送信されません。
① 在庫状態シミュレーター
この数字で設定する(リセット)
まだ操作履歴がありません。上のボタンで在庫を動かしてみましょう。
② 再発注点計算機
これは仕組みを理解するための簡易ツールです。実際の運用では、利用するEC・在庫管理システムの仕様に沿って設定してください。
アウトプットワーク|在庫の状態を整理しよう
販売する商品を一つ選んでください。分からない部分は、推測で決めず「未確認」と記入してください。
① 現在の在庫を分ける
| 在庫の種類 | 数量 |
|---|---|
| 実在庫 | |
| 引当在庫 | |
| 販売不可在庫 | |
| 安全在庫 | |
| 販売可能在庫 | |
| 入荷予定在庫 |
② キャンセル時のルール
| 項目 | 自社のルール |
|---|---|
| 引当を解除する条件 | |
| 未払いの支払期限 | |
| 在庫を戻す担当者/自動・手動 |
③ 安全在庫と再発注点
記入できたら完了にする
理解度チェッククイズ
第1問 実在庫の説明として最も近いものはどれでしょうか?
第2問 販売可能在庫とは、どのような在庫でしょうか?
第3問 引当在庫とは、どのような在庫でしょうか?
第4問 安全在庫を持つ主な目的は何でしょうか?
第5問 実在庫20個、引当在庫4個、販売不可在庫2個、安全在庫3個の場合、販売可能在庫はいくつでしょうか?
第6問 3個の商品を引き当てた直後、実在庫はどのようになるでしょうか?
第7問 発送前に注文がキャンセルされ、商品に問題がない場合、引当在庫はどうしますか?
第8問 入荷予定の商品は、通常いつ販売可能在庫になりますか?
第9問 1日の平均販売数が4個、入荷まで5日、安全在庫が6個の場合、再発注点はいくつでしょうか?
第10問|実務判断問題 実在庫は5個あります。そのうち、3個は注文済み、1個は破損、1個は安全在庫です。ECサイトには「在庫あり」と表示されています。どのような問題があり、どう修正しますか?
回答例を見る
実在庫5個-引当3個-破損1個-安全在庫1個=販売可能在庫0個。新しく販売できる在庫はありません。ECサイトの「在庫あり」は誤りです。
次の対応を行います:販売可能在庫を0個へ修正する/商品ページを売り切れ・入荷待ちへ変更する/破損品を販売不可として記録する/引当済み3個を予定どおり発送できるか確認する/次回の入荷予定を確認する/在庫表示が実在庫を参照していないか設定を見直す。
第11問|実務判断問題 コンビニ支払いを選んだ注文が10件あり、すべて未払いです。引当を7日間維持しているため、商品が売り切れ表示になりました。どのような運用を確認・改善しますか?
回答例を見る
コンビニ支払いの期限を確認する/7日間の在庫確保が適切か確認する/支払期限前の自動案内を設定する/期限切れ注文を自動取消しできるか確認する/取消し後に引当が自動解除されるか確認する/未払い注文による在庫確保数を確認できるようにする/人気商品だけ引当期限を短くできないか検討する/購入者へ支払期限と在庫確保条件を分かりやすく表示する。未払い注文をすぐ解除すればよいとは限らず、購入者の支払機会と、他の購入者へ販売できない時間のバランスを見て決めます。
よくある質問
近い意味で使われることがあります。ただし、システムによっては、手持ち在庫を販売可能、引当済み、販売不可の合計として定義します。自社で各用語が何を含むのか確認してください。
商品、支払方法、在庫数、システムによって異なります。限定商品では早めに引き当てる方法があり、未払いが多い場合は決済完了時に引き当てる方法もあります。
サービスの仕様によって異なります。カート投入時に一時確保する仕組みもあれば、注文確定まで確保しない仕組みもあります。放置されたカートの在庫をいつ解放するかも確認します。
通常販売から外しておく在庫ですが、顧客注文を優先して使用する運用もあります。その場合は、使用後に補充するルールが必要です。実際の扱いは商品と事業方針によって決めます。
できます。ただし、通常在庫と予約可能数を分け、入荷予定日、発送予定、遅延時の対応、キャンセル条件を表示する必要があります。
利用するシステムによって異なります。注文取消し、返金、出荷取消しのどの操作で戻るのか、実際にテストして確認してください。
倉庫へ届き、商品の状態、付属品、再販売の可否を確認したあとです。返品受付時点で先に戻すと、まだ届いていない商品を販売する可能性があります。
販売数の変動、入荷までの日数、仕入先の遅延、商品の期限、保管費などによって異なります。固定したままにせず、販売実績と納期を見ながら見直します。
予約販売や受注生産として意図的に受注する場合を除き、在庫不足を意味する可能性があります。設定ミス、連携遅延、売り越しがないか確認してください。
不用意な上書きを防ぐため、修正権限を限定し、変更理由と履歴を残すことが望まれます。倉庫、EC、経理のうち、どのデータを正とするかも決めてください。
今回のまとめ
在庫は、「商品が何個あるか」だけを記録すればよいものではありません。今回覚えておきたいポイントは、次の5つです。
- 実在庫は、倉庫や店舗に実際に存在する数量
- 販売可能在庫は、新しい注文へ販売できる数量
- 引当在庫は、注文のために確保され、まだ出荷されていない数量
- 安全在庫は、急な需要や入荷遅れに備えて確保する数量
- 注文・キャンセル・出荷・返品・破損ごとに在庫の状態を動かす
ECでは、注文が入った時点で販売可能在庫を減らし、出荷時に実在庫を減らすなど、段階ごとの管理が必要です。キャンセルされた在庫を戻さなければ、販売機会を失います。反対に、引当を行わなければ、同じ商品を複数の購入者へ販売する可能性があります。重要なのは、在庫数を上書きすることではなく、なぜ増えたか、なぜ減ったかを記録することです。
「在庫は“数字”ではなく、“今どんな状態か”まで管理しよう!」
DAY16の実践課題
販売したい商品、または身近な商品を一つ選び、在庫の動きを記録してください。最初の状態(実在庫・引当在庫・販売不可在庫・安全在庫・販売可能在庫)、3個の注文が入った場合、1個がキャンセルされた場合、残り2個を出荷した場合の実在庫・引当在庫・販売可能在庫をそれぞれ書き出します。最後に、注文がいつ在庫を引き当てるか、未払い注文はいつ引当を解除するか、キャンセル商品の在庫は誰が確認するか、返品商品は何を確認してから販売可能在庫へ戻すか、在庫が何個になったら補充を依頼するかをルールとして言葉にしてください。分からない部分は、推測で決めず「未確認」と記録してください。


