Incotermsとは?11種類の違い・費用・危険負担・通関を初心者向けに解説 DAY55
【DAY55】Incotermsの基礎
11のルール全体と、費用・危険負担・運送手配・通関の分担を整理する
DAY54では、DAPとDDPを学びました。どちらも売主が指定仕向地まで商品を運ぶ点は似ていますが、輸入通関を買主が担うか売主が担うかが違いました。では、海外取引の条件はDAPとDDPだけでしょうか。違います。Incoterms® 2020には全部で11のルールがあります。ICCが定めるIncoterms®は、売主と買主の間で引渡し・危険移転・運送・費用・保険・輸出入通関などの役割分担を整理する11の3文字ルールで、2026年8月現在の最新版はIncoterms® 2020です。
11個を丸暗記する必要はありません。①誰が運送を手配する?②誰が費用を払う?③どこで危険が買主へ移る?④誰が輸出・輸入通関する?⑤誰が保険を手配する?この5つに分ければ整理できます。
「3文字を丸暗記するんじゃなくて、"誰が運ぶ?誰が払う?どこから誰のリスク?"を見ると分かりやすいよ!」
DAY54との違い
DAY54はDAP・DDPだけを深掘りしました。DAY55では11ルール全体を俯瞰します。目標は条文の暗記ではなく「この条件なら、どこを確認すればよいか」を判断できることです。
この記事で分かること
- Incoterms®とは何か、11ルールの全体像
- あらゆる輸送手段用の7ルールと海上専用の4ルールの違い
- 費用負担と危険負担は別という、Cルール最大のポイント
- DAP・DPU・DDPの荷卸し・輸入通関の違い
- EXWよりFCAが実務で推奨される理由
- コンテナ輸送でFOBが適さない理由
- 指定場所の書き方とIncoterms® 2020と版を明記する理由
- 先に結論|11個は「5つの質問」で整理する
- まず「輸送手段」で2つの世界に分ける
- 売主の負担レベルで見る4グループ
- 【保存版】Incoterms® 2020役割分担マトリクス
- Cルールの罠|「運賃を払う人=リスクを負う人」ではない
- Dグループの境界線|ゴール地点での「通関」と「荷卸し」
- なぜEXWよりFCAが推奨されるのか
- FAS・FOB・CFR・CIF|船の横か船の上か
- 「船便だからFOB」は危険|コンテナ輸送の誤用
- 迷ったらここから|選択デシジョンツリー
- 実際のケースで考えてみよう|日本の工芸品をフランス企業へ
- 実務担当者が陥る5つの致命的な勘違い
- 見積書・契約書への正しい記載フォーマット
- Incoterms®を選ぶ8つの質問
- やってみよう|Incoterms®診断&確認チェックリスト
- アウトプットワーク|Incoterms®比較シート
- 理解度チェッククイズ
- よくある質問
- 今回のまとめ
- 獲得バッジ
先に結論|11個は「5つの質問」で整理する
Incoterms®を見たら、①主な運送を誰が手配する②どこまで費用を払う③どこで危険が売主から買主へ移る④輸出通関と輸入通関はそれぞれ誰が行う⑤貨物保険を手配する義務はあるか、を確認します。さらに最初に輸送方法を確認します。Incoterms® 2020は正式には、あらゆる輸送手段に使える7ルールと、海上・内陸水路輸送専用の4ルールに分かれます。Incoterms®は法律や条約ではなく、売主と買主が売買契約に組み込んで使うもので、JETROも契約上その旨を明示する必要があると説明しています。また、商品代金・支払方法・所有権移転時点・契約違反の結果などはIncoterms®では定めません。
まず「輸送手段」で2つの世界に分ける
あらゆる輸送手段(トラック・鉄道・航空・船、または複合輸送)に使えるのは、EXW・FCA・CPT・CIP・DAP・DPU・DDPの7ルールです。海上・内陸水路輸送専用は、FAS・FOB・CFR・CIFの4ルールで、航空便でFOB・CIFを使うのは正式な使い方ではありません。学習用には、頭文字でE(EXW)・F(FCA・FAS・FOB)・C(CPT・CIP・CFR・CIF)・D(DAP・DPU・DDP)と並べる整理方法もありますが、これは正式な2分類とは別の学習補助と考えます。
売主の負担レベルで見る4グループ
EXWは、売主が指定場所で商品を買主が引き取れる状態にするだけの、売主側の義務が非常に小さい条件です。危険は、商品を指定場所で買主の処分に委ねた時点、原則として買主の集荷車両への積込み前に移ります。FCA・FAS・FOBは主な運送を買主が手配・負担し、売主は指定された地点まで運んで引き渡します。CPT・CIP・CFR・CIFは売主が仕向地・仕向港までの運賃を手配・負担しますが、危険の移転は早い地点で起こります。DAP・DPU・DDPは、到着地までの運送も危険もすべて売主が負担する、最も売主主導の条件です。
【保存版】Incoterms® 2020役割分担マトリクス
| ルール | 主運送手配 | 輸出通関 | 輸入通関 | 保険義務 |
|---|---|---|---|---|
| EXW | 買主 | 買主 | 買主 | なし |
| FCA | 買主 | 売主 | 買主 | なし |
| CPT | 売主 | 売主 | 買主 | なし |
| CIP | 売主 | 売主 | 買主 | あり(ICC-A相当) |
| DAP | 売主 | 売主 | 買主 | なし |
| DPU | 売主 | 売主 | 買主 | なし |
| DDP | 売主 | 売主 | 売主 | なし |
| FAS | 買主 | 売主 | 買主 | なし |
| FOB | 買主 | 売主 | 買主 | なし |
| CFR | 売主 | 売主 | 買主 | なし |
| CIF | 売主 | 売主 | 買主 | あり(ICC-C相当) |
EXWだけが輸出通関を買主側へ置き、DDPだけが輸入通関を売主側へ置きます。売主に貨物保険手配義務がある代表的なルールはCIPとCIFで、CIPは原則Institute Cargo Clauses(A)相当、CIFは原則Clauses(C)相当と、標準の補償水準も異なります。保険義務がないルールでも、売主が自身のリスク管理として任意に保険を検討することはできます。
Cルールの罠|「運賃を払う人=リスクを負う人」ではない
CPT・CIP・CFR・CIFでは、売主が仕向地・仕向港までの運送費を支払いますが、危険はもっと早い地点、売主が契約した運送人へ商品を引き渡した時点で買主へ移ります。例えば「CPT Dubai Airport」なら、売主はDubaiまでの運送費を払いますが、危険は日本側で最初の運送人へ渡した時点で買主へ移ることがあります。つまり費用の終点と危険移転地点は別で、これがCルール最大の難所です。CPTとCIPの違いは保険で、CIPは売主が貨物保険を手配します。CFRとCIFも同じ構造で、CIFは売主が貨物保険を手配する点が違います。
Dグループの境界線|ゴール地点での「通関」と「荷卸し」
DAPは、売主が指定仕向地まで運び、到着した輸送手段上で荷卸しできる状態になった時点で引渡しとなり、輸入通関は買主です。DPUはDAPと似ていますが、売主が指定仕向地で荷卸しを完了したところで引渡しとなる点が違い、Incoterms® 2020の11ルールの中でDPUだけが荷卸しまで売主が行います。ただしDPUでも輸入通関は買主側のままです。DDPは、売主が指定仕向地まで運び、輸出・輸入通関、関税等まで対応しますが、DAPと同様に荷卸し前で引渡しとなり、売主に荷卸し義務はありません。
なぜEXWよりFCAが推奨されるのか
EXWでは輸出通関も原則買主側です。しかし国によっては、国外の買主が輸出申告上の輸出者になれない問題があり、ICCの解説でも、輸出を伴う取引ではEXWが実務上問題を生むことがあり、FCAを検討することが示されています。FCAでは、売主が輸出通関を行い、買主が指定した運送人へ商品を引き渡します。輸出者側が輸出通関を行えるFCAの方が、国際輸出の実態に合う場合があります。
FAS・FOB・CFR・CIF|船の横か船の上か
FASは、売主が買主指定の船舶の船側まで商品を運んだ時点で引渡し・危険移転となり、船への積込みは買主側です。FOBは、売主が商品を本船に積み込んだ時点で引渡し・危険移転となります。FASとFOBの違いは、船の横か本船上かです。CFRは、売主が仕向港までの運賃を負担しますが、危険は輸出港で本船上へ積み込まれた時点で買主へ移ります。CIFはCFRと同じ構造に、売主による貨物保険の手配が加わります。
「船便だからFOB」は危険|コンテナ輸送の誤用
コンテナ貨物は通常、売主が船へ直接商品を積むのではなく、先にコンテナターミナルへ引き渡します。そのためICC Academyは、コンテナ貨物ではFOBよりFCAの方が適するケースがあると説明しています。「船で送るからFOB」と自動的に決めず、引渡しの実態を確認します。海上コンテナでもFCA・CPT・CIPは使用でき、「海上輸送=4つの海上ルールしか使えない」わけではありません。
迷ったらここから|選択デシジョンツリー
まず輸送方法を確認します。海上・内陸水路で直接船積みするならFAS・FOB・CFR・CIFも候補です。それ以外の航空・陸上・複合輸送では7ルールから検討します。次に主運送を誰が手配するか、危険をどこで移すか、輸出通関・輸入通関は誰が行うか、保険を売主が付けるか、荷卸しを売主がするかを順に確認し、具体的な引渡地点・仕向地を決め、Incoterms® 2020を明記し、価格へ反映して契約・注文へ保存します。
実際のケースで考えてみよう|日本の工芸品をフランス企業へ
商品は日本製工芸品100個、輸送は日本工場→トラック→コンテナターミナル→船→フランス→買主倉庫とします。コンテナ輸送なので、直接船積みを前提とするFOBではなくFCA系を検討します。買主が自社の海上運送契約を使いたいため、主運送は買主が手配し、Fグループに絞られます。日本の販売者が日本側の輸出通関を行うため、輸出通関が買主となるEXWは除外されます。最適解は「FCA Container Terminal, Yokohama, Japan Incoterms® 2020」です。もし売主がフランスの港まで運賃を払いたいならCPT・CIP、フランス倉庫までのリスクも売主が負うならDAP・DPU・DDPを検討します。「船なのでFOB」と決めず、主運送・危険・輸出入通関・保険・荷卸しの5点から選びます。
実務担当者が陥る5つの致命的な勘違い
見積書・契約書への正しい記載フォーマット
契約・見積書には「FOB」だけで終わらせません。「FCA Seller Warehouse, Chiba, Japan, Incoterms® 2020」のように、①3文字ルール②具体的な指定場所・港③準拠する版(Incoterms® 2020)をセットで明記します。過去にはIncoterms® 2010・2000などもあり、例えば2010年版のDATは2020年版ではDPUへ名称変更されているため、版を明記しないとどのルールを採用したか曖昧になります。正しく記載することで、価格交渉時にも物流費・通関費がどこまで含まれるかが明確になります。
Incoterms®を選ぶ8つの質問
- 輸送方法は何ですか?航空・陸上・海上・複合を確認します。
- 海上専用ルールを使える貨物ですか?直接本船へ積む貨物かを確認します。
- 主運送を誰が手配しますか?売主か買主かを確認します。
- どこで商品を引き渡しますか?危険移転地点を確認します。
- 輸出通関・輸入通関は誰が行いますか?EXW・DDPかどうかも確認します。
- 保険を誰が手配しますか?CIP・CIFを確認します。
- 荷卸しを誰が行いますか?DPUかどうかを確認します。
- 指定場所・港とIncoterms® 2020を契約へ書きましたか?口頭だけにしません。
やってみよう|Incoterms®診断&確認チェックリスト
5つのテーマから確認したい項目を選ぶと、確認ポイントの目安が分かります。入力内容はこのブラウザにのみ保存されます。
① Incoterms®診断
② 確認チェックリスト
自己チェック用の簡易ツールです。実際の取引条件はICC公式資料・通関業者で確認してください。
アウトプットワーク|Incoterms®比較シート
① 取引・輸送方法
② 運送・危険・通関
③ 保険・荷卸し・指定地点
④ 選択ルール
記入できたら完了にする
理解度チェッククイズ
第1問 Incoterms® 2020には何種類のルールがあるでしょうか?
第2問 海上・内陸水路専用のルールはどれでしょうか?
第3問 CPTについて正しいものはどれでしょうか?
第4問 DPUについて正しいものはどれでしょうか?
第5問 FOBで危険が買主へ移るのは原則いつでしょうか?
第6問 CIFとCIPについて正しいものはどれでしょうか?
第7問 EXWとFCAの大きな違いは何でしょうか?
第8問 Incoterms®について正しいものはどれでしょうか?
第9問|実務判断問題 コンテナ貨物で、買主が海上運送会社を手配し、売主が横浜のコンテナターミナルで買主指定の運送人へ商品を引き渡します。担当者が「船なのでFOBにします」と言いました。何を確認するべきでしょうか?
回答例を見る
FOBだけでなくFCAを検討します。商品は本船へ直接引き渡すのではなく、コンテナターミナルで運送人へ引き渡されるため、FOBよりFCAが実態に合う場合があります。コンテナかどうか、引渡地点はどこか、誰が運送人を指定するか、危険をどこで移したいかを確認し、「船を使う」という理由だけでFOBにしません。
よくある質問
ICCが制定する、売主・買主の物品引渡しに関する費用・危険・運送・保険・輸出入通関等の分担を整理する国際的な取引ルールです。現在の最新版はIncoterms® 2020です。
輸出通関です。EXWでは原則買主、FCAでは売主が輸出通関を担当します。輸出取引ではFCAの方が実務に合う場合があります。
危険負担については違います。売主は運送費を払いますが、危険は運送人へ引き渡した時点で買主へ移ります。
荷卸しです。DAPは荷卸し前に引渡し、DPUは売主が荷卸しを完了したところで引渡します。
海上ルールではありますが、コンテナ貨物では通常コンテナターミナルで運送人へ引き渡すため、FCAが適する場合があります。
CIFは海上・内陸水路専用、CIPはあらゆる輸送手段に使えます。標準の保険水準もCIPの方が広い補償が原則です。
一つの正解はありません。輸送方法・引渡地点・運送手配・輸出入通関能力・保険・物流体制に合うルールを選びます。
はい。過去の版(2010年DATなど)と混同しないよう、採用した版を契約に明記します。
今回のまとめ
DAY55では、Incoterms® 2020の11ルール全体を整理しました。今回覚えておきたいポイントは次の5つです。
- Incoterms® 2020には11ルールある
- 7ルールはあらゆる輸送手段、4ルールは海上・内陸水路専用
- 費用負担と危険負担は別に確認する
- CPT・CIP・CFR・CIFでは売主が運賃を払っても危険は早く買主へ移る
- 輸出入通関・保険・荷卸しの担当もルールごとに違う
最も大切なのは、3文字を知っていることではありません。「CIFだから売主が全部責任を負う」「FOBだから海上輸送なら何でも使える」「DDPだから購入者に優しい」という名前だけの理解をしないことです。誰が運送を手配する?どこまで費用を負担する?どこで危険が移る?誰が輸出入通関する?誰が保険を付ける?誰が荷卸しする?を確認します。契約では、FOB・DAP・CIPだけで終わらせず、ルール+具体的な場所+Incoterms® 2020まで明確にします。
「11個全部を暗記するより、"運送・費用・危険・通関・保険"の5本線で比べよう。特にCルールは"送料を払う人=リスクを負う人"じゃないのがポイントだよ!」

